« キャラメルボックス『TRUTH』(2014/7/30) | トップページ | 「日本を取りもどす」のはオレたちの方だ »

2014/08/01

志の輔『牡丹灯籠(通し)』(2014/7/31)

「志の輔らくごin下北沢 本多劇場プロデュース『牡丹灯籠』2014」
日時:2014年7月31日(木)18時30分
会場:本多劇場
出演:立川志の輔

今夏は怪談噺を何席は聴くことにしていて、この日の会もその一環。
『怪談牡丹燈籠』は三遊亭圓朝の23歳も時の作品だそうだ。
当時の記録によれば圓朝の高座は15日間、およそ30時間かけた口演だったようで、これを若林王甘[カン]蔵・酒井昇造の二人の速記者が記録して出版した。これが明治の言文一致体を編み出す元となった。幽霊のカランコロンの下駄の音や、幽霊が恨みを晴らすためではなく恋しい人に慕うために出てくるという点が、当時としてはとても斬新だったようだ。
原作は、お露の幽霊のストーリーと忠僕孝助による仇討のストーリーが、交互に絡み合いながら進行してゆく形式をとっている。
この大作を志の輔がどう2時間半でまとめ、観客に理解させるかが見もの。
もう6年も演じ続けているようで、リピーターも多いのだろう。

<登場人物の相関図>
Photo
赤い矢印は殺害を示す。

【前編】
旗本の飯島平左衞門が刀屋の店先で酒乱の浪人・黒川孝藏に絡まれ、斬り殺す。「発端/刀屋」
黒川孝藏の息子・孝助が、父の仇と知らず、飯島家の奉公人になる。平左衞門は孝助に剣術を教える。
平左衞門の奥方が亡くなると、女中のお国を妾にする。お国は平左衞門の留守中に隣家の息子・宮邊源次郎と密通。孝助が見咎める。
相川新五兵衞が飯島平左衞門宅を訪れ、自分の娘・お徳と黒川孝助との養子縁組を持ちかける。
源次郎とお国は邪魔な孝助を消すため一計を案じるが、失敗に終わる。
平左衞門の金百両が何者かに盗まれる。お国はこれを利用し孝助に罪を被せようとする。
お国らの計略に気付いた飯島平左衞門の孝助の濡れ衣は晴れたが、孝助は平左衞門を間男の宮邊源次郎と間違えて槍で足を刺してしまう。平左衞門は自分が孝助の父の仇であることを告げ、孝助を相川家へ逃がす。「孝助の槍」
飯島平左衞門は深手を負いながらも、宮邊源次郎とお国を殺しに行くが、反対に殺されてしまう。源次郎とお国は飯島家の金品を盗んで逃走する。黒川孝助はお徳と祝言をあげるが、亡き主人・平左衞門の仇を討つため源次郎とお国を追う。

ここまでが前篇で、志の輔はマグネットパネルを使い、粗筋を紹介しながら主要な登場人物の相関関係を説明する。ここまでが1時間。
発端の『刀屋』以外は落語で演じられることは稀だが、こちらがいわば『牡丹灯籠』のメインストーリーにあたる。
仲入りを挟んだ後編、志の輔は高座に上がり落語として演じる。

【後編】
医者の山本志丈の紹介で、飯島平左衞門の娘・お露と美男の浪人・萩原新三郎が出会い、互いにひと目惚れする。「臥龍梅/お露新三郎」
新三郎はお露のことを想い悶々とした日々を送る。
新三郎は山本志丈からお露と女中・お米が死んだと聞かされるが、盆の13日にお露が牡丹灯籠を提げたお米を連れて萩原新三郎宅の前に現れる。これから毎夜二人は逢瀬を楽しむ。
人相見の白翁堂勇斎がお露らを幽霊だと見破り、萩原新三郎にその事と死相が出ていると告げる。新三郎も調べてお露が幽霊であることがわかり、僧侶の良石の助言に従い金の仏像とお札で幽霊封じをする。
新三郎の奉公人である伴蔵と妻のお峰は幽霊から百両もらって、萩原新三郎の幽霊封じの仏像とお札を取り外してやる。「お札はがし」
萩原新三郎の葬儀を済ませたのち、伴蔵と妻のお峰は悪事がばれるのを恐れて、伴蔵の故郷・栗橋に引っ越す。伴蔵は幽霊にもらった百両を元手に荒物屋「関口屋」を開き成功するが、料理屋の酌婦と懇ろになる。酌婦は飯島平左衞門の元妾のお国だった。伴蔵はお国との仲を咎めた妻のお峰を騙して殺す。「栗橋宿/お峰殺し」
死んだお峰が伴蔵の使用人たちに乗り移り、伴蔵の悪事をうわ言のように喋り出したので、医者を呼んだところ、その医者は山本志丈だった。事の次第を知った山本は伴蔵にお国の身の上を暴露する。お国の情夫宮邊源次郎が金をゆすりに来るが、逆に伴蔵に追い返される。伴蔵は栗橋を引き払い、山本と江戸に帰る。「関口屋」
仇が見つからず、孝助はいったん婿入り先の相川家に戻ると、お徳との間に息子・孝太郎が生まれていたことを知る。
伴蔵は悪事の発覚を恐れて山本志丈を殺すが、捕えられる。
孝助は人相見の白翁堂勇齋を訪ね、そこで偶然に4歳のときに別れた母親おりえと再会する。孝助が探していたお国が、母親の再婚相手の連れ子であり、源次郎とともに宇都宮に隠れていることを知る。
母おりえがお国と源次郎の隠れ場所に手引きしてくれるというので孝助は宇都宮に出向くが、おりえは、夫に義理立ててお国と源次郎に事の次第を話し、2人を逃す。
母おりえは孝助に事の次第を話し自害する。孝助は二人を追い、討ち果たす。

後編の落語で志の輔は、『お札はがし』『栗橋宿』『関口屋』の3席をメインにして孝助の仇討本懐までを語り切った。

『牡丹灯籠』の通しは、数年前に柳家喬太郎が2日に分けて約4時間かけた口演を聴いたことがあるが、全体のストーリーを把握する上では今回の方が優れていた。それはやはり志の輔が前半でパネルを使って物語の全容を掴めるように説明した事が大きい。
志の輔の落語の個々の演目をみれば圓生に遠く及ばず、例えば『お札はがし』について比べると春風亭小朝の方が遥かに優れている。
しかし正味2時間半でこの大作をまとめるという構成力、客を惹きつける話芸はさすがと言うしかない。
一つのネタを何年間も繰り返し口演するという志の輔の手法には批判があるが、それでも常に満席にしているのは伊達じゃない。

|

« キャラメルボックス『TRUTH』(2014/7/30) | トップページ | 「日本を取りもどす」のはオレたちの方だ »

寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/82117/60077714

この記事へのトラックバック一覧です: 志の輔『牡丹灯籠(通し)』(2014/7/31):

« キャラメルボックス『TRUTH』(2014/7/30) | トップページ | 「日本を取りもどす」のはオレたちの方だ »