2014年上半期佳作選
今年の上期は寄席や落語会におよそ30回行った勘定になるが、その中の佳作を以下に列挙する。これらは年末恒例の「My演芸大賞」の候補作となる。なお以前に受賞した作品は選から除外している。
こうしてリストアップしてみると雲助一門の全員が選ばれているのが特長。一門の充実ぶりを示すものだ。
選には洩れたが他に、一之輔『らくだの子ほめ』、喜多八『三十石』、白酒『喧嘩長屋』、一朝『一分茶番』、藤兵衛『出来心(花色木綿)』が印象に残った。
何人かの常連の名が見えないが、下期に期待しよう。
リストは演者、『根多』、公演月日、「会の名称」の順となっている。
桂米紫『堪忍袋』2/5「米紫・吉弥ふたり会」
古今亭志ん輔『居残り佐平次』2/22「三田落語会」
柳家喬太郎『真景累ヶ淵~宗悦殺し』3/1「喬太郎・一之輔二人会」
春風亭一之輔『ねずみ穴』3/2「三三・一之輔二人会」
五街道雲助『花見の仇討』4/5「雲助蔵出し ぞろぞろ」
五街道雲助『反対俥~干物箱』 同上
蜃気楼龍玉『大坂屋花鳥』4/9「五街道雲助一門会」
三遊亭萬橘『抜け雀』4/26「花形演芸会」
隅田川馬石『中村仲蔵』4/29「三人吉座」
柳家小満ん『猫の災難』5/14「小三治・小満ん・小里ん三人会」
柳家左龍『三人旅~おしくら』5/17「五代目小さん・孫弟子七人会」
柳家小里ん『髪結新三~富吉町新三宅まで』5/20「雲助五十三次」
三遊亭兼好『陸奥間違い』6/23「兼好・萬橘二人会」
桃月庵白酒『つるつる』6/28「三田落語会」
米紫『堪忍袋』、東京版を上方に置き換えたものだが、喧嘩する夫婦の言い分がそれぞれ正当と思わせる演出に説得力があった。
志ん輔『居残り佐平次』、今まで聴いた志ん輔の高座でベスト。
喬太郎『真景累ヶ淵~宗悦殺し』、高座にかかる機会が少ない「発端」の場を演じた。出来ればこの人には「通し」にチャレンジして欲しい。
一之輔『ねずみ穴』、滑稽噺の多い一之輔だが、長講の人情噺でもその実力を示した一席。
雲助『花見の仇討』、師匠の先代馬生の芸を引き継いだ見事な高座。
雲助『反対俥~干物箱』、通常は「付く」ネタを続けるのは避けるのだが、敢えて「俥夫」つながりの演目を連続公演し、それぞれの面白さを伝えた手腕に感心。
龍玉『大坂屋花鳥』、進境著しい若手の意欲が感じられ、会場全体が水を打ったようだった。
萬橘『抜け雀』、良い意味で予想外の出来だった。緻密さは欠けるものの志ん生的な面白さに溢れていた。
馬石『中村仲蔵』、特に定九郎のモデルとなる浪人の造形が優れていた。最近聴いたこのネタでは出色の出来。
小満ん『猫の災難』、会場全体を楽しさで包んだような高座、ご本人も鼻歌でも唄うような調子で演じた。
左龍『三人旅~おしくら』、「おしくら」の女中の造形が絶品、この人ならではと思わせた。
小里ん『髪結新三~富吉町新三宅まで』、雲助とのリレー口演だったが、このネタに関しては小里んに軍配をあげる。
兼好『陸奥間違い』、浪曲を落語に移したネタで、これを聴く限りでは兼好は人情噺でもいける気がした。
白酒『つるつる』、文楽や志ん生が亡くなって後継者がいなくなると心配していたが、白酒の高座で杞憂であることが分かった。
【付記】
過去の「My演芸大賞」受賞者は次の通り。
2006年 柳家喬太郎『按摩の炬燵』1/22「花形演芸会」
2007 該当なし
2008 立川志の輔『中村仲蔵』8/15「志の輔独演会」
2009 該当なし
2010 柳家三三『年枝の怪談』8/9「柳家さんと00さん」
2011 桃月庵白酒『今戸の狐』9/13「白酒ひとり」
2012 「雲助蔵出し」における五街道雲助の一連の高座
2013 柳家権太楼『百年目』5/2「鈴本演芸場」
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いくつかは記憶にあるけれど、、頼りないものです。
投稿: 佐平次 | 2014/07/04 11:22
佐平次様
無意味な事をしてるなと自分でも分かってるんですけど、これは遊びですから。
投稿: ほめ・く | 2014/07/04 16:18
やはり、雲助は重なってますね。
一門も充実しているのが、ほめ・くさんの選択でよく分かります。
さて、お互いに後半どんな顔ぶれや噺が並ぶのか楽しみですね。
投稿: 小言幸兵衛 | 2014/07/04 21:36
小言幸兵衛様
やや雲助一門に偏った感もありますが、これは好みの問題もあり致し方ない所だと思います。
三三や扇辰ら常連の名が無いのは寂しいですが、下期に期待しましょう。
投稿: ほめ・く | 2014/07/04 22:56