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2014/05/11

前進座「お染の七役」(2014/5/10夜)

「お染の七役 於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」
日時:2014年5月10日15時30分(初日夜の部)
会場:国立劇場大劇場
劇団:前進座
作:鶴屋南北
改訂・演出:渥美清太郎
<   配役   >
河原崎國太郎:油屋娘・お染/油屋丁稚・久松/久松の許嫁・お光/お染の母・貞昌/奥女中・竹川/土手のお六/芸者・小糸(以上七役) 
中村梅之助:仲人佐四郎
嵐圭史:鬼門の喜兵衛
武井茂:山家屋清兵衛
藤川矢之輔:百姓久作
山崎辰三郎:油屋太郎七/女猿廻しお鶴
益城宏:髪結い亀吉/虚無僧
姉川新之輔:手代九助
松浦豊和:鈴木弥忠太
柳生啓介:参詣人
松涛喜八郎:番頭善六
嵐芳三郎:若旦那多三郎/船頭長吉
中嶋宏太郎:中間権平
寺田昌樹:丁稚勘吉/参詣人
高橋佑一郎:箱廻し源六
早瀬栄之丞:下女おその
渡会元之:駕籠舁き庄六/船頭
石田聡:参詣人/船頭
生島喜五郎:仲居お巻
上滝啓太郎:茶屋女/船頭
藤井偉策:駕籠舁き又八/船頭
新村宗二郎:非人の市/船頭
忠村臣弥:腰元お勝
本村祐樹:丁稚久太/船頭
ほか

1710年に大阪で起きた油屋の娘と丁稚との心中事件、「お染・久松」を題材として芝居はいくつかあり、特に有名なのは近松半二作「新版歌祭文」(通称「野崎村」)だが、この芝居は4世鶴屋南北作で文化文政期に5代目岩井半四郎主役で大当たりを取った「於染久松色読販」だ。
近代に入って上演が途絶えていたものを、昭和9年に渥美清太郎氏の改訂台本・演出により前進座が復活上演した。演じたのは5代目河原崎国太郎で、その国太郎の指導で大歌舞伎の坂東玉三郎や中村福助らによって上演されてきた。1998年、「お染の七役」が当代國太郎の襲名披露演目となり、玉三郎や福助から指導を受けた。
この芝居はそういう意味で前進座として、また河原崎國太郎としてのお家芸ともいうべきものだ。

ストーリーは。
浅草瓦町にある質店油屋は主人亡き後、後家の貞昌が切り盛りをしている。息子多三郎は芸者の小糸に入れ揚げている始末。 貞昌は娘お染と山家屋清兵衛との縁談を勧めるが、お染は店の丁稚久松と恋仲になる。一方店の番頭・善六は多三郎を追い出し、お染を妻にして店を乗っ取ろうと企んでいる。
久松は実は侍の子で、主家の宝刀・午王義光を密かに探しており、その姉竹川も刀を取り戻すための金の工面をかつての召使お六に依頼する。だが、お六の亭主喜兵衛こそが宝刀を盗んだ張本人であっった。
柳島の妙見様の祭礼の日、久松の後見人である百姓久作と油屋番頭らの諍いがあり、殴られて久作は負傷する。これをネタに喜兵衛とお六が油屋を強請るが、山家屋清兵衛の機転で失敗に終わる。
母に諭されても久松との恋を諦めることのできないお染は既に久松の子を身ごもっていた。不義として土蔵に押し込められる久松との間で二人は心中を決意する。
喜兵衛は油屋の土蔵に押し入り宝刀・午王義光を盗み出すが、土蔵から出ようとした久松と鉢合わせ。二人が争うが、最後は久松が喜兵衛を斬り、宝刀を手中にする。
大川端で再開したお染と久松がいよいよ心中しようとするが、その時に・・・。
実際の事件とは異なり、最後は二人が結ばれる大団円となる。

この芝居の最大の見所は、國太郎による7役の早替わりだ。それも一つの場で何役も瞬間的に早変わりをして、まるでイルージョン・マジックを見ているようだ。もちろん衣装だけではなく人物の性別や性格までまるで異なるのだから、この早替わりは驚異的と言っても良い。
特に大切でのお染と久松が手に手を取ってのシーンでの相互の入れ替わりは、目をこらしていても分からぬ。
これだけでも一見の価値がある。
この芝居の見せ場は早替わりだけではない。喜兵衛とお六の強請(ゆすり)の場などでは世話物としての魅力を見せるし、大切の場での狂女・お光に扮した國太郎の踊りや、猿回し役の辰三郎と船頭長吉に扮した芳三郎との踊りといった楽しい趣向も見せてくれる。
派手な立ち回りもあれば、番頭の善六と丁稚久太の掛け合いでは落語のようなコミカルなシーンも出てくる。
エンターテイメントとしての芝居が満喫できる仕掛けとなっている。

出演者では何といっても7役をこなす國太郎の演技が圧巻。特に土手のお六の演技が素晴らしい。こういう役を演らせたら今の歌舞伎界でもトップクラスだろう。
悪役を演じた圭史には圧倒的な存在感があり、強請を見破る一方お染のために身を引く清兵衛を演じた武井茂は肚を見せる。
善六役の喜八郎と久太役の本村祐樹のコミカルな演技が度々場内に笑いを起こしていた。とりわけ本村祐樹の軽妙な動きが目立った。
他の出演者も前進座らしい堅実な演技を見せていた。

公演は10日が初日で5月21日まで。

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