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2014/04/06

「雲助蔵出し ぞろぞろ」(2014/4/5)

4月5日、浅草見番での「雲助蔵出し ぞろぞろ」へ。
少し早く家を出たので隅田公園の辺りと浅草寺境内の桜を観てまわった。漢詩の「花発多風雨」(花発らけば 風雨多し)にある通り、満開の直後に風雨が続き桜の花びらもかなり落ちてしまった。それでも花見客が多く、吾妻橋から仲見世一帯は人手が多く大そうな混雑ぶりだ。
周囲の会話を聞いているとその多くが中国語で、チャイナタウンに紛れ込んだような気分だ。いま日中関係は政治レベルでは宜しくないが、沢山の中国人が日本を訪れている証拠だろう。
人ごみをかき分けて会場についたら、開場5分過ぎだというのに前方の席がかなり埋まっていた。この会のお客も段々出足が早くなっているようだ。
この日は130席満席。

<  番組  >
前座・林家つる子『堀の内』
入船亭小辰『代脈』
五街道雲助『花見の仇討』*
~仲入り~
五街道雲助『反対俥』
続いて『干物箱』*
(*はネタ出し)

この会は前座や二ツ目についてはあまり浮気しない方針らしいが、今回は二ツ目が小辰。これを機に交代なのか、それとも臨時なのか。
小辰『代脈』、観るたびに芸が達者になっていく。但し、上手くなっているかどうかは疑問だ。素材はいいのでいずれ若手真打として頭角を現すことだろう。

雲助『花見の仇討』
マクラは新発売のCDや著書のPRに始まり、花見の話題から恒例の浅草周辺名所案内へ。このマクラの関係からだろう、プログラムの順序を入れ替え1席目に『花見の仇討』を持ってきた。
花見というタイトルの落語はいくつかあるが、近ごろは専らこのネタと『長屋の花見』が掛けられる。反対に『花見酒』や『花見小僧』が演じられる機会が少なくなった。落語の演目も流行り廃りがあるということ。
集団で花見をする機会が全くなくなったので最近の様子は分からないが、TVの取材などで見る限りではカラオケで歌うスタイルが多いようだ。
私の子どもの頃に親に連れられて行った花見では、『さくら音頭』(歌唱:徳山たまき、三島 一声、小唄勝太郎)がよく唄われていた。いま唄う人はいないでしょうね。
歌詞はこんな風だった。なにせうろ覚えなので間違っていたら御免なさい。
♪ハア咲いた咲いたよ アリャサ    
弥生の空にヤットサノサ アリャヤットサノサ   
さくらパット咲いた 咲いた咲いた咲いたパッと咲いた     
大和心の エー大和心の八重一重   
ソレシャンシャンシャンときてシャンと踊れ サテシャンと踊れ♪ 
歌詞がけっこう国威発揚的なので、安倍政権の下で復活するかも。
こういう歌や安来節を合唱しながら踊る風景というのも、今は見られないようだ。
さらにひと昔前だと、花見の趣向で仮装や茶番が行われていたらしい。『花見の仇討』はその時代の噺だ。
場所は上野。もっとも江戸時代から上野の花見では茶番が禁じられていたそうで、演者によっては飛鳥山で演る人がいるが、落語だからそう小難しい時代考証は要らないだろう。
雲助の演出は師匠のものをほぼ踏襲した形となっていたが、巡礼役二人の渡り科白に工夫が加わり、人物の演じ分けや歯切れの良さと共に上出来の一席。

雲助『反対俥』
通常、落語の世界では同じ会の中では「付く」噺は避けるのだが、今回のように敢えて「付く」ネタを選んで演じる場合がある。こういうのも趣向の内。
代表的な前座噺で雲助のようなベテラン真打が演じるというのは珍しい。マクラやクスグリで昔懐かしいネタを演じて「けっこう受けるな」と本人が語っていたが、話芸さえしっかりしていれば時代は関係ないんだろう。「66歳にゃムリだ」と言ってが、それほどの体力を使った熱演で久々にこの演目の面白さを再認識した。

雲助『干物箱』
演出上の特長は、若旦那が貸本屋の善公に会う前に幇間と出会い、そこで物真似が上手いということで善公を紹介される形にしていた。若旦那の代りに二階に上がった善公が、若旦那を乗せた人力俥の車夫の真似をする所(これが前のネタと「付く」)も。反対に花魁から若旦那に来た手紙を善公が盗み読み、自分の悪口が書かれていたので激高する所は省いていた。
このネタの勘所は三つある。
一つは、何かというと勘当をちらつかせる親父だが、実は息子が可愛くて仕方がない。そういう感情が聴き手に伝わること。
二つ目は、善公が空想で演じる若旦那と花魁との掛け合いに色街の風情を出すこと。
三つ目は、善公の職業は貸本屋だが、実は半端な幇間でもある。だから同じ貸本屋でも『品川心中』の金公とは人物像が異なる。
この勘所を全て抑えた雲助の高座はさすがというしかない。

入場者数から見てこの会の会場も少し狭くなりつつあるのかも知れないが、この場所しかないと思えるところが悩ましい。

ここでタイガースネタ。
♪見よ投壊の虎負けて・・・
しっかりしてくれよ。

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コメント

花の大川をバックに検番でやる落語会、ネタもよし、最高の時を楽しみました。
もちろん会の後の酒も。

佐平次様
会場の玄関を出る辺りで背後に「これから居残り会」という声が聞こえたんですが、あれがそうでしたか。お客さんたちも皆楽しそうでしたね。

『反対俥』
この噺は上野駅じゃなくて、とんでもないところへ行ってしまった、というところに演者独自のものが入るようです。
「なになにが見えるよ」「あ、ここなんとかだ!」
円蔵、キウイを聴いたことがありますが、たしかに雲助では想像がつきにくい。そこを何とかしてしまうのは芸の力なんでしょう。

福様
雲助は確か「川口」だったと思います。
それより人力俥の匂いが酷いと客が文句を言うと、「朝は魚を俥に載せて運んでます」。
渡された毛布も生臭いねと訊くと、「陸軍省払い下げで、陸軍では軍馬の世話役が使っていて馬の睾丸を包んでいた」と答えるクスグリが逸品でした。
『反対俥』は他にも先代の文治の十八番でしたし、現役では喬太郎が持ちネタにしています。

やはり、いらっしゃいましたか!
良かったですね、三席とも。
あの会場ならではの一体感がありますよね。
雲助が楽しんでいるのが、客席にも伝わる、そんな暖かい会だと思います。

小言幸兵衛様
まるで雲助の自宅の居間で聴くような気分になるというのが、この会の最大の魅力です。
帰りがけのお客の幸せそうな表情が印象的でした。

先代の文治、円蔵、喬太郎。いわゆる爆笑派です。
「反対俥」「弥次郎」「寄合酒」
かような滑稽話を闊達に語る若手にどんどん出てきてほしいですね。
今の若手はよんどころない事情があるんでしょうけど、芸風がカタすぎるかもしれません。

福様
大人しく感じるのは、大学の落研から入門する人が多いという事情もあるのかも知れません。
むしろ芸協の若手に弾けている人が見受けられるような気がします。

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