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2014/07/28

三三・吉弥ふたり会(2014/7/27)

「柳家三三・桂吉弥 ふたり会」
日時:2014年7月27日(日)14時
会場:紀伊国屋サザンシアター
<  番組  >
桂そうば『牛ほめ(序)』
柳家三三『転宅』
桂吉弥『宿屋仇』
~仲入り~
桂吉弥『七段目』
柳家三三『殿様と海』

三三と吉弥には共通点がある。一つは大師匠あるいは又師匠が人間国宝に認定されていること、揃って国立花形演芸大賞を受賞していることだ。そういう意味では二人とも東西のサラブレッド的な存在だと言っても良いだろう。

そうば『牛ほめ(序)』
ざこばの弟子で入門10年目のようだ。東京でいえば二ツ目の中堅どころか。それでも自分の出囃子を持っていないようで上方は厳しい。
原題は『池田の牛ほめ』で、アホと叔父さんとの会話で「大阪では」という言葉が出てくる所をみると、かつては池田は大阪ではなかったようだ。
褒め言葉を紙に書いて貰い読み上げるのだが、台本でいう「ト書き」の部分まで読んでしまう所を笑わせどこにしている。
語り口がしっかりしていて期待が持てる。

三三『転宅』
マクラで長々と「アナと雪の女王」の解説をしたが、ネタとは結びつかない。映画を見た人も少ないようで会場の反応もイマイチだった。アタシも孫にせがまれてDVDを買わされたが、自分で見ようとは思わない。主題歌も知らないしチンプンカンプンだ。白鳥が「なに、女子アナと菊之丞か」と言ったというのが面白かっただけ。
ネタは何度か聴いているが、お菊の色仕掛けが濃厚になってきた気がする。あそこまで演られると泥棒でなくともその気になってしまいそうだ。
いざという時は女性の方が度胸があるのかも知れない。私事だが、両親が戦前に水商売をしていた時に、ヤクザが店の女の子とトラブルになり、ドスを抜いてテーブルにドンと突き立てたそうだ。親父も店員も全員が逃げ出したが、母だけは動かず「切れるものなら切ってみな」と啖呵を切って追い返したと言っていた。でも内心は怖くて震えていたと言うから、お菊もそんな気持ちだったんだろう。
一件を楽しそうに話す煙草屋の主と、騙されてと知って落胆する泥棒との対比が上手く描かれていた。

吉弥『宿屋仇』
よけいな事は何も加えず、何も引かず、本寸法でじっくり聴かせてくれた。源兵衛が武士の女房と弟を斬り殺し50両奪って逃げるまでの語りは説得力があり、あれなら誰もが本気にしてしまう。
一点だけ気になったのは、源兵衛と他の二人の三人の演じ分けが不十分で、セリフを聴いても誰が喋っているのか分からない。やや平板に感じられたのは、その故か。

吉弥『七段目』
東京の演出と異なり、ほぼ全編芝居噺風に演じる。従って演者に「芝居心」がないと出来ないネタだ。
代表的な演者をして頭に浮かぶのは、師匠の吉朝である。なにせ大阪の繁華街を六方を踏みながら歩いたとか、とめると「芝居心のねぇ奴だ」と答えたというエピソードのある人だった。
その吉朝の演出をクスグリを含めて忠実になぞった高座だった。派手な所作や歌舞伎のセリフ回しも堂に入っていて、吉弥の特長である目の演技も生かされていた。口跡の良さは師匠を凌ぐほどだ。
上出来の高座。

三三『殿様と海』
タイトルから想像できるようにヘミングウエイの『老人と海』のモジリ。三遊亭白鳥の創作落語。
同僚の大名に無理に誘われた殿様が、大きな鯛を釣り上げるビギナーラック。その思いが忘れられず釣りに凝り、三太夫を悩ませる。釣りをよめようとする三太夫と赤井御門守との会話は地口の応酬や、『目黒のさんま』『野ざらし』などの他のネタのパロディまで飛び出し、笑いを誘う。
初回だけで以後はさっぱり釣果が無い殿様を見かね、出入りの職人の助言に従って三太夫は釣具屋の五代目魚鱗堂助三を訪れる。助三から釣りの穴場と釣りに好適な釣り竿を借りた三太夫は、早速殿様と江戸湾に出る。この釣り竿が実は初代助三の骨で左甚五郎が作ったもので、それで良く釣れるし助言までしてくれる。悪戦苦闘の末、殿様は大きな鮪を釣り、その背中に乗って波路遥かに戻ってくるというストーリー。
三三の高座は、新作ながら所々に古典の匂いも感じさせ、座布団を鮪に見立てた終幕ではサービス精神を見せていた。

吉弥はここ数年何度か高座を観てきたが、米朝一門の本流をいっており、特に師匠・吉朝の芸を忠実に継承しているように思う。噺家として大事な愛嬌や色気もあり、将来の上方落語界を背負う人材の一人になるだろう。これからどう「吉弥らしさ」を出すのかが課題か。
三三については、先代小さんと師匠小三冶へと受け継がれた「引きの芸」は、少なくとも今は目指していないようだ。一方では鈴本の初席夜トリを小三冶から引き継いだように、柳家の本流を行くことが求められている。
これからこの二人がどう進み、どう変わっていくのか、注目される。

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コメント

『殿様と海』
三三には新作を演じるセンスがあり、
マクラや、挿話的に入れるクスグリによく表れています。
しかも、あの白鳥作というのだからいっそう興味深い。
白鳥には他にも『誰がために金は・・・』なんていうのもつくってほしいもんです。

投稿: 福 | 2014/07/29 08:21

福様
仰る通りで、三三のセンスが活きていました。想像ですが、原作者より面白かったのではないかと思います。
まだ若いのでこれからも様々なチャレンジが出来ますね。

投稿: ほめ・く | 2014/07/29 15:59

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