大成建設が右翼を使って不正受注工作
『週刊文春』12月26日号によると、スーパーゼネコンの大成建設が右翼団体や暴力団を使って不正な受注工作を行ったとのスクープ記事を掲載している。
内容の一部は既に会員制月刊誌の『FACTA』10月号が書いていたようだが、今回の文春の記事はより詳細なもののようだ。
施主は東京医科大学(新宿区)で、同大学は2016年の創立100周年に合わせて大学病院の建て替えを予定している。大成建設は以前から東京医科大学に深くかかわっていて、現在の病院も大成が施工したものだ。
当時から大学の理事が大成から饗応を受けていたと囁かれていて、新病院の先立って行われた新教育実験棟の入札には「大成は外すべき」という声が内部から上がっていた。
しかし大成は予定価格を下回る34億円で落札した。
これに対し飯森眞喜雄副学長が、「国から毎年20億円もの助成金を受けている学校法人が特定のゼネコンと癒着するのはコンプライアンスに反する」と批判した。
この直後から大学関係者宛に飯森氏のスキャンダルを告発する怪文書が郵送されてきた。これが6月中旬。
7月18日より右翼団体「正氣塾」の街宣車が東京医大病院前にやってきて、飯森氏への個人攻撃が始まる。同じ日に右翼系の「敬天新聞」に怪文書が掲載された。
その1週間後に、大成建設の多田博是副社長からの申し入れにより多田氏と飯森氏の会談が行われる。
その概要は①新病院の予算は450億円②受注のために飯森先生にも協力していただきたい③協力してくれたら450億円のうちの1%を、合法的なコンサルタント会社を通して還元したい④受注額は予算通りなので1%分は上乗せした数字にする⑤信用のおけるコンサルを通して合法的にやるので問題はない、という多田副社長の“誘い”が示されたとのこと。
この内容は飯森氏がICレコーダーで録音しているので、ヤリトリはかなり生々しい。
しかし飯森氏がこれを断ると、右翼の攻撃が激しさを増す。
ここで奈良県で病院を経営する東京医大OBのO氏という人物が登場する。8月3日、O氏から「右翼はしつこいので何とかしたる」と言われ、飯森氏は大成の多田副社長の所へ連れて行かれる。
多田氏は飯森副学長に右翼の新聞を見せて脅し、O氏と共に飯森氏に辞表を書くよう迫る。多田氏は右翼の街宣を中止させるためには大義名分と金が必要だ。飯森氏が辞任するというのが大義名分で、金はこちらで用意すると言う。これも飯森氏は断った。
8月10日になると、多田氏から飯森氏に電話で、今度は詫び状を書くように要請があった。多田氏によれば街宣は一応カタが付いたが、敬天新聞がかなりしつこい。相手は山口組だからとにかく詫び状を書けと言う。
この件も飯森氏は録音していたので、内容は生々しい。
それをも拒否すると、9月11日に右翼の街宣が再開され、それは10月中旬まで続く。
大成の多田副社長と右翼の動きがあまりにリンクしていたことに気付いた一部理事から「これは大学の存亡にかかわる問題」という意見が出て、ようやく理事会で調査委員会を立ち上げる。
しかし大学側は終始調査には消極的で、このまま大成に落ちるかと思われたが結果としては失敗に終わる。
工事は大林組が落札した。
この理由は、前記の『FACTA』の記事が出たことで、大成が自ら引いてしまったようだ。これから東京五輪の大型工事を控え、イメージを悪くしたくなかったものと見られる。
この件は、飯森氏より録音なの証拠と共に警視庁に被害届が出され、受理されている。
反社会勢力が絡んでいる事案なので、捜査当局による全容解明が待たれる。
【追記】
なぜ今この記事を採りあげたのか、その理由は次の通り。
1.大成建設は安倍政権と密着している。例えば安倍首相の5月の中東・ロシア歴訪、同月のミャンマー訪問、8月のアフリカ・中東歴訪にはいずれも大成建設の山内隆司社長が同行している。
10月19日にトルコ・イスタンブールで行われた「ボスポラス海峡横断トンネル開通式」に安倍首相が異例の出席をしたが、このトンネルは大成建設が工事したものだ。
総工費2000億円といわれる新国立競技場の工事も大成が本命とされているとのことで、アベノミクスによる恩恵を最も受けているゼネコンと目されている。
2.副社長が直接乗り出したトップセールスでありながら、東京医科大学の副学長に対し露骨にワイロの提供を申し出ている。しかも右翼や暴力団の名前を使って脅しをかけており、その内容が相手方に録音されている。これでは言い逃れができない。
3.今回こうした手口がたまたま明らかになったが、大成は他の物件においても同様の手口で不正な受注活動を行っている可能性が高いと見られる。
本件は民間工事であるが、これが公共工事なら私たちの税金が使われるわけで、こうした不正を見逃すわけにはいかない。
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好い記事ですね。
拡散してもいいですか?
投稿: 佐平次 | 2013/12/29 11:03
佐平次様
もちろんOKですが、元ネタの週刊文春の記事をそのまま要約した内容です。
それにしてもバックマージンが1%から頑張って1.5%というから、4.5億円~6.75億円という途方もない金額になり、驚きです。
逆に、右翼の街宣車は1日につき5万円というのは安過ぎる感じがします。
こういう具体的な相場が明らかにされているのもこの件の特長です。
投稿: HOME-(ほめ・く) | 2013/12/29 11:17
初めまして。お邪魔します。
大成建設は、死の商人である大倉財閥の土木部門で戦前から陸軍大臣桂太郎との癒着と乱脈な工事経費で暴利を貪ってきました。
時の権力と癒着し、現在でも新国立競技場、新辺野古基地、熊本桜町総合事業を主に受注しています。2013年の安倍総理の中東・ロシア、アフリカ、ミャンマー訪問に山内隆司社長が、同行しています。
大成建設が受注したボスポラス海峡横断トンネル開通式に安倍総理が、出席しています。
血税を好きな様に使い回しながら暴利を貪っている数土文夫は、大成建設の社外取締役です。他にも東電の会長、JFEホールディングス、LIXILグループ、武田薬品工業の社外取締役を兼任して5足の草鞋を履く男です。
伊勢志摩サミット会場は、僅か2日間の使用で沖縄洞爺湖サミットの前例追従で解体し、税金32億円が、捨てられました。今回の建設受注は、積水ハウス傘下の鴻池組でした。
積水ハウスの和田勇会長は、安倍総理に省エネ住宅について話しています。今朝、テレビをつけると省エネ住宅を取り上げていました。
大手住宅メーカーの大和や積水は中堅ゼネコンを傘下にし、スーパーゼネコン4社を超える売り上げです。
伊勢志摩サミットで財政出動を言う安倍政権の元で、私達庶民は、全身の毛はおろか、××の毛まで抜かれる恐怖と戦慄を覚えます。
拝読させて頂き、有難うございました。
投稿: 三毛猫 | 2016/06/05 15:07
三毛猫様
当ブログへようこそ。
大手ゼネコンと政治家との結びつきは以前から続いていて、私が現役当時は公共工事で一定金額が地元の政治家に金を渡すのは通例でした(現場を見た事はありませんが、ゼネコンから業者へバッジ(議員)への上納金が割り当てられました)。税金がゼネコンを通じて議員(自民党)に還流される仕組みです。
社外取締役も東芝や三菱自動車の不正で明らかなように全く機能しておらず、むしろ官庁と企業の癒着を招いているだけです。
投稿: ほめ・く | 2016/06/05 17:15