笑福亭福笑独演会(2014/10/13)
「笑福亭福笑独演会」
日時:2014年10月13日(月)14:00
会場:横浜にぎわい座芸能ホール
< 番組 >
前座・三遊亭わん丈『国隠し』
笑福亭たま『漫談家の幽霊』
笑福亭福笑『千早ふる』
~仲入り~
清水宏『スタンダップコメディ』
笑福亭福笑『狼の挽歌』
10月に入って2週続けての大型台風の上陸って、このところ日本列島はいったいどうなってるんだろう。福笑が言ってたが、地球全体の歴史の中でほんのわずかな歴史しか持たない人間が、やれ「地球にやさしい」なぞと抜かすのは「おこがましい」のかも知れない。休火山だの死火山だの、人間が勝手に名づけているだけ。山からすればそんなこと関係なく噴火する、とも。
自然の美しさに感嘆すると同時に自然への畏怖の気持ちを忘れてはいけないのだろう。
「笑福亭福笑」、上から読んでも下から読んでも同じ回文式芸名だ。アタシはお初。
6代目松鶴の3番弟子、もしかして東京の落語ファンには「たま」の師匠の方が通りがいいかも。たまの「上下(かみしも)」を振らないしゃべりは師匠譲りだった、という事をこの日発見した。
笑福亭福笑を紹介する記事をみると、上方落語会きっての「爆笑派」とか、メディアに出ることは少ないが過激な高座で大阪には熱狂的ファンがいるとか、古典と新作(自作)の両刀使いであると書かれている。
この日の高座を見る限りでは全てその通り。
会場を見渡すと、東京でも熱狂的ファンがいるようだ。
前座・わん丈『国隠し』、滋賀県出身ということで自虐的な新作だった。江戸落語を目指すようだが、「地」のしゃべりに関西のイントネーションが抜けていない。
たま『漫談家の幽霊』、末広亭の芸協の芝居にゲスト出演するなど、すっかり東京の落語ファンにもお馴染みになった。
マクラで上方落語の怪談噺について語っていたが、東京と同様に客席を暗転させ白い着物の幽霊を出していたそうだ。幽霊が冷たいコンニャクで女性客の頬をなぜるというのは上方流、そこまでやるか。
ネタは集まった男たちが順に怪談話を披露し合うというもの、これがちっとも怖くないばかりか、脇にいる人間がオチをつけて小咄にしてしまう。この辺りは、たまのギャグ満載だ。相変わらず切れ味とテンポの良い高座。この人はやがて上方落語を背負う一人になるだろう。
福笑『千早ふる』、冒頭に書いたようなマクラをふりながら客席をしっかりツカムあたりは、さすが。
見台に向かって前かがみでしゃべる独特の姿勢、カミシモを振らないので常に客席へ向かって語りかけるようなスタイル。
このオッサンはいきなり百人一首の歌の意味をききにくる。作者の名前さえまともに読めないのに。相手の男もまたチンプンカンプン。「この千早って、なんだや思う?」「人の名前でっか」「そう、人、島原の花魁の名前や」ってな感じで解釈が進む。「からくれない」もオッサンが「豆腐のオカラをくれないか」とヒントを出す。通常の訪ねてきた男の疑問に片方の男が一方的に解説するという形ではなく、二人で話し合いながら解釈をする。こういう演じ方もアリか。
清水宏『スタンダップコメディ』、客席に拍手や声援を求める割には、本人のネタは大したことない。良さが分からない。
福笑『狼の挽歌』、新作で代表作の一つのようだ。二人のヤクザが相手の組の事務所に殴り込みをかけ、警察に追われる途中でタクシーの運転手を人質に取り逃走する。この運転手も変わっている。二人が片手に拳銃、もう片手に日本刀を持って逃げてくるのをドアを開けて拾ったんだから。ヤクザ二人は運転手を脅し、空き倉庫に逃げ込む。この辺りから様相がかわり、運転手が二人に説教を始める。やがて倉庫の周囲を警官が包囲し投降を呼びかけると、運転手は怯えるヤクザから銃を取り上げ、二人を叱咤激励しながら警察に向かって発砲し始める・・・。
ヤクザと人質の立場が次第に逆転していく面白さがミソ。ちょいと『らくだ』を思わせる。
こうした落語になりにくい題材を使って新作に仕上げるところがこの人の特長なんだろう。それも福笑のパーソナリティが生きていえばこそで、他の演者では難しかろう。
一口にいうと「癖になりそな」噺家で、魅力を文章では表現しづらい。実物を見て貰うしかない。福笑はそういう人だ。
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