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2013/11/17

「金時・ひな太郎の会」(2013/11/16)

年1回、鈴本演芸場で開かれる「金時・ひな太郎の会」、今年は11月16日に。
アタシ同様毎年来ている方が多い様で、会場は和気藹々とした雰囲気に包まれている。
金時はいずれ5代目三遊亭金馬の襲名が予想されているし、ひな太郎(古いファンには古今亭志ん上の方が通じるかも)といえば前の師匠・志ん朝から後継者として期待されていた人物だ。
中堅実力派の二人会、さて今年はいかに。

<  番組  >
前座・柳家フラワー『出来心』
桂ひな太郎『そば清』  
三遊亭金時『掛取萬歳』 
~仲入り~
三遊亭金時『棒鱈』 
桂ひな太郎『文違い』  

先ずは前座に小言を。鈴本では仲入りに前座が客席の前に立って携帯電話などの注意を述べるのだが、こういうのも芸の内で、きちんと説明するようにすべきだ。金時も注意していたが、素人じゃないんだから。
もう一つ、後半の金時が高座から下がる時、高座返しの前座とすれ違っていた。こんなのは見たことがない。師匠が降りる前に高座に上がってどうする。修行中はひとつひとつの事を疎かにしないという基本的な態度ができていない。

ひな太郎『そば清』
特に季節は定められてはいないが、もり蕎麦というイメージから何となく夏場のネタという感じがする。やや季節外れの感もある。もっともこの後のネタが年末なので、割ればちょうどいいのかも。
今でもTV番組などでも時々放映されているが、大食い大会というのは江戸時代からあったらしい。文化年間の記録ではモリ蕎麦63杯というのはあるそうで、このネタの50杯はそれほど大袈裟じゃないわけだ。
最近ではさん喬が好んで高座にかけているが、違いの一つは蕎麦の置き方だ、さん喬の方は前に置かれて蕎麦を食べるが、ひな太郎では左右交互、つまり右側の蕎麦を食べている最中に次が左側に用意されているという設定だ。
もう一つは蛇含草の種明しをさん喬が途中でするのに対し、ひな太郎は最後に持っていく。
蛇含草のくだりがいわばオチになるので、アタシはひな太郎の演出の方が正解だと思う。

金時『掛取萬歳』
このネタ、近ごろでは付けを取りにくるのが狂歌好きの大家、喧嘩好きの魚屋、芝居好きの番頭の三者だけにして「掛取り」というタイトルで演じられる事が多い。
この日の金時は、この後に義太夫好きと三河万歳好きを登場させるフルバージョンだった。この噺を三河万歳で締めるというは、明けて正月の目出度さにつなげるもので本来は欠かせないのだ。
従って、金時が本寸法。
この人の持ち味である大らかな芸風を活かせた高座で聴かせてくれたが、このネタはどうしても圓生の高座が耳に残っている。圓生の場合、特に義太夫は本職裸足であり、ここを聴かせ所にしていた程だ。
三河万歳もまた然り。
個々の技能に腕を磨いて更に完成度を高めて欲しい。

金時『棒鱈』 
将軍のお膝元が自慢の江戸っ子にとり田舎侍はとかく嘲笑の対象にされていたようだ。特に薩長が天下を取る幕末ではいっそうこの傾向が強まったことだろう。一歩間違えば無礼討ちで命を落としかねないわけで、そのスリルがまた堪らなかったに違いない。
一方で大勢の芸者に囲まれて上機嫌の薩長武士(と思われる)と、男同士二人だけで酒を呑んでいる姿の対照。呑んでグズグズになっていた江戸っ子が侍相手に胸のすくような啖呵を切るのを聴かせ所とした、金時の楽しい1席。

ひな太郎『文違い』  
この噺は難しい。お杉という宿場女郎と三人の男を巡る物語だが、この男たちはそれぞれ対照的だ。
先ずは職人の半公、金はないが威勢が良くて人情に厚くはねっ返り、自分こそモテルという自惚れが強い。
角蔵は近郊の百姓、無粋な男の代表格。
そして芳次郎は恐らくは博打打ちで、苦み走ったいい男っぷり。我儘で拗ね者のところが母性本能をくすぐるってぇヤツだ。お杉にとってこの男だけは心から惚れた間夫なのだ。
この3人の男たちの演じ分けが基本だが、大事なのはお杉がそれぞれにどういう具合に対応していくか、その描写だ。
半公に対しては自尊心をくすぐりながら甘えて見せる。
角蔵には邪見な態度を取り、それでも惚れていると思わせる。
芳次郎に対しては、惚れた弱みでいつもハラハラしていなくちゃならない。
それが最後のどんでん返しで一変する。
このネタは心理劇だ。
ひな太郎の高座はそれぞれの人物像を鮮やかに、お杉の強(したた)かさと女としての弱さが十分に描かれていて好演。
この人の持ち味が活きた高座だった。

『文違い』の山場での地震には少し驚いたが、充実した会だった。

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コメント

なるほど、これは見逃せないですね。
私はこの二人を知らなかったのです、なんとね。

投稿: 佐平次 | 2013/11/18 10:24

佐平次様
ご存じないのは意外な感じがしますが、二人とも寄席に出る頻度は多くないのは確かです。落語協会でいえば20人ほどの人気者が常時出演していて、そこから人気が一歩下がっている人は出番が回ってこないという現状があり、悩ましい所です。

投稿: ほめ・く | 2013/11/18 11:18

二人会というのは、相手に対して敬意を抱く者同士が開くんでしょうね。
古くは二朝会(先代柳朝、志ん朝)がそうでした。
(今書いてみて思ったんですが、この二朝会は豪速球投手と針の穴を通すコントロールの良い投手との投げ合いのよう・・・)

金時は何度か聞いたことがありますが、登場人物の表情のつくり方がとてもうまいと思います。

投稿: 福 | 2013/11/19 06:56

福様
二朝会は残念ながら観てないんです。羨ましい~
この二人会もお互いに敬意を払っている間柄のようで、会場の雰囲気もいいんです。
金時は前に聴いた「不孝者」が実に良かった。旦那に無理やり分かれさせられた芸者が再会するシーンでの、芸者が恨みつらみを言いながらも、旦那への思いを断ち切れない心情が巧みに描かれていました。

投稿: HOME-(ほめ・く) | 2013/11/19 09:47

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