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2013/12/10

「ネットで世論調査」なんて出来ない

近ごろ「ネット(00サイト)の世論調査」という表現を時おり眼にするが、現状ではネットの世論調査はできない。
世論調査というのは、ある社会集団の構成員について世論の動向を明らかにする目的で行なわれる統計的社会調査、またはその調査技法をいう。
例えばある特定の問題について国民の世論を調査するなら、本当は国民全員の意見を調べなければならない。しかし時間的にも費用面でもそれは不可能なので、一定数の人々を標本として、設問し回答を集約することにより、国民全体の世論を推定することになる。
「世論調査」というのは統計理論に基づいた標本調査でなくてはならない。
この場合大事なのは、調査対象全体(母集団)から偏向なくサンプリングを行わなければ結果は不正確なものとなるということだ。
ネットでは世論調査が出来ないというのは、現状では「偏向なくサンプリング」が出来ないからだ。ネットの利用者が限られているし、調査対象がサイトに接続しているか、あるいはサイトの会員に限られている。
ネットで出来るのは、そのサイトの利用者や会員の意見の集約だけで、いわゆる「アンケート調査」である。
今回の「特定秘密保護法」の調査で、マスコミの世論調査とネットの調査で賛否に大きな隔たりがあるとされているが、当然のことだ。
もちろん、定期的に調査していれば、その変化により動向を把握できるという可能性はある。
また将来、国民の大半がネットを利用するようになり、従来手法の調査とネットの調査との偏りが修正できるようになれば、ネットを使った世論調査も可能になるかもしれないが、かなり先の話だ。

現在はどのような方法で世論調査が行われているかだが、TV局や新聞社では一般に「RDD方式」を採用している。
この方法は、コンピュータで乱数計算を基に電話番号を発生させて電話をかけ、応答した相手に質問を行う方式で、従来の固定電話を対象として行なわれる。NTTなどの電話帳に掲載されていない電話番号も抽出対象となりえる。
比較的偏りがない方式ではあるが、問題点もある。
先ず固定電話を持たない人は対象外になってしまう。
回答率も問題で、低くなればなるほど精度は落ちてくる。
「無回答・分からない」という回答をどう評価するかによっても判断が分かれる。
朝日新聞の調査には回答を拒否しても、産経新聞の調査には応じるなどといった、調査主体の影響もある。

この他に、設問の仕方によっても回答が変ることもある。
「消費税率を上げることについて」という設問で、回答欄が「賛成、反対」という場合と、「やむをえない、反対」という場合では、回答が異なるだろう。
設問の前段に「日本はこれから少子高齢化社会をむかえ、社会保障費の財源不足を補うために消費税率を上げることが予定されているが」と書き加えれば、これまた賛否は大きく変わる。
世論調査に名をかりた世論誘導もある。
調査結果だけでなく、調査方式、設問の仕方、回答方法など中身を見ておく必要があるわけだ。

いずれにせよ世論調査の定義を考えたら「ネットの世論調査」などという表現は不正確だ。

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