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2013/09/10

「半沢直樹」をシラケて見る

妻はTVドラマ「半沢直樹」のファンで、これと「相棒」だけはチャンネル権を渡さない。自然とこちらも毎週つきあうことになる。
確かに面白いし、ドラマとして良くできている。悪が善をこれでもかこれでもかと追い詰めるが、最後には善が逆転勝利し、視聴者は痛快な思いをする。第一部がそうだったからきっと第二部もそうなるんだろう。
そういう意味では時代劇やヤクザ映画、西部劇など娯楽作品の王道をいくストーリーになっている。
ちがうのは題材で、「半沢直樹」の方はつまるところ社内抗争、それも人事抗争だ。
サラリーマンにとっては人事が全てといって良い。なかには「オレは出世なんか興味がない」と語る人もいるが、現実に後輩たちが自分をどんどん追い越し、気が付けばこっちが部下になってこき使われるのを気分よく思う人は先ずいない。イヤがオウでも出世競争にまき込まれる、それがサラリーマンの宿命といえる。
ドラマでは主人公の半沢直樹が正論をはき縦横無尽の活躍をするのだが、その後押しをしているのは失敗すれば出向への片道切符という脅しであり、銀行員という職を失いたくたくないという希望だ。
それが証拠には、問題を解決するごとに半沢は出世の階段を上がってゆく。
結局はソレかいと、多少シラケた気分になる。

ドラマでは誇張はされているが、ある規模の組織になるとこうした内部抗争、人事抗争は避けられないようだ。私が現役時代に所属していた会社もそうだったし(私は関与する立場になかったが)、取引先の企業でも同じような話をたびたび聞かされた。
だから社内の人事異動はもちろんのこと、取引先の人事についても関心を持たざるを得なかった。
多くの企業で優秀な人材がこうした抗争にエネルギーを使っている。
企業は社会的活動により利益を得るわけで、社内のゴタゴタからは1円の利益も生まないにも拘らずだ。
「社内営業」という言葉に象徴されるように、社内で上手に動き回り、鋭い嗅覚と要領の良さを持った人間が偉くなってゆく。
半沢直樹のような正論ばかり吐く一匹オオカミは、そうした人たちから倍返し、10倍返しの報復を受けるというのが現実の姿なのだ。良い子は真似をしないように。
そうした現実を知っているからこそ、ドラマを見て多くの人が爽快な気分になるのだろう。

ただドラマとして、第一部に比べると第二部はリアリティに欠けるように思う。
第一部の大阪西支店の融資問題は支店長マターであり、担当常務の決済で済むことだから大和田常務の意向に大きく左右される。それは分かる。
しかし第二部は、本社営業第二部の伊勢島ホテルへの不正融資は金融庁検査という事態まで招き、銀行の経営基盤を脅かすような大きな問題に発展している。
これはもはや、一部署の問題ではなく銀行の存続にかかわることなので、最終的には頭取が決済することになる筈だ。
部長や管掌する役員(この件も大和田常務)は本件を頻繁に頭取に報告し、最後は常務会付議という運びになるだろう。ところがドラマでは、頭取―常務、頭取―部長というラインが見えてこない。
それから常務から半沢に出向させるぞという脅しがあるが、本社の次長ともなれば、人事異動は常務会の報告事項になるのが普通ではなかろうか。とすれば最終的な決済は頭取だ。
半沢直樹が大和田常務にかかわる不正をあばき、自らの意見を通そうとするなら、別ルートで頭取に正確な情報をインプットする方策を考えるべきだろう。
おそらく大和田常務のような性格なら社内に沢山敵を持ってるだろうし、そうした状況を利用して他の専務や常務といった役員への働きかけ、あるいは頭取の側近へのアプローチなどにより、とにかく頭取を動かすことが肝要かと思われる。
特に大和田が今の頭取を追い出して次期頭取の椅子を目指して画策していることが明らかになっているだけに、むしろ半沢側としてはやり易くなっている。
自分の意見を通そうとするなら相手を孤立させ、こちらが多数を握ってトップを動かす方向へ持っていくしかない。半沢のやり方は現実の世界では通用しない。

もっとも正攻法で描いたらドラマとしては成り立たないだろうから、そんな理屈は抜きにして楽しむのが正解か。

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