『抜目のない未亡人』(2014/7/1)
シス・カンパニー公演『抜目のない未亡人』
日時:2014年7月1日(火)13時30分
会場:新国立劇場 中劇場
< スタッフ >
原作=カルロ・ゴルドーニ
上演台本・演出=三谷幸喜
< キャスト >
大竹しのぶ=ロザーウラ(元女優、未亡人)
木村佳乃=エレオノーラ(ロザーウラの妹、女優)
小野武彦=ロンバールディ(ロザーウラ姉妹の父親、男優)
浅野和之=パンタローネ(ロザーウラの亡父の弟)
峯村リエ=マリオネット(ロザーウラのエージェント)
段田安則=ボスコ・ネーロ(イタリア人監督)
遠山俊也=フォレット(その秘書)
中川晃教=ルネビーフ(イギリス人監督)
春海四方=ビリーフ(その友人、プロデューサー)
岡本健一=ルブロー(フランス人監督)
高橋克実=ドン・アルバロ・デ・カスッチャ(スペイン人監督)
八嶋智人=アルレッキーノ(ヴェネチアのホテル従業員)
「専守防衛」から「他国の戦争に参加できる」国へ大転換することが決められた日に、こんな芝居なんて見てていいのという気もするが、行っちまったんだから仕方ない。
観客の男女比は1:9位で圧倒的に女性、何だかこっ恥ずかしい気分だ。「女少なくして妙なり」で、周囲をグルリと囲まれると恐怖心すら湧いてくる。
さてこの物語だが、原作は18世紀イタリアの喜劇作家カルロ・ゴルドーニの同名戯曲で、ヴェネツイアを舞台に、高齢の夫を看取ったばかりの金持ち未亡人が、再婚でもうひと花咲かせようと奮闘するというストーリーらしい。単なる喜劇ではなく中世ヨーロッパ各国の国民性の比較や風刺も効かした人気喜劇とのこと。
これをそのまま上演しても当時の社会や風俗がチンプンカンプンだと理解できないという事から、三谷幸喜が舞台を一気に現代へ移し、原作の構成、登場人物の性格や人間関係はそのままに、新しい脚本として書き下ろしたもの。
落語でいえば「改作」、「居酒屋」を「イラサリマケ」に変えたようなものと理解すれば早い。なに、それじゃ余計に分からなくなるって、そうですか。
あらすじは。
世界的な映画の祭典“ヴェネツィア国際映画祭”で賑わうヴェネツィアの、とあるホテルが舞台。
金持ちで高齢の夫を看取ったばかりの未亡人ロザーウラは元女優。これを機に自分と年相応の再婚相手を見つけ、同時に映画界にカンバックを果たすべく、代理人であるマリオネットを伴い滞在している。
そんな彼女に、イタリア、フランス、スペイン、イギリスの各映画監督たちから熱烈なアプローチがある。
イタリア人のボスコ・ネーロは社会派の、フランス人のルブローは前衛的な、スペイン人のドン・アルバロは冒険活劇の、そしてイギリス人のルネビーフは歴史もの、といったそれぞれの企画を彼女に持ち込み、映画出演を求める。
迷ったロザーラたちは一計を案じ、変装して監督たちの真意を探るが・・・。
ロザーウラの妹で売れない女優エレオノーラは姉の威光を借りて、何とか良い役を得ようと売り込みを図るが、姉の義弟でヨボヨボの老人パンタネーロから求婚され困惑する。
狂言まわしであるホテル従業員アルレッキーノを進行役にして物語は展開してゆく。
果たしてロザーウラ姉妹の映画出演は実現するのか、そして二人の恋の行方は、いかに。
三谷幸喜自身が語っているように客を感動させるような芝居ではなく、見終って「楽しかった」と思わせればそれで良いという舞台。その狙いは当ったようだ。舞台の俳優と共にお客は楽しんでいた。単純な喜劇としては成功と言えるだろう。
しかし風刺という観点からすると、イタリアの社会派映画も、フランス映画の前衛的手法も、みなひと昔前の事になってしまった。むしろ劇中でハリウッドの名前が出てくると皆の目の色が変るという所にリアリティを感じてしまう。
この劇は主演の大竹しのぶを見るための芝居と言っても過言ではない。当代きっての演技派女優のパフォーマンスが堪能できる。恐らく三谷は大竹しのぶを念頭に台本を書いたものと思われる。彼女以外にこの役を演じられる女優は頭に浮かばない。
芸達者を揃えた脇役陣は豪華で、少々勿体ない気がする程だ。段田安則が初日の舞台で足を捻挫したとかで杖をついていた。
狂言まわし役の八嶋智人の軽妙な演技が目を惹いた。
公演は7月31日まで。
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