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2014/05/17

鈴本演芸場5月中席・昼(2014/5/16)

一昨日、安倍首相は記者会見で従来からの憲法解釈を見直し、集団的自衛権容認に一歩踏み出すことを明らかにした。安倍首相は「国民を戦争に巻き込むことはない」としていたが、そうだろうか。「集団的自衛権行使」に安倍の持論である「改憲による自衛隊の国軍化」「積極的平和主義」「武器輸出三原則の見直し」とを組み合わせれば、日本をどの方向へ向けようとしているのかは明白であるように思う。
時の政権の思惑で憲法の解釈が変えられるというのも怖い。戦前のドイツがワイマール憲法を保持しながらナチスの独裁国家になっていった例を思い起こしたくなる。
こんな時に寄席なんぞに行ってて良いのかと言われそうだが、行っちまったんだからしょうがないさ。
金曜の昼の部にも拘らず満席に近かったのは、顔づけが良かったせいか。
仲入りが一之輔、トリが喬太郎とあって前方の列に女性客が目立つ。

「鈴本演芸場5月中席6日目・昼の部」
前座・柳家緑太『やかん』
<  番組  >
柳家さん弥『反対俥』
林家二楽『紙切り』
五明楼玉の輔『宮戸川』
柳家喜多八『短命』
のだゆき『音楽』
三遊亭歌奴『初天神』
五街道雲助『堀の内』
江戸家小猫『動物ものまね』
春風亭一之輔『あくび指南』
~仲入り~
ニックス『漫才』
桂藤兵衛『出来心(花色木綿)』
柳亭左龍『お菊の皿』
アサダ二世『奇術』
柳家喬太郎『錦木検校』

緑太『やかん』、前進。
さん弥『反対俥』、停滞。
二楽『紙切り』、リクエストで切った「ウルトラマンと喬太郎」で喬太郎の姿が似ていたのには感心した。
玉の輔『宮戸川』、軽いネタを演らせるとこの人は上手い。ただ、こういう芸風で終わってしまうのかな。
喜多八『短命』、寄席にかけるネタなんて三つ四つあればいいんです、と本人が言ってたが、このネタのその一つか。場内は大受けだったが。
のだゆき『音楽』、この人の高座を見て、かつて寄席で大正琴の曲弾きで人気のあった吉岡錦正を思い出した。あの人は背中の後ろに楽器を置いて演奏していた。小学校の教材に使われる楽器演奏で、どこまで寄席で通じるだろうか、楽しみではある。
歌奴『初天神』、寄席にはこういう明るい芸人が似合う。金坊が可愛らしかった。
雲助『堀の内』、雲助のこのネタは初。テンポ良くまとめたがこの日の客層から反応は今ひとつ。
小猫『動物ものまね』、どこか知的な匂いのする芸風、よく研究している。語りが良いのは祖父譲りか。

一之輔『あくび指南』、お目当ての客は出て来ただけで大喜び。毎度マクラで、寄席はノンビリと聴いてと強調するのが少々耳障り。ノンビリ聴こうが真剣に聴こうが、聴こうが聴くまいが居眠りしようが、他の人の迷惑にならなければ客の自由だと思うのだが。
通常は片方の男が欠伸を習いに行くのでと友達を誘って出かけるのだが、近ごろは新しく出来た稽古所の前を乙な年増が掃除しているのを見かけ、その年増目当てで稽古に出かけるという形にしている例があるが、一之輔も後者。処が出てきたのは男の師匠、目当ての女がその女房だと分かり、男はすっかり落胆し不貞腐れてしまう。いざ師匠が欠伸の形を示すと途端に男はその気になり稽古を始めるが脱線ばかり。この辺りのヤリトリは一之輔の独壇場。本来は夏の昼下がりの気怠い中、ボンヤリとした風情の噺だが、これを爆笑編に変えてしまった。とにかく大変な才能の持ち主だ。
一之輔の特長はオリジナルを少しずつ崩しながら再構築するという点にあり、これこそが魅力である。この先どこまで行くのやらと、そういう不安感をも含めて当分この人の人気は続いていくことだろう。

ニックス『漫才』、初見、ツライ。
藤兵衛『出来心(花色木綿)』、寄席には無くてはならぬ落語家の一人だ。短い時間でも本寸法の噺をかけ、何を演らしても上手い。この日のネタの短縮版ながら、何を訊かれても「裏は花色木綿」と答える男と大家の珍妙な掛け合いで聴かせてくれた。
左龍『お菊の皿』、この人が演じると幽霊のお菊の顔がホントに怖く見える。
アサダ二世『奇術』、今日はいつもよりチャンと演っていた。客席から感嘆の声が上がると高座で照れていた。

喬太郎『錦木検校』
元々は『三味線栗毛』というタイトルで、オリジナルでは角三郎が大名・酒井雅楽頭に出世し、約束通り錦木を検校に取り立てる。ある日雅楽頭は栗毛の良馬を手に入れ、錦木に三味線と名づけたと話す。錦木がそのいわれを聞いてみると、「雅楽頭(うた)が乗るから三味線だ」「それでは、家来が乗りましたら?」「バチが当たる」とサゲル。そういう目出度い話なのだ。現役では菊之丞が得意としている。
これを喬太郎は、雅楽頭とようやく面談がかなった錦木だが、病のためにその場で亡くなるという悲劇性を持たせたものに変えている。これによって単なる出世譚をよりドラマ性のあるものにした。語りに寸分の狂いもなく、途中で錦木が落語の小咄をしたり座頭市の真似をしたりというクスグリも入れて、陰気になりがちな物語を楽しく聴かせる工夫もしてある。
喬太郎のこのネタは何度目かになるが、この日が出来が最高だった。良い高座に巡り合えた。
前に「00年代を代表する落語家」として喬太郎の名を挙げたが、2000年に喬太郎が真打に昇進して以来、今のところこの人を超える噺家は出ていない。上手いかという指標なら他にいるかも知れないが、喬太郎の高座は聴く人の心を打つ(そうじゃない時もあるけど)、そこが違う。

この日は満員のお客さんも満足だっただろう。熱演の続いた鈴本5月中席6日目だった。

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コメント

こんな時に、私も今日は落語です。
落語があってよかった。

佐平次様
私もです。幸いここの所の寄席や落語会は当り続けています。今月20日にもう一度行く予定ですが、その後は事情で暫くお休みとなります。

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