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2014/08/15

新兵の訓練

今日は69回目の終戦記念日。しかし以前に書いたように正式な終戦日は8月15日ではない。軍部が支那派遣軍を除く外地軍に対して全面的な戦闘行動停止の命令は、8月25日零時以降としていた。以後も大陸や北方戦線、北方四島では日本軍とソ連軍との戦闘が続き、全体的に終結したのは8月末になってからだ。
従って正式な「終戦の日」とは、日本政府がポツダム宣言の履行等を定めた降伏文書(休戦協定)に調印した、9月2日とすべきだろう。

私には戦争の思い出はない。支那事変から日米開戦にいたる時期は生まれる前だったし、東京大空襲から終戦にいたる時期はまだ赤ん坊だ。戦争や軍隊についての知識は両親や親類の人たちの話、その他は戦記や小説で得られたものだ。
ただ、両親が戦前に中野でカフェ(イメージとしては今のバー、クラブ)を経営していたので、色々な客が訪れた。店の名が「日満」といい、入り口の上には日の丸と満州国旗のぶっちがいが飾ってあったせいか、除隊になったり一時帰国したりしていた兵士が多かったという。店は父親が徴用されて昭和18年ごろまで続いていたようだ。
軍隊帰りの人というのは概して体験を語りたがらないものだが、なにせ酒が入って若い女の子を前にすると、ついつい自慢話、手柄話を披露したくなる。家族などには到底話せないことまでしゃべるわけだ。
酒席だから多少のホラや誇張はあったのだろうが、後年、母から聞いた限りでは中国人に対して相当ひどい事をしていたようだ。中味は、とてもここでは書けないものだ。
中学生の頃だったと思うが、雑誌に、戦中の従軍記者が書いたもので、軍部の検閲でボツにされた記事を特集したものがあった。残虐行為がリアルに書かれていて再びショックを受けた。

近所の男の人から直接軍隊での経験を聞いたのも、中学生のころだったと思う。
その人は徴兵されて中国の戦線に送られたということだが、長い戦闘の中でこれだけは忘れることが出来ない記憶として話してくれたのが、以下の「新兵の訓練」だった。
内地では一通りの訓練は受けたのだが、現地へ行くと上官から新兵だけ集められて特別の訓練がやらされた。それは実際に人を殺す訓練だった。
木に中国人捕虜が縛られていて、新兵がそこへ銃剣で突撃し、一刺しで殺すという内容だった。
嫌だったが上官の命令には逆らえず銃剣を構えて突進する。その時に中国人と眼が合うと凄い形相をしていた。そうだろう、今ここで自分が殺されるのだから当然だ。その眼に堪えられず視線が逸れてしまい、急所を外してしまった。
上官から殴られ、負傷して苦しんでいる捕虜にもう一度突撃を命じられ、相手が絶命するまでやらされた。
訓練はその部隊の新兵全員が終わるまで続いた。
その後、各地を転戦したが、あの時の中国人捕虜の表情だけは忘れることが出来なかったと言う。
戦後は戦犯にされることを怯えて暮らしていたそうで、絶対に戦争は嫌だと、その人は語っていた。

そうした事から戦争だけは、軍隊だけは嫌だと思い続けて今日に至っている。もちろん自分の息子や孫たちにもそうした目に遭わせたくない。
幸い、私たちの時代は国軍も集団的自衛権の行使もなかったので、朝鮮戦争にもベトナム戦争にも参戦せず、徴兵されて戦線に送られることもなかった。
69回目の終戦の日であるが、今年は今までとは異なる気持ちでいる。

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コメント

母が「あなたたちを戦争に行かせたくない」とよく言ってました。
ピンとこなかったけれど、今は少し気持ちがわかるようになりました。

投稿: 佐平次 | 2014/08/15 10:01

佐平次様
昨今、日本軍の残虐行為を頭から否定する論調が目立ちますが、自国の負の歴史に目をそむけてはならないと思います。
他国に行って戦争なんて絶対に嫌ですね。

投稿: ほめ・く | 2014/08/15 10:44

拝見していて「私は貝になりたい」に思いが至りました。
戦争、原発、いろんな意味で日本とドイツの身の処し方に大きな違いを感じます。
しっかりと過去に向き合う以外に、将来の展望は開けませんよね。

投稿: 小言幸兵衛 | 2014/08/15 11:15

小言幸兵衛様
下級兵士にとっては上官の命令は天皇陛下の命令であって、逆らう事は出来ません。そうして戦犯として処刑された人も少なくない。
その反面、A級戦犯とされた人たちの中には戦後、首相まで上り詰めた人もいます。
何だか割り切れないです。

投稿: ほめ・く | 2014/08/15 12:17

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