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2014/09/11

こまつ座「きらめく星座」(2014/9/10)

こまつ座第106回公演「きらめく星座」
日時:2014年9月10日(水)13時30分
会場:紀伊國屋サザンシアター

作:井上ひさし 
演出:栗山民也
<   キャスト   >
久保酎吉=レコード屋オデオン堂の主人 
秋山菜津子=その後妻、元歌手 
田代万里生=長男、脱走兵 
深谷美歩=長女、従軍看護婦を目指す 
山西惇=その夫、傷痍軍人
木場勝己=オデオン堂の下宿人、広告文案家(コピーライター) 
後藤浩明=  同上、音楽家を目指す(*劇中でのピアノ演奏を担当) 
木村靖司=憲兵伍長
峰崎亮介=防共護国団員/電報配達夫 
長谷川直紀= 同上  /魚屋店員

昨日朝、マンションの玄関に行ったら、集合ポストに産経新聞が入っていた。周りを見るとどうやら全戸に配布したもののようだ。そうか、産経もいよいよ正式の政府広報紙に認定されて、これからは無料で配ってくるのかと期待したが、今日は配布されていなかった所をみるとそうでもないらしい。
産経としては日々安倍政権ヨイショの記事を載せているのだから(産経com.の愛読(視)者です)、その位の恩恵はあっても良いのだろうが。
かつて中国の文革全盛期には、産経は文革の実態を報道する国内ただ一つの新聞として評価されていたが、今や「アベノキカンシ」に零落してしまった感がある。

芝居を見に行く支度をしていたら愛妻が(照れるなァ)チケットを見て、「あんた、この劇、前に見てるわよ」と言われてしまい、調べたら5年前に確かに見てる。「見てたオレが忘れてて、なんで見てないお前が憶えてるんだ」などと訳の分からぬことを言いながら出かけた。
観劇したが、前回のことは完全に忘れてる。だから新鮮な気持ちで観られた。
中島みゆきの歌じゃないけど、
「年をとるのは素敵なことです、そうじゃないですか。忘れっぽいのは素敵なことです、そうじゃないですか」。

舞台は東京は浅草にあるレコード屋オデオン堂の茶の間、時代は昭和15年から16年、つまり支那事変から始まった日中戦争が泥沼化しつつあり、太平洋戦争前夜の時期。
店主と後妻、長女の3人家族に下宿人として広告文案家、音楽家を目指す学生。5人は揃って音楽好きだ。その音楽は敵国のジャズであったり、軟弱な流行歌であったりと、およそ時局には合わないものばかり。
そこに陸軍に入隊していた長男が脱走したとあって、周囲からは非国民扱い。追手として憲兵伍長が捜査に現れる。
しかし、従軍看護婦を目指す長女が結婚相手に選んだのは傷病兵。非国民家族から一転してオデオン堂は美談の家になる。傷病兵の夫はガチガチの軍人でなにかというと軍人勅諭や戦陣訓を持ち出し、自由主義的な雰囲気の残るオデオン堂の人々と対立する。
軍を脱走した長男は炭鉱にもぐりこんだり、上海航路の料理人見習いになったりして逃亡を続ける。彼を追う憲兵伍長は張り込みを目的にオデオン堂に下宿する。
長女は妊娠するが、こうした状況に絶望し、自ら胎児を堕そうとして・・・。

過酷な状況にあっても、いつも笑顔と歌を忘れない愛すべき庶民を描いた芝居で、まさに井上ひさしの人間賛歌の結晶と言って良い。
自分の腹に石を打ちつけ胎児を堕そうとしている長女に、下宿人の広告文案家はこう説く。
「宇宙には無数の星がある。その中で地球のような星はいくつあるのか、いくつもない。この宇宙に水惑星があること自体が奇蹟なのです。水惑星だからといって必ず生命が発生するとは限りません。ところが地球にあるとき小さな生命が誕生しました。」
こう言って、この宇宙の中であなたが存在していること自体が奇蹟だし、宿した生命も奇蹟なんだと説得する。
劇の中では全部で21曲の歌が挿入され、ストレートプレイでありながら音楽劇のように歌い踊る楽しい舞台となっている。
もちろん、井上作品らしく、半島から強引に連れてきた朝鮮人たちを劣悪な条件で働かせていた実態とか、高級軍人と経営者との癒着といった問題へも切り込んでいる。

この作品の最大の特長は終幕にある。政府の統制令によりオデオン堂は閉店させられる。全員が集まってお別れのパーティをするのだが、これが昭和16年12月7日、真珠湾攻撃の前日だ。各人が希望を抱いてそれぞれの道を進む筈だが・・・、ここで舞台は暗転。
最終シーンは全員が防毒マスクをつけて黙って立っている。
つまり登場人物の悲劇的な結末を暗示しているわけで、怖ろしい仕掛けが隠されていた。

出演者ではオデオン堂店主を演じた久保酎吉と、広告文案家を演じた木場勝己の存在感が圧倒的で、この二人が出てくるだけで「きらめく星座」だ。
店主の妻を演じた秋山菜津子の演技が素晴らしい。彼女の存在がこの舞台に明るさを与え続けていた。歌や踊りも上手いし、なにより色気がある。下町の小股の切れ上がった女性というイメージが合う。
傷病兵を演じた山西惇は愚直な人物像を、長男を演じた田代万里生は軽妙な演技を見せていた。
後藤浩明の軽快なピアノ演奏が華を添える。

東京公演は10月5日まで。

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