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2013/11/22

俳優座『気骨の判決』(2013/11/21)

11月21日、紀伊國屋ホールで上演中の劇団俳優座『気骨の判決』へ。
この物語は、戦前の軍国主義の時勢にあって、なお正義を貫いた”伝説の判事”吉田久の姿を描いたもので、2009年にNHKドラマ化され大きな反響を呼んだ作品を舞台化したとある。
言い換えれば当時の司法というのは政府の言いなりになっていたということだ。それは今日においても、最高裁が重要な政策についたは常に政府の方針を追認してきているし、下級審で反対の判決を出した者は出世コースから外されているわけで、あまり変わっていない。
安倍政権による「戦前回帰」が強まる中で、こうした芝居が上演されるのは意義があるのだろう。

原案:清永聡(新潮新書「気骨の判決-東條英機と闘った裁判官」より)    
作:竹内一郎    
演出:川口啓史
<  キャスト  >
加藤佳男:吉田久(大審院第三民事部部長・裁判長)
河野正明:山崎武一(同・陪審判事)
河内浩:大川年男(同上)
矢野和朗:明石健郎(同上)
渡辺聡:松尾浩一郎(同上)
野上綾花:小松真弓(同・事務官)
仙名翔一 :矢島勉(同・給仕)
岩崎加根子:吉田清美(吉田久の母)
香野百合子:吉田盈子(久の妻)
KiNoMi:登坂稔子(久の娘)
芦田崇:吉田太郎(久の長男)
佐藤礼奈:夏江(吉田家の女中)
中寛三:冨吉栄二(衆院鹿児島二区候補者・原告)
可知靖之:薄井美朝(鹿児島県知事、後に警視総監)
遠藤剛:日高聡一(鹿児島県内の国民学校校長)
島英臣:東野秀哉(憲兵司令官)
河原崎次郎:沢田武三郎(元大審院判事)
坪井木の実:大川蓮乃(大川年男の妻)
荒木真有美:東野美和(東野秀哉の妻)

ストーリーは。
戦時中の1942年、東條英機内閣の主導で行われた総選挙は、翼賛政治体制協議会から推薦を受けた候補者が圧勝する。当局によるひどい選挙妨害や対立候補に対する弾圧によるものだった。
鹿児島第二区で落選した非推薦候補者4名が大審院(今の最高裁)に選挙無効の訴えを起こす。この内の冨吉栄二候補者については吉田久部長の第三民事部が審理することになる。
これらの裁判についても東條首相は司法官に「戦争遂行に重大な障害を与える職務に対しては非常措置を取る」と脅しをかけ、次々と原告敗訴の判決が出される。
その中で吉田部長の主導のもと、第三民事部だけが現地調査で聴き取りを行うが、鹿児島県知事らの妨害と干渉にあい思うように証言が得られなかった。一人、国民学校校長だけが勇気を出して選挙妨害を指示する文書を吉田部長に提出する。
吉田部長には特高の監視がつき、その家族に対して「非国民」という罵声が浴びせられ、村八分、配給の停止など嫌がらせが行われる。
しかし吉田らはそうした圧力に屈することなく正義を貫き、昭和20年3月1日、政府が主導した翼賛選挙に唯一無効判決を下す。合議の結果は吉田部長以下5名の判事全員一致だった。

その後、吉田久は判決の4日後に辞表を提出し、他の4名に裁判官も出世の道を閉ざされたまま世を去った。
軍部に迎合した判決を出し続けた他の大審院判事たちは、戦後もなんらお咎めがなくそのまま最高裁に移行し順調に出世したとのこと。
吉田久は戦後、鳩山一郎(翼賛体制に加わらなかった数少ない政治家)率いる日本自由党の顧問になり、日本国憲法第76条の起草に心血をそそぎ、「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職務を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」との成文化に貢献したとある。

吉田久は生前、正義についてこう述べていたそうだ。
「正義とは、お婆さんが道端で倒れていたら病院に連れていくことだ。正義は、カッコ良いことでなく心だ、真心だ。」
その信念を貫いたことは賞賛に値するが、それが出来た人は少数であった点は考えさせられる。
吉田を支えた家族たちの姿や、吉田と官憲との対決、吉田と他の裁判官との葛藤を中心に描かれ、約2時間半の緊張した舞台は見応えがあった。
出演者もベテラン岩崎加根子から若手まで、さすがは俳優座と思わせるものがあった。
ただ、テーマに大きさに比して今ひとつ胸に迫るものが欠けていたように思う。
それはこの裁判は5名の合議制であり、当初は選挙無効を支持する者は吉田を含め2名、反対が3名であった。それが最終的に5名全員が支持で一致した経過が省かれていたからだと思う。審理中に起きた東京大空襲で日本の敗戦が濃厚になったからといった説明があったが、果たしてそうだったんだろうか。もう少し彼らの葛藤を丁寧に描くべきだったと思う。
その点が惜しまれる。

公演は24日まで。

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