『火のようにさみしい姉がいて』(2014/9/18)
シス・カンパニー公演『火のようにさみしい姉がいて』
日時:2014年9月18日(木)14時
会場:Bunkamura シアターコクーン
作:清水邦夫
演出:蜷川幸雄
< キャスト >
段田安則:男優
宮沢りえ:妻
大竹しのぶ:床屋の女
山崎一 :みおたらし
平岳大 :スキー帽の男
満島真之介:青年
西尾まり:床屋の見習い
中山祐一朗:ゆ
市川夏江:しんでん
立石涼子:べにや
新橋耐子:さんざいみさ
ほか
本作品は、劇作家・清水邦夫が自作を上演するために主宰していた「木冬社」で、
初演(1978年):岸田今日子、松本典子、山崎努
再演(1996年):松本典子、樫山文枝、蟹江敬三
という顔合わせで上演されたそうで、今回は16年ぶりの再々演ということになる。
清水邦夫の作品も、蜷川幸雄の演出も私には初めてで興味を惹かれた。
物語は、
シェークスピア劇「オセロ」の楽屋で、主人公を演じる男とその妻が登場する。二人は俳優同志だが、妻は結婚を機に引退している。男は俳優として行き詰っていて、妻は妊娠しているという妄想にかられている。
転地療法のために男の故郷である寒村を訪れ、バス停の場所をたずねに一軒の床屋に立ち寄る。留守のようなので妻はトイレを借りに行き、その間に男は「オセロ」の演技をしているうちに店のコップを割ってしまう。
そこへ主人とおぼしき女が客と数名の老婆らと共に現れる。村人たちは男の子ども時代を知っているらしく、口々にエピソードを語り始める。
しかし男には全く身に覚えがない。男と村人との間に諍いが起き、双方が怪我をしてしまう。
戻ってきた妻は驚き、男の姉と弟を呼ぶように村人に頼む。
やがて弟が現れ男を懐かしむが、男は弟として認めずニセモノ呼ばわりして追い返す。
次に現れた姉と称する女が、実は床屋の女主人だった。女は男の過去を語りだすが、男は頑強に否定し姉もニセモノだと言う。すると女は男と妻の間の現状についても話し始めるが、妻からすればそれは確かに事実。
そこからは男-妻-女の間で激しい応酬が展開する。
虚構と現実のパラレルワールド。
いつしか男と妻は、芝居の「オセロ」の世界に入り込み・・・。
舞台では鏡が効果的に使われ、楽屋の鏡の向こうに男の故郷の床屋が映ったり、故郷の床屋の鏡に楽屋の姿が映し出されたり、男の子どもの頃の見世物小屋の鏡が登場したりという趣向が凝らされている。
難解なストーリーで、作者がいわんとしている事が掴みにくい。
終幕で学生デモの音声が流されるのと、この劇の初演が1978年であることを考えあわせると、どうやら学生運動の挫折をテーマにしているようだ。
故郷を捨てて運動に身を投じ、行き詰って故郷に戻るが受け容れられず、強烈なしっぺ返しを食うという。
ちょっと飛躍し過ぎかな。
門外漢として事態を冷静に見ていた男の妻も、このシガラミから抜けられなかった。
宮沢りえの舞台を数年ぶりに観たが、上手くなった。もはや舞台女優としての位置を獲得したようで、この芝居も彼女の芝居と言っても良い。ただ痩せすぎのように見え、もう少し体重を増やした方が舞台栄えすると思うのだが。これは私の好みの問題かな。
段田安則は熱演だったが、この役のイメージからは離れているように感じた。
大竹しのぶは抑えた演技で、敢えて彼女でなくともと思われるキャスティングだ。
脇の男優陣と老婆たちは揃って好演。
公演は30日まで。
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