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2014/05/20

「美味しんぼ」と「不都合な事実」

ここの所メディアを賑わしてきたマンガ「美味しんぼ」問題について、NHKWebニュースが簡潔にまとめているので、以下に引用する。
【引用開始】
東京電力福島第一原子力発電所の事故による健康影響の描写が議論を呼んだ、連載漫画「美味しんぼ」。出版している小学館は、19日発売号に専門家の意見や批判を掲載した特集記事を出しました。 相次いだ批判の一方で、「放射能への不安を口にすることがますますはばかられるようになる」と懸念する人たちもいます。
波紋をまとめました。
「美味しんぼ」は小学館の漫画雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」で昭和58年から連載されていて、原作は雁屋哲さん、作画は花咲アキラさんが担当しています。
芸術家で美食家でもある海原雄山と、その息子で新聞記者の山岡士郎の親子の確執を軸に「食」の問題を描く作品で、これまで110巻が刊行され、累計発行部数は1億2000万部に達します。

「美味しんぼ」は「食」に注目してさまざまな現場を取材し、環境問題や健康の問題にも踏み込んできましたが、福島第一原発の事故から2年近くたった去年1月からは、「福島の真実」編として原発事故の影響を取り上げてきました。
この「福島の真実」編では、当初は、原発の事故で放出された放射性物質による汚染で被害を受けた生産者や、安全な農作物を生産しているのに風評被害に苦しむ福島の農家を取材し、地元で農業の復興に取り組んでいる人たちも紹介してきました。

しかし、4月28日発売号で、主人公の新聞記者たちが福島第一原発を取材したあと鼻血が出たり、ひどい疲労感に襲われたりする場面などが描かれ、実名で登場した福島県双葉町の前町長が「福島では同じ症状の人が大勢いますよ」と語る描写があったことなどから、地元の双葉町がそういう事実はないとしたうえで「復興を進める福島県全体にとって許しがたい風評被害を生じさせているほか、福島県民への差別を助長させることになる」として抗議しました。
これをきっかけに、国や自治体からも発言が相次ぐようになりました。
原作者の雁屋さんは、こうした批判に対して5月4日、自身のブログで反論し、「私は、自分が福島を2年かけて取材をしてしっかりとすくい取った真実をありのままに書くことが、どうして批判されなければならないのか分からない。真実には目をつぶり、誰かさんたちに都合のいいうそを書けというのだろうか」とつづっていました。

さらに、5月12日発売号では、双葉町の前町長や実在する福島大学の准教授が「福島県内には住むな」とか「人が住めるようにすることはできない」などと話す場面があり、福島県も、「断固容認できない」とする見解を県のホームページで公表するなどしました。
19日に発売された「福島の真実」編の最終話では、原発事故後の福島県内を訪ね歩いてきた2人が、これからの日本や福島について語り合う場面が描かれています。
「福島の人たちに、危ないところから逃げる勇気を持ってほしいと言いたいのだ」「福島を出たいという人たちに対して全力を挙げて協力することだ」と、自主避難者への支援の大切さを訴えています。

19日発売号には「編集部の見解」も掲載されました。
この中では「残留放射性物質や低線量被ばくの影響について改めて問題提起したいという思いもありました」と説明。「批判を真摯(しんし)に受け止め表現のあり方について今一度見直して参ります」としています。

福島県の人たちからは、さまざまな意見が聞かれました。
中島村の64歳の女性は「放射線量が下がってきて食品もいろんな検査を通して落ち着いて生活できるようになってきたのに、3年目にして不安に追い打ちをかけられた気持ちです」と話していました。
本宮市に住む30歳の女性は、「全体的に原発事故の問題が風化してきているのでこのように発信することは大事だと思う。福島がこれから立ち上がっていこうとしているところをほかの人にも知ってほしいし、この問題を取り上げるのは勇気のいることではないか」と理解を示していました。
一方、漫画に対する批判に、戸惑う人たちもいます。
福島で暮らすうえで現状を知ることが大事だと、放射線量の測定を行っている母親たちのグループです。
自分たちが日々感じる不安もますます口にしづらくなるのではと懸念しています。
グループのメンバーは、「不安の声を上げると風評被害だと思われてしまうのは残念」とか「怖いのは風評ではなくて風化だと思う」と話していました。
【引用終り】
いかにもNHKらしく両論併記されていて、問題の経緯が良くまとめられている。

「美味しんぼ」の鼻血描写を巡り、双葉町は2014年5月7日「現在、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はありません」と小学館に抗議していた。
処が、これに反するような記事がJCASTニュースに掲載されている。
記事によれば、岡山大などの研究グループが町の依頼で健康調査したところ、福島県双葉町では鼻血などの症状の統計が有意に多かったという結果が出ていたことが分かった。
住民には原発事故による健康不安が募っていることから、放射線被ばくや避難生活によるものかを確かめるために疫学による調査を2012年11月に実施した。
比較するために、双葉町のほか、福島県境にあり放射線汚染地域でもある宮城県丸森町筆甫地区、さらに原発から離れた滋賀県長浜市木之本町でも調査した。その結果、双葉町と丸森町は、体がだるい、頭痛、めまい、目のかすみ、鼻血、吐き気、疲れやすいなどの症状で、木之本町よりも有意に多かった。
特に両町では鼻血が特に多く、オッズ比を取ると双葉町が3.8、丸森町が3.5もあった。双葉町ではほかに肥満うつ病など様々な症状がオッズ比3以上の高い値を示し、両町では消化器系の病気や神経精神的症状も多かった。
この結果をまとめた論文では、「これら症状や疾病の増加が、原子力発電所の事故による避難生活又は放射線被ばくによって起きたものだと思われる」としており、事故の影響であることを明確に認めている。
岡山大大学院の津田敏秀教授は、最終報告については、まだメドが立っていない状況だとしながら、「鼻血と被ばくは関係ないと政府が言っていることは、科学的な根拠がありません。チェルノブイリでも報告があるわけですから。美味しんぼの騒ぎは、重要な問題だとは思っていないですね」と言っている。

こうして見ると、「美味しんぼ」の書かれた内容があながち「根拠のない風評」と断定はできないようだ。
ここで思い起こすのは、2013年9月7日の2020年東京五輪招致の最終プレゼンテーションにおける安倍首相の演説だ。
彼は福島原発の事故についてこう宣言した。
Some may have concerns about Fukushima. 福島についてご心配の向きもあるでしょう。
Let me assure you,the situation is under control. 状況はコントロールされていることを私は保証します。
It has never done and will never do any damage to Tokyo. 東京にはいかなる悪影響を及ぼしたことがなく、今後も及ぼすことはありません。
もちろん、真っ赤なウソだ。
しかし、こうして全世界に宣言した以上、首相や政府にとってはこれが真実であり、また真実でなければ困るのだ。
これに反するような事実は隠蔽し、報道や表現には「風評被害」を引き起こすものとして片付ける。

安倍晋三首相は17日、福島市の福島県立医大を視察した後、東京電力福島第1原発事故の影響に関し「放射性物質に起因する直接的な健康被害の例は確認されていないということだ」と記者団に強調した。漫画「 美味しんぼ」で、原発事故による放射性物質と健康被害を関連付けるような描写があったことへの受け止めを問われ、こう答えた。
同時に「根拠のない風評には国として全力を挙げて対応する必要がある。 払拭するために正確な情報を分かりやすく提供する。今までの伝え方で良かったのか全省的に検証する」と述べた。
首相は、県民健康調査を行う福島県立医大を視察し、職員へのあいさつで「県民の健康状況は他県と違いがないと聞いた。そうした正しい情報を正確に伝えていきたい」と述べた。

なぜ「美味しんぼ」がメディアや「世論」から袋叩きにあったのか、これでお分かりだと思う。

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