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2013/11/07

「喜多八膝栗毛 秋之噂」(2013/11/6)

11月6日、博品館劇場で行われた”銀座の噺小屋「喜多八膝栗毛 秋之噂」”へ。場所柄か勤め帰りの人が目立つ。開演前や仲入りにジャズが流されるのはいかにも喜多八の会らしい。会のネーミングも喜多八に因んで膝栗毛としてるのも洒落ている。
プログラムに本田久作が、自分も喜多八もアンツルこと安藤鶴夫が嫌いだと書いている。それはアンツルが絶賛していた3代目桂三木助「芝浜」への批判とも取れる。談志も同じようなことを言ってたっけ。
アタシは三木助の「芝浜」は好きだ。あれはあれで真に結構です。だけど、この程度のネタをまるで大ネタのように扱う昨今の風潮には辟易としている。登場人物は二人だけ、ボテ振りの魚屋が浜で財布を拾い喜んだが、女房は夢だとウソをついて亭主を働かせ、3年後に商売に成功すると実はあれはホントだったと亭主に打ち明けるというだけのストーリー。落語としては小品と言っても良い。一大人情噺にしてしまったのは三木助の責任ではない。
でも芝浜を「大したネタじゃない」と語っていた談志も、晩年の高座では「神様がやらせてくれた最後の噺だったのかも知れない」などと自画自賛してるんだから分けが分からぬ。
今回はその「芝浜」がネタ出しされていた。

<  番組  >
柳家ろべえ「お菊の皿」
柳家喜多八「蛙茶番」
柳家喜多八「首提灯」
~仲入り~
太田その・松本優子「唄と三味線」
柳家喜多八「芝浜」 

順不同で、
ろべえ「お菊の皿」、ツマラナイ枕をダラダラと。
太田その・松本優子「唄と三味線」、普段は寄席のお囃子で、しかも太田そのは落協、松本優子は芸協に所属だからこういう会でしか顔を見ることができない。その、という名前から年配の女性かと思っていたら意外に若い人だったのでビックリした。
三味線の演奏と歳の瀬から正月に因んだ小唄、あんこ入り都々逸などを披露したが、優子姐さんの美声には聞き惚れてしまった。やはり唄は「一声二節(ひとこえにふし)」だ。
小菊姐さんら音曲師として高座に上がる芸人とは違った味わいがあり、喜多八のいう通り次回からもレギュラー出演して欲しいものだ。
処で、その姐さんはトークを磨けば高座に上がれる音曲師になれると思うのだが、いかがだろうか?

喜多八の1席目「蛙茶番」
江戸時代は芝居というと御上がうるさいので茶番と称していた。
演目のタイトルは上演する芝居が「天竺徳兵衛」の「忍術ゆずり場」で、舞台に蝦蟇(蛙)が出る所から付けられたもの。
いきなりのバレ噺。このネタ、本来だと前半に役モメがあり仕方なく蝦蟇の役を定吉に代役させるという場面があるのだが、最近はカットされることが多い。
なおネタに登場する「舞台番」だが、舞台下手の角に座り、見物人が芝居の妨害をしたり、 騒いだりするのを制していた。明治初期ごろまで存在してたらしい。
半ちゃんが緋縮緬のフンドシを質屋から請け出す時、代わりにお釜を持って行くのは喜多八独自の演出か。フンドシとお釜で縁があるというわけ。半公の陽物を見てぎょっと驚く見物人の姿がおかしい。
恐らく番台のような台に座っていたと思われる半公のモノを見て、周囲の人間が驚いたというんだから、よほどの巨根だったに違いない。通常のサイズでは見えない筈だろうから。
もし小間物屋のみい坊がその場にいたら、どう思っただろうか。
ついついコッチも下品になってスミマセン。

喜多八の2席目「首提灯」
「胴斬り」をマクラに振っていたが、こちらも本来はバレ噺、1席目とはフンドシつながりになっていて「付く」ネタだが、承知で演じたのだろう。
斬られた首が次第に胴と離れた動きをする所が見せ場で、これだけは面長の人でないと表現するのが難しい。
酒癖の悪い江戸っ子がさんざん悪態をつき、初めは大人しかった武士が次第にジリジリしだして終いには怒りを爆発させるまでの喜多八の描写が良かった。
見せ場の首から上の頭部だけ動かすという演技も上々。

喜多八の3席目「芝浜」 
三木助型が気に入らないなら、いっそ三木助以前の演出に戻してしまったらどうなんだろうか。
志ん生・志ん朝親子は芝の浜で財布を拾う場面をカットし、いきなり勝五郎が自宅に戻って女房に経緯を話すという演出を行っていたが、成功したとは言えない。圓朝全集にも残されていないそうなので、オリジナルを掘り起こすのは難しいのだろうか。
喜多八の演出も三木助型からそう大きく外れたものではなかったようだ。いくつか違いがあったが、その一つは勝五郎が三年後にボテ振りから表通りに一軒の魚屋を開くという設定にしなかったこと、二つは女房が50両の金を出す時に革財布ではなく竹筒から出し財布は別にしておいたこと、三つは50両の真相を話した後に女房が酒屋に酒を買いに行くという設定に変えていたこと。
いずれも夫婦の情愛を色濃く描いた演出にしたものと思われ、話の運びとしてもよりリアリティを持たせていた。
先ずは喜多八の試みは成功したと見た。

初めて喜多八の高座を観たのは今から10数年前になるが、その当時は平凡な印象しか残っていない。
この期間にこれほど大きく変貌した噺家は、幾人かの若手は別にして喜多八しか知らない。

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コメント

昨日は国立演芸場・今松の方にいきました。
いつもの居残り会で「芝浜」の話になって、私はあれは下手でもそれなりに聞かせられる・その程度のネタだと言ったり自殺した三木助の話になったり、、でした。

投稿: 佐平次 | 2013/11/07 09:49

佐平次様
下手が演ってもそこそこ聴かせられるという点では「芝浜」と「子は鎹」は共通しているのかも知れません。夫婦の情愛をテーマにも、共通点があります。
両方とも悪いネタではないですが、頻度が多すぎます。

投稿: HOME-(ほめ・く) | 2013/11/07 11:03

真ん中のやや後ろ寄りにいましたが、声が良く聞こえませんでした。私は三席とも知っていたのでなんとか我慢しましたが、一緒に行った家内は噺の筋が分らないと言っていました。あの会場はいつもあんなものなのでしょうか?もうあそこは行きません。

投稿: YOO | 2013/11/07 23:23

真ん中のやや後ろ寄りにいましたが、声がよく聞こえませんでした。私は三席とも知っていたので我慢しましたが、一緒に言った家内は筋が分らないと言っていました。喜多八さんの芸以前の問題でした。もうあの会場には行きません。

投稿: YOO | 2013/11/07 23:29

YOO様
確かに声が聞き取りにくかったですね。この会場でも別の噺家と時は気にならなかったので、開演前のマイクテストが悪かったのだと思います。
主宰者の配慮が足らなかったという事になります。

投稿: HOME-(ほめ・く) | 2013/11/07 23:33

申し訳ありません。誤って同じコメントを二度送ってしまいました。しかし腹立ちまぎれにさっさと帰って来ましたが、こんな時こそアンケートを出して来なければいけなかったと、いま後悔しています。

投稿: YOO | 2013/11/08 00:07

YOO様
私も記事で触れなかったことを反省しています。

投稿: HOME-(ほめ・く) | 2013/11/08 07:40

そのさんは小三治門下でもあるんですよね!
その名も「柳家その治」
一門会では色物枠で出演されているみたいです。行ったことないのでよくわかりませんが。
落語協会は名前を二文字にするそうです。だから本当はそのこ?
二文字って雰囲気出ていいですよね。

投稿: かおる | 2013/12/12 11:23

かおる様
「その治」ですか、粋ですね、「その字」にしたらもっと粋でしょう。
太田そのさん、確かに色々な落語会では既に高座を務めているようです。いずれ定席の高座にも上がるかもしれないですね。

投稿: HOME-(ほめ・く) | 2013/12/12 13:37

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