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2014/01/22

壽初春大歌舞伎(2014/1/21)

お知らせの通り当ブログはただいま1か月間の休載中ですが、今日だけ臨時開業します。
1月に入ってモロッコのツアーに参加してきたのですが、帰国後に風邪で寝込んでしまい、ようやく昨日外出できるようになりました。写真の整理や『”ほめ・く”別館』への記事の出稿もこれからなので、こちらの再開は予定通り2月上旬となります。

1月21日、歌舞伎座の『壽初春大歌舞伎』へ。お目当てはもちろん忠臣蔵の九段目。名作の評価が高い九段目ですが、最近の忠臣蔵通し狂言では時間の関係からかカットされることが多く、私も未見でした。今回は幸四郎・吉右衛門兄弟の顔合わせという珍しい趣向に加え、藤十郎も加わるという豪華配役。初春ならではのキャスティング。

周辺のご婦人たちの噂話によれば、ここのところ主役クラスの俳優が相次いで亡くなったり病気で休演したりで、吉右衛門、幸四郎、菊五郎といった立役への負担が過重になっていて体力的にも大変な様子とか。歌舞伎は昼夜の1ヶ月公演で休みなし、確かに負担は相当なものだろう。とにかく彼らはいわば国の宝ですから、健康に留意して活躍して貰いたいと願うばかり。

<  演目と配役  >
一、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
九段目 山科閑居

戸無瀬:藤十郎
小浪:扇雀
大星由良之助:吉右衛門
お石:魁春
大星力弥:梅玉
加古川本蔵:幸四郎

二、乗合船惠方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)

萬歳:梅玉
才造:又五郎
通人:翫雀
大工:橋之助
田舎侍:彌十郎
芸者:児太郎
白酒売:孝太郎
女船頭:扇雀

三、東慶寺花だより(とうけいじはなだより)

信次郎:染五郎
法秀尼:東蔵
柏屋主人源兵衛:彌十郎
おぎん:笑也
堀切屋三郎衛門:松之助
美代:虎之介
おせん:孝太郎
惣右衛門:翫雀
お陸:秀太郎

九段目『山科閑居』
ストーリーは、松の廊下で塩冶判官が高師直を討とうとするのを妨げたのが加古川本蔵。浪士たちにとっては仇と言っても良い存在だ。その本蔵の娘小浪と由良之助の一子力弥とは許嫁の間柄。
おりしも本蔵の妻戸無瀬と小浪が、山科の大星由良之助宅を訪れる。戸無瀬は出迎えた由良之助の妻お石に、力弥と小浪との祝言を望むが、今は浪人であることを理由にお石は輿入れを拒否。
絶望した戸無瀬と小浪が自害を決意するところへお石が現れ、本蔵の首と引き換えなら祝言を認めると切り出す。困惑する母娘。そこに虚無僧姿の本蔵が現れ、立ち合いに出てきた力弥にわざと討たれる。
由良之助は、我が身を捨てて娘の婚礼を懇願する本蔵の心根に感じ入り仇討ちの志を明かす。本蔵から引出物として師直邸の絵図面を受け取った由良之助は虚無僧の衣裳を借り、仇討ちに向けて出立する。
主君への思いは同じなのに結果として敵味方に分かれてしまう本蔵と由良之助、義理の娘の幸せだけを願い命がけで祝言を迫る戸無瀬と浪士の妻としての矜持を保とうとするお石との対決、その一方で許嫁として惹かれあう力弥と小浪との恋情。重層的な構成と緊張感のある舞台は見応え十分。
衣装が戸無瀬が赤色で小浪は純白、つまり紅白の組合せ。それに対する大石一家は全て黒一色。加古川一家が中央にいて、上手には由良之介とお石、下手には力弥という三角形の配置など、細部もよく工夫されている。
名優が火花を散らしたこの狂言だけでも来た甲斐があったというもの。

『乗合船惠方萬歳』
新年を迎えた隅田川のほとりに大勢を乗せた渡し船が。そこへ萬歳と才造の二人連れがやって来る。その場に居合わせた乗客たちは、白酒売の言い立てを皮切りに順番に踊り始め、それぞれの芸達者振りを披露する。萬歳と才造が三河萬歳のご祝儀を軽妙に踊るところに雨が降りだし、皆は船へと乗り込む。
私が未だご幼少のみぎりには、東京でも正月になると三河万歳が来ていた。
江戸の正月の風物詩、三河萬歳を巧みに取り入れた常磐津舞踊。
日本舞踊はいつ見てもいいですね。 初春らしい華やいだ気分に浸る。

『東慶寺花だより』
井上ひさしの同名小説を原作とする新作歌舞伎。
江戸時代、幕府公認の縁切寺として知られる鎌倉の東慶寺には、数多くの女性が離縁を求めて駆け込んでいた。医者見習で滑稽本の作者でもある信次郎は、そうした女性の身柄を預かる御用宿・柏屋に間借りをしている。
そこで巡り合う様々な人々との触れ合いを通して、信次郎人々の心の機微、人情の温かさ、そして女たちの強い想いに触れながら、人間として、物書きとして成長していく物語。
未だ歌舞伎の舞台として十分にコナレテいない嫌いはあるものの、スピーディな場面の展開など工夫が見られた。何より出演者たちが楽しそうに演じていたのが印象に残る。
新春歌舞伎の最後の演目に相応しい舞台だった。

気付いた点を二つばかり。
この日に限らず、最近の歌舞伎にはいわゆる大向うの掛け声が極端に減った。この日の『山科閑居』でも山場になっても「高麗屋」とか「播磨屋」という声がほとんど聞こえない。掛け声は舞台の花であり、少ないと盛り上げに欠けるような気がしてくる。「通人」の方はもう少し積極的に声を掛けて欲しい。
入場料だが、この日は3階A席で6000円。幸い最前列だったので何となく二等席気分だった。
近ごろ落語の独演会ですら4000‐5000円取るというケースがある。一人で座布団にすわって喋るだけでですよ。よく歌舞伎の入場料が高いといわれるが、落語会と比べれば相対的にはむしろ安いと思うのだが、いかがだろうか。

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コメント

コストから見たらそうなんでしょうが、払う方からすると一回で落語二回に傾くなあ。
でも忠臣蔵は見たかった^^。

佐平次様
コスト比較は意味がないと思いますが、とにかく芝居というのは多くの人が係っているので入場料が高いのはやむを得ぬ所でしょう。「山科閑居」は期待通りの結構な舞台でした。

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