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2014/04/17

「マニラ瑞穂記」(2014/4/16)

『マニラ瑞穂記』
日時:2014年4月16日
会場:新国立劇場 小劇場 THE PIT
脚本:秋元松代
演出:栗山民也
<  キャスト  >
千葉哲也:秋岡伝次郎(女衒)
山西惇:高崎碌郎(マニラ領事)
稲川実代子:シズ(領事館の雑役)
古河耕史:古賀中尉(領事館付武官)
宇井晴雄:淡路書記官
大里秀一郎:ボーイ伊藤
髙島レイ:娼婦タキ
藤井咲有里:〃イチ
木原梨里子:〃サク
斉藤まりえ:〃ハマ
仙崎貴子:〃クニ
日沼さくら:〃モン
今泉薫:志士、岸本繁
長本批呂士:〃梶川弥一
今井聡:〃平戸建三
原一登:〃長七
梶原航:〃斉藤多賀次郎
形桐レイメイ:〃清平
前田一世:米軍ウィルソン大尉
林田航平:米兵ジミー

この物語は1898‐1899年のフィリピンの首都マニラが舞台。日本が日清戦争に勝って南方への進出を図っていた時期だ。当時フィリピンはスペインの植民地下にあり独立運動が起きていた。これをアメリカが後押しし、そこに日本が加わっていた。もちろん独立支援は表向きで、遅れた帝国主義国だった日米が自分たちの植民地の獲得のためだった。
日本人青年の中には純粋にフィリピン独立の夢を描いて義勇軍に参加した志士がいたが、南方で一旗上げたいという野心家もいた。何か口実をつけて本国から軍隊を出すよう画策する軍人も。
そうした中で彼らを相手に売春でひと儲けしようという女衒と、彼らに売られてきた「からゆきさん」と呼ばれる娼婦たちの存在。劇中で女衒の秋岡が「あん女どもと俺たちは、日本の南方発展の人柱なんじゃ」というセリフを吐くが、そういう側面もあったのだろう。

1898年(明治31年)マニラの日本領事館には、フィリピンの独立運動を支援する日本人の志士たちや「からゆきさん」たちが、内乱で混乱する市井から避難していた。
そんな中、日本領事・高崎碌郎のもとに、女衒の秋岡伝次郎が女たちを引き連れてあらわれる。秋岡はかつてシンガポールで怪しい商売をして財をなしたが、高崎の説得で改心し日本へ帰国した筈だったのだが、今度はマニラに出てきたのだ。
秋岡は賤しい生業をしていても熱烈な天皇崇拝者であり、愛国精神にのっとって行動する奇妙な男でもあった。秋岡は志士たちの心情に共感し彼らを援助するようになる。
秋岡を毛嫌いする軍属の古賀中尉、それに対して職業そのものには反感を抱きつつも秋岡という人物を認め何かと便宜を図る高崎領事。
そうした中を逞しく生きる女たち。
折しも首都マニラが陥落しスペインが降伏、フィリッピンの独立が宣言されるが、実際はアメリカがその後ろ盾になっていた。それまでは米軍と共に戦った志士たちも一転して反乱軍と見做されてしまう。命を落とす者、諦めて帰国する者も出始める。
やがて米軍の追及の手は領事館にも及び、反乱軍を支援したという罪で秋岡を逮捕しようとする。必死でとめる高崎領事。
その期に乗じて秋岡を殺害し領事館に放火し、それを口実に本国から軍隊の派遣を要請しようと謀る古賀中尉。
果たして彼らの運命や、そして女たちの行く末やいかに。

秋元松代の脚本は時代の背景を簡潔にまとめ、個々の人物、とりわけ主人公の秋岡が楽天的で残酷で人が好くて狡猾で、非論理的で行動的なエネルギーに満ちた人物(モデルは「村岡伊平次」という実在の人)として生き生きと描かれている。
もう一人の主人公である高崎領事も、様々な人間が領事官に避難してきた中で彼らを上下隔てなく公平に扱い問題処理する人間味のある官吏として描いている。
劇中ではあまり活躍はしないのだが、シズというい女性。元は「からゆきさん」としてこの地に売られてきたsのだが、娼婦として使い物にならなくなったら農村に売られ牛馬のごとく扱われて廃人同様になっている。日本語も全て忘れてしまったが、ただ日の丸を見ると君が代を歌うことで日本人だと認識される。シズの存在は劇中に登場してくる女性たちの将来を暗示させている。

作者の秋元が当時、作品の元になる資料を調べて「そして当時の情勢と今日のそれとが、まったく近似していることにも驚かされた」と感想を述べていたそうだが、あれから50年、今も同じ感想を抱いたに違いない。

劇場の中央に舞台を置き、周囲に客席を配した栗山の演出は効果的だった。観客の我々もその一員であるかのような気持ちで観劇できた。
出演者では、やはり千葉哲也と山西惇の演技が光る。本来は正反対の立場にありながら「肝胆相照らす仲」のような一種の友情関係がこの芝居の芯だ。軍人役の古河耕史は冷酷さを出していた。
何より娼婦を演じた女性たちが揃って好演だった。本作品の本当の主人公は、「からゆきさん」たちだ。終幕で観客が気付く仕掛けになっている。

芝居の質の割には客の入りがあまり良くなかったのは残念。
公演は4月30日まで。

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