#422花形演芸会(2014/7/21)
「第422回 花形演芸会」
日時:2014年7月21日(月・祝)
会場:国立演芸場
< 番組 >
前座・立川らく人『饅頭こわい』
三笑亭夢吉『祇園祭』
桂やまと『あくび指南』
ニッチェ『コント』
立川志ら乃『火焔太鼓』
―仲入り―
ゲスト・立川志らく『やかん・序』
翁家和助『曲芸』
三遊亭歌奴『佐野山』
大雨が続いた梅雨もようやく明けるような気配の東京、国立の花形演芸会は満員御礼の看板が出ていた。この日は立川流がお目当ての客が多かったようだ。アタシは違ったけど。
順不同でゲストの志らく『やかん・序』から。
談志ファンには叱られるかも知れないが、アタシの好きな談志のネタは『源平盛衰記』『相撲風景』と『やかん』だ。特に前の二つは他の噺家の追随を許さない、談志の持つ感性の鋭さが光る。その談志のDNAを最も忠実に受け継いでいると思われる志らくの芸の魅力もそこに尽きる。この日の高座でも魚の名前の由来の前に動物名の由来を加えていたが、ここが楽しめるかどうかで志らくに対する好き嫌いが分かれる。後半の講釈の部分をカットしたが、そこは志らくの独創性を示せる箇所ではないからだろう。
志らくの弟子は現在17名いるそうだが、感覚や感性は師匠から教わって身に着くものではない。
志ら乃『火焔太鼓』を聴いてその思いを深くした。クスグリがかなり客席に受けていたが、アタシには面白さが感じられなかった。クスグリもいいけどもっと話芸そのものを磨いて欲しい。
夢吉『祇園祭』、季節感のあるネタを熱演。この人の古典に取り組む姿勢を評価したい。いよいよ来年
は夢吉や円満といった芸協の実力派が真打に昇進することが予想される。更なる飛躍を期待する。
やまと『あくび指南』、この日のお目当ての一人で、改名後は初。桂才賀の弟子なので大師匠は古今亭志ん朝ということになる。荒川の出身で子どもの頃から習い事をさせられていたというせいか、近ごろ珍しい位の芸人らしい芸人だ。古今亭のお家芸のネタ、あくび指南の師匠の造形が良く出来ていて結構でした。
ニッチェ『コント』、コントというよりは漫才に近い。女性同士のコンビっていうのはどうもねぇ・・・。
和助『曲芸』、この人に限らず、国立の伝統芸能伝承者養成研修所出身の曲芸師というのは揃って見せ方に工夫をしている。こうした点は寄席の太神楽曲芸師にはもっと参考にして欲しい。
歌奴『佐野山』、この日のお目当て。本人がポスト市馬と言っていた様に先ず声が良い。身体と声が大きく高座栄えがし、明るい芸風で噺家としての素質に恵まれている。特に『佐野山』のような相撲ネタにはピッタリだ。間に大相撲のエピソードを挟んでいたが、こうした演目は相撲が好きでないと出来ないだろう。
寄席や落語会というのは噺を聴きに行くのが目的だが、アタシのように噺家や芸人そのものを見に行くという楽しみ方もある。
« 「真打制度」って必要ですか | トップページ | 温泉は体に悪い? »
「寄席・落語」カテゴリの記事
- (続)この演者にはこの噺(2023.09.03)
- 素噺と音曲師(2023.08.30)
- 落語『永代橋』(2023.08.05)
- 小三治のモノマネ(2023.07.30)
- 祝!人間国宝「五街道雲助」(2023.07.22)
つまらない映画を背景ばかり見ていたこともありました。
花形演芸会の皆さんがそうだというわけじゃないです。
投稿: 佐平次 | 2014/07/23 10:01
佐平次様
噺家も芸人ですから芸人としての「見栄え」が要ると思います。これはCDやDVDでは分からない、ナマの高座を見るしかありません。
投稿: ほめ・く | 2014/07/23 10:37
「やかん」と「千早振る」はともに知ったかぶりの噺ですが、
後者が和歌を基軸としているため、まとまりやすいのに比して、
前者は拡散しがちです。
ある意味、談志の本然が出る噺で、
ご説のとおり、この部分は志らくが継承しているのでしょう。
動物名の由来は古くは猫(寝子)、狐(来つ寝)がありますが、
どんなものが例に上がったのか、興味があります。
投稿: 福 | 2014/07/24 06:47
福様
志らくは談志の中身を継承しているのではなく、思想を継承しているのだと思います。
動物ではキリンの首が長いといえばあれは胴体が短いんだと反論し、象の鼻が長いというとあれは顔が小さいんだと反論する。
他にはシマウマやライオン、ハイエナなどの名前が強引に付けられていました。
この日の高座は軽く流してましたね。
投稿: ほめ・く | 2014/07/24 08:52