「永遠の一瞬」(2014/7/9)
「永遠の一瞬-Time Stands Still-」
日時:2014年7月9日(水)14時
会場:新国立劇場小劇場 THE PIT
作:ドナルド・マーグリーズ
翻訳:常田景子
演出:宮田慶子
< キャスト >
中越典子:サラ・グッドウィン(戦場カメラマン)
瀬川亮:ジェームス・ドッド(ライター、サラのパートナー)
森田彩華:リチャード・アーリック(編集者、サラの友人)
大河内浩 :マンディ・ブルーム(リチャードの妻)
本作品は、欧米の優れた同時代作品の中から日本未上演のものを公演する企画のもとで選ばれたもので、2009年にL.A.で初演、翌年にはブロードウェイで上演され、作品賞と主演女優賞の2部門でトニー賞にノミネートされた作品。
出演者は4名全員が新国立劇場初登場。
ストーリーは。
舞台はニューヨーク・ブルックリン、女性フォトジャーナリストのサラはイラクで取材中に重傷を負い、恋人であり仕事上のパートナーでもあるジェームスの助けを借りて自宅へ戻ってくる。
そこへサラの永年の友人であり編集者であるリチャードが、親子ほど年の離れた恋人マンディを伴って見舞いにやってくる。二人は近く結婚し子供を産んで幸せな家庭を作ることを夢見てる。
リチャードの提案でサラの写真にジェームスが書いた記事をのせた本を出すことも決まる。
ジェームスは8年にわたる恋人生活に終止符を打ちサラと結婚することを決意し、サラも受け入れる。
サラの数か月のリハビリの後、二人は結婚するが、二人の間に微妙な変化が生まれてくる。
サラが再び戦場へ戻ろうとするが、ジェームスはもう我々は十分な役割を果たした。これからは幸せな家庭を築こうと主張する。話し合いをするが二人の溝は埋まらず・・・。
世界各地で起きている紛争に人々はどう対処すべきか、職業への使命感と人生設計、人間にとって幸せとは何か、仕事を持つ女性の家庭との両立など、この作品は今を生きる私たちに多くの課題を投げかけている。
サラは戦場カメラマンという究極の職業に就いているが、特に女性にとっては普遍的な問題として共感できるかと思われる。
ごく普通の女性として登場するマンディが、サラの撮った爆撃で瀕死の状態にある女の子を抱いた女性の写真を見て発する疑問。「でも、あなたはどうして何もしないで、ただそこにいられたの?」「私が何をしたところでこの子は死んだでしょう。そして写真は残らなかった。」。「私は写真を撮るために、そこにいるのよ」と言い切るサラだが、心中には葛藤がある。ジェームスの個人の幸福を追求する心情も理解できるが、自分の使命感は変えられないサラ。
そうした気持ちのすれ違いはあったが、最後はお互いに幸せな形で終わるエンディングにはホッとする。
主演の中越典子、彼女の座る位置が私の席とは2m半ぐらいしか離れていなかったが、全体の印象としてはTVドラマで観る時と変わらない。戦場カメラマンという役にしては線が細い感もあるが、とにかく凛としていて可愛らしい。ナマ中越典子に堪能した。
他の人のセリフに対し細かな表情の変化を見せていて、繊細だが芯の強い女性を姿を良く描いていた。この日が開演2日目だったせいか、相手役の瀬川亮のセリフとかぶる場面がいくつか散見され、課題として残された。瀬川亮は熱演だったが、ややセリフが硬い印象を受けた。
大河内浩は好演、この人が出てくると舞台が締まる。
「天然」役の森田彩華の華やかな演技も光る。彼女の存在がとかく深刻になりがちな舞台を明るくしていた。
最後の淡白なカーテンコール、あれは演出だったのか、それとも出演者の気分が今ひとつ乗っていなかったのか。
公演は7月27日まで。
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