« 前進座「お染の七役」(2014/5/10夜) | トップページ | 鈴本演芸場5月中席・昼(2014/5/16) »

2014/05/15

「小三治・小満ん・小里ん 三人会」(2014/5/14)

五代目柳家小さん十三回忌を偲ぶ公演”三人寄れば一門の智恵”「小三治・小満ん・小里ん 三人会」
日時:2014年5月14日(水)18:45
会場:イイノホール
<  番組  >
前座・柳家さん坊『つる』
柳家小里ん『不動坊』
柳家小満ん『猫の災難』
~仲入り~
柳家小三治『出来心』

今年は5代目小さんの13回忌ということで追善興行が行われているが、この会もその一つ。小さんの3人の弟子による落語会だ。
若い方にはお馴染みでなく、「花緑のお爺ちゃんね」なんて言われているかも知れないので略歴を紹介する。
<5代目小さんの略歴>
1915年1月2日 長野県長野市に生まれ、本名は小林盛夫
1933年 4代目柳家小さんに入門、前座名は栗之助
1936年 徴兵
1939年 除隊、二つ目に昇進し柳家小きんに改名
1943年 再徴兵。
1947年 復員。
1948年 真打に昇進し、9代目柳家小三治を襲名
1950年 5代目柳家小さんを襲名。
1972年 落語協会7代目会長に就任(1996年まで在任)
1995年 落語家初の重要無形文化財保持者(人間国宝)認定
2002年5月16日 心不全のため死去、享年87歳
文楽、志ん生、圓生亡き後の東京落語界を背負ってきた大看板だ。持ちネタが多く、特に滑稽噺の名手だった。大笑いさせるのではなく腹の底から可笑しさがこみ上げてくるような高座だった。
公演のチラシに小里んが書いていたが。まだ結婚前の女将さんに宛てた手紙に「昨夜のあなたは少し飲み過ぎです。女のトラは良くありませんよ」とか「私とあなたとは、ただ客と芸人という間でいたいと思います」なんて書かれていたとか。師匠も純情だったんだね。もっとも好きな女性に手紙を書く時は誰も同じようなものか。

5代目柳家小さんの弟子を以下に記す。
<弟子>(*印:他の門下から移籍)
4代目柳家小せん
3代目柳家さん助
5代目柳家つばめ
立川談志
川柳川柳*
柳家小三治
鈴々舎馬風
入船亭扇橋*
6代目柳亭燕路
柳家小のぶ
柳家さん吉
柳家つば女
東家夢助
柳家小はん*
柳家小満ん*
6代目柳家小さん
柳亭金車
柳家菊語楼
柳亭風枝*
柳家小團治
柳亭小燕枝
柳家さん喬
柳家さん八
柳家小袁治
柳家さん枝*
柳家権太楼*
柳家小里ん
4代目桂三木助
柳家三寿
柳家小ゑん
夢月亭清麿*
柳亭市馬
柳家花緑
柳家小三太
柳家さん福
弟子の数の多さに驚く。こうして見ると高座で一度も観たことがない人が結構いる。
現在の人気落語家の大半が小さんの弟子や孫弟子であることが分かる。

前座のさん坊『つる』、段々良くなる法華の太鼓。

小里ん『不動坊』
3代目小さんが東京へ移した噺で以来小さん代々のお家芸となっている。東京の落語家の中では上方の形をそのまま東京に移した形で演じる人や、9代目文治のように後半の幽霊話をカットして語る形もあるが、小里んは当然のことながら小さんの形。
講釈師の不動坊が死ぬ際の細かな経緯とか、葬儀にかかった費用がどうのといった事はすっ飛ばし、不動坊が残した借金を利吉が肩代わりし、お滝を嫁にすると筋になっている。
湯の中での利吉の妄想シーンもアッサリと、徳さんがその場で利吉に文句をいう場面はカット。
全体として上方に比べスッキリした筋立てにしておりスピーディな展開だ。
幽霊を出す場面はほぼ上方の形通りで、10円貰った幽霊が利吉夫婦に祝辞を述べる。呆れた屋根の上の3人が屋根の上から揺さぶったので、幽霊は手足をバタバタさせ、「おい、十円もらったのに、まだ浮かばれねえのか?」「いえ、宙にぶら下がってます」でサゲ。
師匠の形をしっかり受け継いだ小里んの楷書の高座、結構でした。

小満ん『猫の災難』
このネタは「試し酒」「禁酒番屋」と並び5代目の代表作といっても良いだろう。鯛を本物と騙した挙げ句、兄いが買ってきた酒を全部呑んでしまい、それも全て隣の猫の仕業にするという熊五郎。演じ手によってはこ狡い後口の悪い男になってしまうが、小さんが演じるとこれが憎めない人物に映るのだ。この辺りが小さんの芸であり人物の反映でもあった。
小満んの高座は小さんの形をそのまま受け継ぎ、愛おしむように酒を呑み、次第に酔いが回ってきて、兄いに気が引けるが、それでも酒への未練が立ちきれぬ酒飲みの業を鮮やかに描いた。酔って都々逸など唄いながら寝入ってしまう場面や、兄いに起こされて急に立ち回りの形を始めるが眠気が勝ってしまう場面など、小満んらしい工夫もなされていた。
何よりこれほど気分良さそうに演じた小満んの高座は初めてだ。ベストの出来といって良い。

小三治『出来心』
マクラで小さんの思い出話をしている内に自分の思い出になってゆく。若い頃、落語では目が出そうに無いのでプロボウラーになろうとボーリング場の通ったエピソードを紹介。この人は趣味が広い。着物姿で襷掛け尻端折りという恰好でゲームをしていたとか。「小さんは漫才の桂子好江の好江を可愛がってましたね。桂子にはそうでも無かった」で大笑い。
このネタは小さんを受け継ぐというよりは小三冶のが絶品。細かな言い忘れや言い違いはあったが、間抜けな泥棒や何を訊かれても「裏は花色木綿」をくり返す長屋の男の人物描写は他の追随を許さない。
これに匹敵する高座といえば、8代目春風亭柳枝の『花色木綿』しかないだろう。

三人三様で小さんのお家芸を披露した三席、全てが満足。

|

« 前進座「お染の七役」(2014/5/10夜) | トップページ | 鈴本演芸場5月中席・昼(2014/5/16) »

寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

たっぷり、駘蕩、好い落語会でした。
当然帰途は急ぎ足でいつもの店に^^。
ひとり酒を楽しめました。

投稿: 佐平次 | 2014/05/15 11:22

佐平次様
期待通りと言おうか、期待以上と言おうか。
特に小満んの高座は絶品でした。熊に粋と色気を感じました。
一人酒盛りで、隣に猫は出ませんでしたか? 白粉をつけた猫とか。

投稿: ほめ・く | 2014/05/15 12:08

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/82117/59645995

この記事へのトラックバック一覧です: 「小三治・小満ん・小里ん 三人会」(2014/5/14):

« 前進座「お染の七役」(2014/5/10夜) | トップページ | 鈴本演芸場5月中席・昼(2014/5/16) »