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2014/04/22

落語協会新会長について

4月17日付共同通信が次の様に報じた。
【落語協会の柳家小三治会長(74)が6月の任期満了で退任することが17日分かった。関係者によると、同日の理事会で了承され、新会長には柳亭市馬副会長(52)が内定した。6月の総会で正式決定する。】
小三冶会長は2期4年務めたが今年で退任し、新会長として市馬が就任することが内定したらしい。このニュースは共同通信のスクープ(というほど大げさじゃないか)のようで、他の各紙も共同の記事を引用している。
今のところ協会のHPなどでは一切触れれていないので確定情報かどうかは不明だが、一応、事実であるのを前提としていくつか私見を述べてみたい。

4年前に小三冶が会長に就任した際に、少なからぬ落語ファンが「改革」を期待した。しかし私の知る範囲でいえば、小三冶が協会の「何をどう改革しようとしたか」についてメッセージを出したという記憶がない。
では実績ではどうかだが、改革には内部的なものと対外的なものがある。そのうち内部改革については私たちからは窺い知れぬことなのでコメントのしようがない。
対外的、つまり我々一般観客に影響する改革では、2012年の春・秋の新真打抜擢があった。真打の抜擢については過去に何度もあり珍しい事ではないのだが、2回続けてということでこれは真打昇進制度を変えたのかという声が上がった。しかし2013、2014年には元の年功序列に戻してしまったので、従来通りの「年功序列+時々抜擢」という慣例に倣っていくのかと推察される。
それ以外に私たち客から見て何か改革されたかというと、どうも思いつかない。
むしろ落語芸術協会の方が危機感からか、ここ数年変わりつつように思えるのだが。

この点については小三冶の任期が4年で短か過ぎたという事もあろうが、それ以上に落語協会という団体の特質やそれによる制約条件についても考慮せねばなるまい。
職能団体の落語協会は個人加盟のようだが、弟子が師匠から破門されると他の師匠の所へ移籍しない限り、協会員としての資格も失ってしまうようだ。つまり師匠方による連合体組織というのが実態なのだろう。この点は相撲協会に似ている。
それが端的に分かるのは協会理事の顔ぶれだ。当期役員のうち、理事以上のメンバーは次の通り。
会長:柳家小三治
副会長:柳亭市馬
常任理事:柳家さん喬・林家正蔵・三遊亭吉窓
理事:桂文楽・柳家小さん・三遊亭圓丈・古今亭志ん輔・入船亭扇遊・三遊亭歌る多・五明楼玉の輔・鏡味仙三郎
つまり、柳家(柳亭)・林家(春風亭)・三遊亭・古今亭(金原亭)・桂の各流派の代表者が会長、副会長、常任理事、理事の座についている(理事の中の入船亭は柳家、五明楼は春風亭一門)。
現状では5代目小さん門下の噺家が数の上でも質の上でも(人気面を含む)他の流派に勝っているところから、会長・副会長ポストを押さえているのだと思う。
こうした組織の性格上、よほどの長期政権にでもならなければ会長の一存だけで決めることは難しい。
例えば真打昇進を例にとると、香盤で二ツ目の上位にいる人が何年経っても真打になれなければ、師匠が黙っておるまい。プロだから生活がかかっている。本人たちだって不満がたまってくる。落語家はたかだか数百人という狭い世界だ。軋轢を生むよりはお互いナアナアで行こうと、こういう結論になって行くわけだ。
もう一つの制約条件として、寄席の席亭の意向というのがある。寄席は興行だから席亭の意見は無視できない。過去には席亭の推薦で真打に抜擢された噺家もいるくらいだ。
こうした利害関係を総合的に調整していくと、会長が自分の意志だけで決められる事というのは思ったより狭いのだろう。

新会長と報じられている柳亭市馬だが、噺家らのマクラなどで聴く限りでは上からも下からの信頼が厚く、とても評判が良いようだ。
ただ歴代の会長である文楽、志ん生、圓生、小さん、小三冶らと比べると、芸の高さが協会最高峰というには程遠い。これからは落語協会の会長として、芸の高さの点でもイニシアティヴが取れる事が肝要だ。
年齢も若いのでやはり先輩に対して気を遣う面もあるだろう。
どちらかといえば調整型のリーダーになるような気がする。
新会長がリーダーシップを発揮して改革が進むよう期待する声があるようだが、では観客として落語協会に対し具体的に何を望んでいるのだろうか。そこが明確でない。
落語ファンが強く求めなければ協会側は動くまい。

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コメント

先日、鈴本に行きましたが、然るべき顔づけにもかかわらず、客の入りがいまひとつ。
その改善こそ喫緊の課題でしょう。
やはり、一時期の談志や志ん朝のようにモダンでクラシックなスターの登場が待たれます。

投稿: 福 | 2014/04/23 06:57

福様
落語ブームが終わりこれからが正念場です。鈴本は確かに入りが落ちている印象を受けますが、寄席側の問題もあるような気がします。例えばGW特別興行で昼席のトリを正蔵にしていますが、ズレてますね。しかも入場料を3500円にして。前売りが捌けていないのは当然でしょう。これは協会側の責任ではなさそうです。

投稿: ほめ・く | 2014/04/23 09:34

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