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2014/04/30

「三人吉座」(2014/4/29)

たけのこレシピvol.42「三人吉座 六幕目」
日時:2014年4月29日(火)15時
会場:薮伊豆総本店3階広間
<  番組  >
前座・林家なな子『平林』
古今亭菊志ん『がまの油』
春風亭百栄『引越しの夢』
~仲入り~
隅田川馬石『中村仲蔵』

タイトルは芝居みたいだが落語会だ。「たけのこレシピ」はサイトによると「薮伊豆総本店」宴会場を会場にして開かれている落語会で、「三人吉座」はその中の「馬石・菊志ん・百栄 三人会」を指すようだ。六幕目とあるのは6回目という事なのだろう。
客層は若い人、それも女性が多かった。かつての東京では各区内に数軒の寄席があったようだが、今は全体で4軒だけ。その分をこうした地域寄席にとって替わっているという所か。
馬石と菊志んは2007年の真打昇進で同期、1年遅れて百栄だが年齢は50歳を過ぎている。
この日は三人ともマクラで寄席の失敗談を披露していた。
菊志んは池袋演芸場で前に出た漫才のホームランの勘太郎が喋っている内に差し歯が抜けてしまったというエピソード。それまでダレていた客席は大受け。後に上がった菊志んの落語はさっぱり受けなかった。やはりリアルには敵わないと言っていた。
百栄は4月中席で仲入りで上がる筈だった喜多八が遅れてしまい、協会から仲入り後に上がる百栄に代演で出てくれと連絡があった。駆けつけたけど間にあわず、浅い出だった一朝が二度上がりで切り抜けた。遅れて喜多八が到着し、来た以上は出演させねばならない。そこで百栄の時間が半分に削られてしまったという。
馬石は国立でホームランが仲入りを挟んで二度上がりしたというエピソードを披露。連続ホームラン。
寄席というのは毎日開いているのでこういう失敗は多い。私も末広亭で二度上がりを見たことがあるし、池袋では途中にいきなり前座が上がって小咄を始めたのを経験している。
こういう失敗談も含めて寄席であり魅力の一つでもある。

菊志ん『がまの油』
蝦蟇の油売りの口上を淀みなく述べていたが、あそこは演者が緊張するらしい。噛んだりつっかえたりしたらオジャンだけらね。口上の直後に少し間を空けたが客席からの拍手が遅れていた。お客はこの噺に不慣れだったようだ。
油売りが泥酔して半分居眠りしながら口上を述べる仕草が良く出来ていた。

百栄『引越しの夢』
昔の商店の奉公人というのは、番頭になり暖簾分けで一本立ちするまでは店で寝起きしていたようだ。吉原へ通う金も時間もないので、捌け口はいきおい女性従業員に向けられる。このネタのテーマはズバリ「夜這い」、セクハラだなんだという喧しい事が無かった時代の噺だ。
このネタは大きく分けて二つのタイプがある。一つは上方から移した形で9代目文治が得意にしていた(タイトルは『口入れ屋』)。もう一つは東京のオリジナルで、こちらは6代目圓生が代表的。違いは前者では番頭が利益誘導をしながら女中を口説く場面があるのに対し、後者は女中の方が一枚上手で番頭らを手玉に取るというもの。
百栄は前者の方で、番頭が新入りの女中を口説くシーンと、奉公人らがお互いの顔を窺いながら夜這いのタイミングを計るシーンが見せ場。百栄のゆったりした語り口がこのネタには合っていた。
ただ三番番頭が台所の井戸の淵から天窓の紐にぶら下がって二階に着地しようとして井戸に落ちそうになるシーンは蛇足だった。これを加えてしまうと最後の「引越しの夢を見てました」というサゲが利かなくなる。

馬石『中村仲蔵』
先ず当時の役者の階級制や世襲制について解説があったのは親切だったが、大部屋、相中、名題の3段階という説明は不正確ではなかろうか。実際には下立役(稲荷町)、中通り、相中、相中上分、名題下、名題と、かなり細かく分かれていた筈だが。
家柄に生まれないと名跡が継げず、どんなに努力しても相中どまりだったと言われている。その中で4代目團十郎に見込まれ名題にまで出世した仲蔵は例外的な存在だったんだろう。
しかし仮名手本忠臣蔵でふられた役は斧定九郎一役、本来は名題が演じるような役じゃない。これで腐らず、むしろ座長が自分に役の工夫を期待しているんだとポジティブに捉えて役作りに励む仲蔵を描いた作品だ。
元々の定九郎の姿は山賊そのものだったが、これを仲蔵は先ず全身を白塗りにして、黒羽二重の袷を取って一重にし、白献上の帯、大小は朱鞘、履物は福草履に変えて、出番直前には頭から水をかぶって花道から登場した。
見方によれば「ケレン」だが、定九郎といえば大名の家老の倅、むしろこうした粋な浪人姿の方が道理に合う。
仲蔵が実際に蕎麦屋で出会った浪人(元は旗本だったという設定)の姿にヒントを得て役作りするまでの経緯が丁寧に描かれていた。特に浪人の造形が良く出来ていた。
6代目圓生、8代目正蔵を始めとして幾多の名人上手に引き継がれてきたこの演目だが、若手ではこの馬石かと思わせる高座だった。

ハネたあと店で食事する人もいたが、アタシは愛妻が待つ家へ直行で戻る。

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コメント

「がまの油」ザ・落語とでも言うべき演目です。
圓生、彦六の十八番だったようですね。
私は某所で桂文生のを聴いてこの噺の面白さを感じました。

『蝦蟇の油』といえば何といっても3代目柳好です。高座に上がると「がま」「野ざらし」の二つの掛け声が一斉に上がったくらいですから。油売りの口上では3代目金馬が上手かった。一度本物に替わって実際に大道で演ったら気付かれなかったと言ってました。圓生のも味があって結構です。

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