温泉は体に悪い?
小森威典(著)『正真正銘 五ツ星源泉宿66』(祥伝社新書2011年10月初版)
年に2,3回は箱根や熱海周辺の温泉に出かけるのだが、しばしばアトピー性皮膚炎を悪化させて帰って来ることがある。温泉は肌に良いと思っていたが、どうもそうで無いらしい。
どこの旅館でも天然温泉で、中には「源泉かけ流し」を謳っている所もあるが、それにしては塩素の臭い(キッチンハイターの臭い)が強い。そこで温泉施設に義務付けられている「温泉表示」を読んでいたら、末尾に「ろ過」の文字があった。ということはこの旅館の温泉は循環使用しているに違いない。レジオネラ菌防止対策として塩素系の消毒剤を温泉に加えているというわけだ。
こうした経験を何度かしていて、温泉の実態はどうなっているんだろうかという興味から、この本を読んでみた。
著者はTVプロデューザーを25年間つとめ、特に温泉番組の制作を手掛けていて、直接取材した温泉旅館は1600軒以上に及ぶ。
その結果、本物の「温泉」といえる施設は全体の1%しかないことが分かった。全国14380軒の温泉旅館の中で本物が1%だということは環境省も認めているとのことだ。さらに源泉の温度を下げるために加水していない施設になるとその半分しかない。ということは本物はざっと200軒に1軒ということになる。
この他、以下のような事が分かっている。
・草津や別府には本物の温泉は存在しない
・ほとんど浴槽の掃除をしていない宿が驚くほど多い
・天然温泉を謳いながら何倍もの水で薄めているケースが少なくない
温泉の効能というのは源泉にあり、汲みあげた源泉が空気に触れることなくそのまま湯船に供給されなければならない。加水したり循環したりすればその温泉は単なる水溶液に変ってしまう。
従って本物の温泉の条件とは何かというと、以下のようになる。
①源泉100%かけ流しであること(循環などもってのほか)
②加水しないこと
③消毒しないこと
④こまめに清掃して清潔を保っていること
ただし冬場の加温だけは認める。
現在、温泉の消毒剤として従来の製品に比べ遥かに効果的で、かつ塩素の臭いのしない物が開発された。「塩素化イソシアヌル酸」という名の強力消毒剤だ。しかもヌメリが出るという。
1回投与すれば少量で1日効果が持続するという性能があり、多くの旅館で使われている。
処が強力なだけに人体への影響、特に発がん性に疑問が持たれているが、厚労省や保健所での検証は一切行われていない。
プールでも使用されているようで、アメリカやイギリスでは健康障害も指摘されている。
著者によれば、こういう温泉に入る位なら銭湯の方がよほど安心だと言い切っている。
そうした心配を別にすれば、良い景色を眺めながらユッタリと湯船に浸かり、美味しい料理と酒を味わいリラックスできるという効果はあるわけだ。
楽しみ方は人それぞれなので、本物の温泉でなければ全てダメというわけではない。
ただ、施設に掲示してある「温泉表示」をチェックしたり、持病のある人は浴槽の入り方には注意が必要だろう。
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おおよそのところは想像してましたが、それほどひどいとは驚きです。
銭湯でも清掃の行き届かない店も多いですね。
投稿: 佐平次 | 2014/07/25 11:13
佐平次様
温泉の場合、1日あたり数時間の清掃を要するんだそうで、その人件費を惜しむ旅館が多いとか。ここには二度と来たくないと思った温泉旅館もありましたね。
投稿: ほめ・く | 2014/07/25 12:18