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2014/03/12

学術論文のアイマイさ

新たな万能細胞「STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)」の論文問題がゆれている。
過去の画像の使い回しや、出典を明示せずに他者の論文の一部を引用しているなどが指摘されているようだ。
実験を主導した小保方晴子・研究ユニットリーダーが所属する理化学研究所は文部科学省で初めて記者会見し、加賀屋悟広報室長が「世間をお騒がせして誠に申し訳ない」と陳謝した。外部の専門家も交えた調査委員会が3月14日に記者会見し、調査の進展状況を説明するという。
加賀屋室長は「信頼性、研究倫理の観点から、論文の取り下げを視野に入れて検討している」と述べ、調査結果次第では論文の撤回を求める意向を示した。
仮に論文を撤回することになれば研究成果も白紙になるおそれがある。但し、撤回には原則として共著者全員の同意が必要となるので、理研だけの判断ではできない。

この問題で考えなくてはいけないのは、研究成果それ自体が誤りだったのか、あるいは発表論文が不適切だったのかという点だ。
もし実験データが捏造あるいは修正されていたならば成果そのものが否定される。もう一つ大切なことは実験の再現性だ。全く同一の条件で実験を行った場合、同じ結果が得られなくてはならない。偶然やタマタマではサイエンスにならない。STAP細胞の場合、おそらくこの点に疑念が出されているのだろう。

もう一つの学術論文として適性であったかどうかという点だが、これは掲載した学術誌の方針にもよる。一口に学術誌といっても様々な分野に分かれており、ランクも異なる。Aという誌には不掲載になるがBなら掲載できるという事もあるわけだ。
学術誌ごとに審査委員がいて掲載するか否かを決めるのだが、甘い辛いがある。研究者もタテ社会だから例えばその学会の権威者が係わった論文であると、審査は落としにくい。
企業の研究発表の際には、そうした点を利用して権威者を共同研究に引き入れ、企業側に有利な条件で論文を掲載できるよう手配することになる。
では大学の論文なら信頼できるかというと、これも実際には企業が資金を出しているひも付き研究のケースもあり必ずしも公正とは言えない。
だから学術論文だからといって一概に信用するのは危険だ。

以上はあくまで一般論であって、STAP細胞問題に適用できるかどうかは分からないが、ご参考までに。

昨今、作曲家の佐村河内守氏のいわゆるゴーストラーター問題が世間を賑わしたが、学術論文の世界でゴーストライターの存在はその比ではない。
以前に”「ゴーストライター」は日本文化”(2011/05/22付)の記事に書いたものを以下に再録する。
【ゴーストライターが最も日常化しているのは、科学技術の世界だろう。
仮にAという大学教授と、その弟子のBが共同執筆して書籍を出したとしよう。
もしAがその一部を書き、残りの大部分をBが書いた場合は、その書籍の執筆者はA単独となる。
全てをBが書いた場合は、執筆者はAとBの共著になる。
これは「お約束」であり、少なくとも私が現役時代の数年前まではそうであったし、今でも続いていると思う。
科学誌に掲載された論文でも同様で、ある高名な大学教授が書かれた論文について教えを乞うべく訪問したら、自分では分からないからと、執筆した弟子をその場によんで説明させていた。
大先生は、論文自体をあまり読んでいない様子だった。
そげなモンです。
以前に「ポスドク」について書いたように、特に企業においては博士論文の替え玉はそう珍しくなかろう。
上司の命令とあっては部下は逆らえないし、考課に響くとなれば部下はせっせとゴーストライターを務めるしかない。】

決して肯定しているわけではないが、そういう実態もあるということ。

【3/13追記】
Wikipediaの解説によると、本論文の掲載誌「Nature」は、
「同時代の科学誌群とは比べ物にならないほどpolemic ポレミックな目的の (つまり、討論を挑んだり、議論を引き起こすことが目的の)雑誌として生まれ、育てあげられた。」
とある。
そういう意味では掲載論文は趣旨に沿うのかも知れない。

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コメント

ゴーストでも何でもいいから好い研究、素晴らしい音楽を願いたいものでゲス。

佐平次様
STAP論文の場合発表を急ぎ過ぎたのではという印象を持っています。この世界も早いもの勝ちですから。
決してゲスの勘繰りではありません。

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