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2013/10/27

#28三田落語会「扇遊・一之輔」(2013/10/26昼)

扇遊が、半井小絵がNHKニュースに出なくなってから天候不順が続くといっていたが、アタシも同感。早く戻してあげないと、これからどんな天変地異がおきるか分かりませんよ。
台風27号が東にそれた10月26日、予定通り開催された第28回三田落語会・昼「扇遊・一之輔」へ。
三田落語会も2010年4月~2013年6月の間、毎回欠かさず参加していたのだが、都合でこの8月に不参加で連続が途切れてしまった。
毎度もことながらこの会のスタッフの人たちはとても感じが良い。こういう所は他の会も見習って欲しい。

<  番組  >
前座・入船亭ゆう京「弥次郎」
入船亭扇遊「試し酒」
春風亭一之輔「寝床」
~仲入り~
春風亭一之輔「鮑のし」
入船亭扇遊「付き馬」

落語の世界といえば思い浮かぶのが「長屋」「お店(たな)」「遊郭」といった場所であり、登場人物はといえば大家と店子、店の主人と奉公人、遊女・若い衆・幇間と客だ。
アタシが寄席に行きだしたころは未だ噺家自身がそうした世界を経験していた。若いころは店に奉公したことがあり、長屋に住み、吉原に通う。幇間をしていたことのある落語家も少なくなかった。だから演じる方にリアリティがあった。
今は落語家の多くは戸建てやマンション住まい、吉原はとうに無くなり、近ごろでは大学の落研から入門というのが一般的なコースにすらなっている。
昔は利口な人は客席に座っていたが、今では高座に上がっている。少し売れ出すと本を書いたりして、もはや落語家は知識人である。だから噺家が「我々同様、愚かな人間が・・・」などというと白けてくる。
演じ手も客も、古典落語は完全なバーチャルの世界だ。そういうものとして演じ、そういうものとして客は聴いているという暗黙の了解で成り立っているわけだ。
一之輔が20数日ヨーロッパを周り落語を演じてきたと語っていた。外国人が落語を理解できるだろうかとなんて心配することはない。古典の世界を知らない点に関しては私たちも外国人も大差ない。

扇遊の1席目「試し酒」
古典と思いきや、昭和初期に創作された新作。新作も数十年経てば古典になるわけだ。
5代目小さんが絶品で、次いで志ん朝、その後の人たちは小さんの演出を踏襲している。
扇遊の高座は、見せ場の、清蔵がいかにも旨そうに盃を空け、バカっ話しをしながら次第に酔っていく様子を丁寧に描いていた。豪放磊落のなかに主人思いという清蔵の造形も良くできていた。

一之輔の1席目「寝床」
一之輔の特長は、先人のいいとこ取りで組み立て、そこに独特のギャグを放りこむという演じ方にある。この高座でも志ん朝(8代目文楽型と志ん生型の2パターンを演じていた)や上方の枝雀の演出を併せたような組み立てをしていた。なおかつ無理なく調和をさせている点にこの人の才能を感じる。
ただこのネタは人間の業としての「自己顕示欲」(カラオケにも繋がるのだが)がこの作品のテーマだと思うが、志ん朝や枝雀に比べそこまでの深みには達していないのはやむを得ぬ所だろう。

一之輔の2席目「鮑のし」
市販CDとして志ん生・馬生親子の他、大師匠にあたる先代柳朝のものがある。柳朝の演出は志ん生のとは違るが、一之輔は志ん生型を基本に柳朝のギャグ(中身は変えていたが)を採り入れていた。
テンポと歯切れの良さは大師匠を彷彿とさせる。
噺家には色々なタイプがある。若い時にパッと才能が花開く人もいれば、50過ぎてから頭角を現わす人もいる。若くて売れる人にも、その後さらに芸を磨いていくタイプもあれば、逆に次第に伸び悩み昔は良かったと言わせるようなタイプもいる。一之輔には当然のこと、前者のタイプになって欲しい。

扇遊の2席目「付き馬」
いかにもこの人らしいキッチリとした高座だった。見せどころの早桶屋の主人と牛太郎(馬)との会話のすれ違いぶりが良く出来ていた。
ただ、騙す男と牛太郎がともにマトモな人間に見えてしまうのは、扇遊の人柄か。欲をいえば廓噺らしく人物にもっと艶が欲しい。

三田落語会のテーマである「本寸法」に相応しい二人の高座は期待通り。

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コメント

噺家が卑下していうギャグ、ちょっと違和感があるこの頃です。

佐平次様
露の五郎兵衛がこの後を「・・・というにはウソで、落語家はアホではできません。物を考えなきゃなりませんから。そこいくとお客さんは入り口で金さえ払っておきゃ・・・」と本音を言っておりました。

こんにちは。
私も会場におりました。一之輔「寝床」、主人のキャラクターがあまりにも駄々っ子っぽく演出されてましたが、いつものことなのでしょうかね?楽な演りかた選んだな、という印象が残りました。

泥水様
厳しいご指摘です。
大店の主人も、「義太夫を人に聴かせる」という唯一の道楽を否定されるとまるで駄々っ子のようにイジケ嘆き泣き喚くというのは枝雀の演出の影響かと思われます。
しかし枝雀の場合は旦那が駄々子みたいになるから面白いのであって、一之輔の場合はただの駄々っ子に見えてしまう。そこは芸に差であって現状ではいかんとも成し難いところです。
一之輔ほどの技量を以てしても、未だこのネタを演じるには無理があるかも知れません。

私は昨夜、神楽坂で喜多八と一之輔でしたが、一之輔は良かったですよ。
欧州旅行の話も楽しかった。
ほめ・くさんがご指摘の通り、熟練の味を求めるのは無理ですが、あの若さであの芸です。
着実に名人への階段を駆け上がっているように思います。

小言幸兵衛様
私も行っておりました。一之輔の2席、やはりタダモノじゃない。ミスしてもそれを即座に切り返す能力は若手の中では別格です。
これから先、どこまで伸びるのか注目されます。

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