フォト
2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
無料ブログはココログ

« #63扇辰・喬太郎の会(2013/10/14) | トップページ | #413花形演芸会(2013/10/19) »

2013/10/19

「通ごのみ 扇辰・白酒」(2013/10/18)

10月18日、日本橋社会教育会館での「人形町通ごのみ 扇辰・白酒」へ。
かつて人形町末広があり落語の聖地といわれた町で、新潟生まれと鹿児島生まれの「江戸っ子」による二人会に、「通」じゃないアタシが出向くということになった。
今回も満員御礼。

<  番組  >
前座・林家つる子「牛ほめ」
桃月庵白酒「首ったけ」
入船亭扇辰「三方一両損」
~仲入り~
入船亭扇辰「悋気の独楽」
桃月庵白酒「甲府い」

開口一番ってぇのは会場を温めるという役割だろうが、逆に冷やしちゃいけない。それでなくても急に冷え込んでいるんだから。他にもっとマシな前座がいるだろうに。

白酒の1席目「首ったけ」
このネタつい先日、喬太郎で聴いたばかりだが、白酒の方が志ん生のオリジナルに忠実。やはり古今亭一門だ。
白酒は、客の辰と紅梅花魁との言い合いに仲裁に入る若い衆が、逆に辰の癇に障ることばかり言って却って火に油を注ぐという場面を見せ場にしていた。
向かいの見世に上がった辰っつぁんが翌朝、敵娼(あいかた)の青柳の着物を引っ掛けて紅梅に見せびらかすという演出も加えていた。
古き良き時代の吉原の雰囲気が醸し出されていて、喬太郎とはまた違った良さがあった。

扇辰の1席目「三方一両損」
別の扇辰・白酒二人会(新宿亭砥寄席のことか)でサブタイトルが「ピーチ&ドラゴン」と名付けられたのが気に入らなかったようだ。キャッチは何でもかんでも思い付きでは困るだろうし、少なくとも出演者には了解は要るだろう。
ご存知、大岡政談の代表的作品だが、近ごろ高座にかかる機会が少なくなっているようだ。一つには時間が長い割には笑いが取れないということもあるだろうし、この噺の眼目である「江戸っ子の気風」が遠い昔になりつつあるということかも。
考えようによってはこの裁きは両者を「win-win」の関係にしたわけで、現代にも十分通用するものだ。今風にいえば裁判官は和解を勧告したことになる。
いかにも扇辰らしいオーソドックスな高座で、こちらも古き良き時代の江戸の姿を描き出していた。

扇辰の2席目「悋気の独楽」
マクラで落語家で一番難しいのは、高座に上がってからどんなネタを選ぶかということだと言っていた。でも実際はどうなんだろう、楽屋で客席の様子はモニタリングしているし、根多帳や後ろの出番の顔ぶれから判断して高座に上がる段階ではネタは決めているんではなかろうか。
喬太郎の高座で、途中まで演りながら客席の反応が悪いとみて打ち切り、別のネタに切り替えたのを二度ほど見たが、他の演者では経験がない。
菊之丞がプロとアマの違いは上手い下手ではなく、時間にキッチリ収められるかどうかだと言っていたが、それはその通りだろう。
このネタ、扇辰が描く小僧が可愛らしい。どうかするとやたら大人っぽい小僧にしてしまう演出もあるが、あれは邪道。上手い噺家は例外なく子どもの描写が上手い。その逆も真。
定吉は奥さんの前では奥さんの味方だと言い、旦那の前では旦那の味方だと言う。子どもながらにそうした世事に長けているのは既に社会人だからだ。
扇辰の高座は、子どもでありながら店の奉公人という二面性を程よく調和させていた。

白酒の2席目「甲府い」
落語にしては儒教色、宗教色の強い噺のせいか、八代目春風亭柳枝と八代目三笑亭可楽以後はあまり演じ手がなかった。そうした色を薄め、滑稽噺をして蘇られさせたのは志ん朝の功績だろう。
甲府育ちの善吉が江戸に出てひとかどの人間になり故郷に錦を飾ろうと上京してきたが、浅草寺の境内で巾着をすられて無一文。
腹を減らして、とある豆腐屋の店先でオカラを盗みぐい。若い衆が袋だたきにしようというのを、主人が止める。
事情をきいてみると気の毒の身の上、ちょうど家も代々法華宗だからと、善吉を家に奉公させることにした。
仕事は豆腐の行商で給金は少ないが歩合が取れる。
善吉の人柄とサービス精神で町内の人気は上々。
こうして善吉は三年間、毎日「豆腐ィ、胡麻入り、がんもどき」と、売って歩いた。
そうこうしているうちに、豆腐屋の一人娘に婿を取り、店の跡取りを作らなくてはならない時期に。宗旨も合うし、真面目な働き者ということで、主人と女房は善吉に決めようとなった。
娘も気がある様子で早速善吉に話す。「勿体ない」と答える善吉に、断ったと思い違いして旦那は怒り出すが誤解が納まり善吉はめでたく豆腐屋の養子になった。
それから若夫婦で家業に励んだから、店はますます繁盛。
ある日、善吉がまだ甲府の在所へは一度も帰っていないので、世話になった叔父に報告と、身延さまへの願がけのお礼を兼ねて里帰りさせてほしいと、旦那に申し出る。
翌朝、若夫婦で旅支度して家から出ると、
近所の人たちが「もし若だんな、どちらへお出かけで?」
善吉が「甲府(豆腐)ィ」
妻が「お参り(胡麻入り)、願ほどき(がんもどき)」。
白酒は
・腹を空かした善吉が一升飯を平らげる場面
・善吉の商い先ではオカミサン連中が毎日豆腐を買ってくれるので、その亭主たちは三度三度豆腐を喰わされる羽目になるというエピソード
・娘の婿にといわれた善吉が遠慮していると、早とちりした旦那がいきなり怒り出す場面
などを聴かせ所にして、オリジナルをさらに爆笑モノに仕立て直した。
この大した面白くもない噺をトリ根多にまで仕上げたのは白酒の力だ。
白酒の優れた点は、登場人物を戯画化しながら、オリジナルの風味を壊さぬことにある。

それぞれの持ち味を生かした高座、結構でした。

« #63扇辰・喬太郎の会(2013/10/14) | トップページ | #413花形演芸会(2013/10/19) »

寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

やっぱりおいでになってたんですね。
つる子は雲助の見番にもでるのは誰のせいかと酒の肴になりました。

佐平次様
私は元々、定席以外のこうした落語会に前座を出すのに反対なんです。貴重な15分を、なぜ下手な噺で我慢しなくちゃならないか、そこが納得いきません。

いらっしゃるのでは、と噂しておりました^^
白酒の「首ったけ」は良かったですね。
私は、もし開口一番が必要なら、二ツ目でもいいと思っています。あるいは真打でも。
寄席じゃないんですから、その落語会に相応しい人を人選してもらいたいと思います。

小言幸兵衛様
三巨頭揃い踏みだったようで。
開口一番で前座を使うというのはどういう意味があるんでしょうか、理解不能です。
よく客席を慣らすだの温めるだのという理屈を付けていますが、逆効果の場合が殆んどです。
少なくとも下手な前座は御免蒙りたいですね。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「通ごのみ 扇辰・白酒」(2013/10/18):

« #63扇辰・喬太郎の会(2013/10/14) | トップページ | #413花形演芸会(2013/10/19) »