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2014/04/10

「五街道雲助一門会」(2014/4/9)

「五街道雲助一門会」
日時:2014年4月9日19時
会場:横浜にぎわい座芸能ホール
<  番組  >
前座・柳家さん坊『牛ほめ』
隅田川馬石『王子の狐』
五街道雲助『禁酒番屋』
~仲入り~
桃月庵白酒『義眼』
蜃気楼龍玉『大坂屋花鳥』

1階はほぼ満席だったようだ。
開演の冒頭に『御挨拶』とあり何ごとかと思ったら五街道雲助の「芸術選奨・文部科学大臣賞」受賞に対するにぎわい座からの祝辞だった。雲助は頂いた賞金は元はといえば皆さんの税金、つまり皆さんから頂いたということでこれから益々努力したいといった内容の挨拶があった。
雲助は本人の技量はもちろんのこと、3人の有能な弟子を育てたという指導者としての実績も残している。
その一門が顔を揃えたが、全員の亭号が異なるという珍しい一門でもある。
白酒によれば、白酒は師匠の滑稽噺に憧れ馬石と龍玉は師匠の人情噺に憧れて入門したので、弟子の芸風も違うとのこと。だから自分は人情噺は苦手だと以前に語っていた。

前座のさん坊、自分では気の利いたことを言ってるつもりかも知れないが、あのマクラだか前置きだかが会場の空気を冷やしていることに気付いた方がいい。

馬石『王子の狐』
このネタは八代目春風亭柳枝の十八番で、今もこの形を基本に演じられているが、いまだに柳枝を超える高座に出会ったことがない。あの志ん朝でさえこの噺は不向きだ。
男が狐を料理屋の2階へ連れこみ、おだて上げながら酒を勧める場面で柳枝のセリフがとてもリズミカルだ。飲めないと断る狐も思わずつられて盃を重ねてしまう、そこに説得力があるのだ(女性を口説く時の参考になるかも)。
馬石の高座では男が化かされまいというマジナイからしきりに眉に唾を付ける所作を加えているのと、卵焼きを土産に店を出るとそのまま真っ直ぐに自宅に戻ってしまうという演出。ここは親類の家に土産を持参し狐の祟りの恐さを脅かされ、男が反省するという運びの方が自然ではなかろうか。
全体に今ひとつ乗り切れないまま高座を終わってしまったような印象を受けた。

雲助『禁酒番屋』
一門会といえば師匠がトリを取るのが普通だが、この一門には当てはまらない。むしろ弟子を立てるという意味もあるんだろうか(白酒に言わせると、ただ早く帰りたいからだ)、師匠が早く上がることが多い。この日は仲入り。
酒飲みの上戸をマクラにネタへ。5代目小さんの形をそのまま踏襲した高座だった。
番所の侍と酒屋の奉公人との駆け引きの妙や、侍が次第に酔って行くさま、最後に小便を口にするシーンなど肝心な処はしっかり押えて客席を沸かせていた。

白酒『義眼』
この日は脇役に徹するという立場から、検診でMRI検査を受けたら「太り過ぎ」と診断され、そんなこと始めから分かってるといった医者ネタをマクラに軽い噺を。
ある男が誤って義眼を飲み込み医者へ行く。医師が肛門から内部を覗いたら向こうからも覗いていたというバレ噺。客席は大喜びだ。

龍玉『大坂屋花鳥』
ストーリーは。
江戸時代、梅津長門という無役の旗本がいた。長屋も金も持ち年が若く吉原に通ううちに、大坂屋の花鳥という遊女と相思相愛の仲になる。そうすると悪い連中とも付きあうようになりに自分の屋敷を賭場に貸したり、吉原通いが過ぎて金もなくなり長屋も手放し、暮れには借金で身動きが出来なくなる。伯父の所に無心に行くが、それなら腹を切れと叱られ逃げてくる。
足は吉原に向かってしまうが、前に商家の旦那風の男と幇間が歩いていた。二人の会話を盗み聞きするとその旦那の懐には200両あることが分かる。大音寺前が人通りもないのを幸いに梅津長門はその町人を一刀のもとに斬り殺して200両を奪い大坂屋花鳥の元へ向かう。
その現場を手先の三蔵がたまたま通りかかり、梅津の後ろ姿を見て犯人と目星をつける。尾行して梅津が大坂屋に入ったのを確かめ、親分・金蔵に知らせる。
金蔵は捕り方を集めて大坂屋を囲み、茶屋の主人を呼びだして、梅津が刀を持っていない事、借金は全て払った事などを聞き出し、大坂屋に入った。花鳥を呼び出して梅津に酒を沢山飲ませて酔わせるよう指示し、大引けを合図に子分が部屋に踏み込み御用にする手はずを説明する。
花鳥は承知したかに見せかけておいて、納戸の中の道中差しを持ち出し、油の入った器を持って部屋に戻り、金蔵から聞いた話を梅津に伝える。
やがて三蔵が部屋に踏み込むと梅津は居合いの形で切り捨ててしまう。花鳥は油を障子に撒いて行灯の火を移すと火は天井をなめ屋根裏を伝わって、火は吉原中に燃え広がる。この騒動の中で梅津は吉原を脱出し、その足で根岸まで脱兎のごとく逃げてきて、振り返ると吉原は炎上していた。「花鳥すまない」といって上野の闇に消えていく。
先日、国立演芸場の花形演芸会で銀賞受賞が決まったばかりということでトリとなったようだが、龍玉は語りがしっかりしており、所作の一つ一つが丁寧で動きも綺麗だ。
物語としてはなぜ花鳥が自分の命と引き換えにしてまで梅津を助けたのか、その辺りの理由が分からないなど不自然な所もあるのだが、龍玉の熱演に引き込まれ聴き入ってしまった。

硬軟とりまぜた一門会、次回は7月でトリは白酒とのこと。

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コメント

豪華なメンバー!といえる一門にした雲助、今見逃せないです。
ゆうべは今松でしたが会の後の飲み会でも「雲助追っかけ」宣言も出た始末。

佐平次様
落語家には50歳過ぎて伸びる人と、50歳までで頭打ちになる二つのタイプがあります。古くは志ん生や圓生、今は雲助が前者のタイプと言えるでしょう。
いま最も勢いのある一門になりました。

この一門会、以前に行ったことがあるのですが、独特の雰囲気がありますよね。

師匠にはもう一人位弟子をとって欲しいような気がしますが、それも縁なのでしょうね。
浅草見番からの雲助シリーズですね。
それだけ聴く価値のある、まさに旬の噺家さんだと思います。

小言幸兵衛様
一門全員が顔を揃える、出番がその時々で変わるといった特徴のある一門会です。
弟子については少数精鋭主義なんでしょうか、じっくり育てたという事だと思います。

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