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2014/10/24

「通ごのみ~扇辰・白酒二人会~」(2014/10/23)

「通ごのみ~扇辰・白酒二人会~」
日時:2014年10月23日(木)18:45
会場:日本橋劇場
<  番組  >
前座:林家つる子『のめる』
桃月庵白酒『茗荷宿』
入船亭扇辰『五人廻し』
~仲入り~
入船亭扇辰『一眼国』
桃月庵白酒『死神』

今回から会場が日本橋劇場へ移り少し広めになった。客の入りが良いせいだろう。この日も1階は満席だった。
プログラムが無くなってしまったのは感心できない。主催者の手抜きかな。
白酒がマクラで相変わらず落語家の入門者が多いと語っていたが、女性の入門だけは制限して欲しい。こればかりは男女機会均等とは意味が違う。何度もいうが落語家だけは女性に向かない。落語会や独演会の初っ端に前座の下手は噺を聴かされるのには閉口しているが、特に女流は迷惑だ。
時節柄、二人ともに安倍政権閣僚のスキャンダルをとりあげていた。明治座だワインだウチワだカレンダーだで、今度はSMバーですか。噺家のネタには困らないだろうが、自民党の現状は嘆かわしい。もっとも白酒のいうように、それを受け入れてきた国民にも問題はあるのだが。

白酒『茗荷宿』
この噺は古典で、東京と上方両方で演じられていて、東京では10代目金原亭馬生が持ちネタにしていたようだ。茗荷を食べると物忘れするという言い伝えから出た話し。
江戸と大坂を往復する飛脚が道中で足をくじいてしまい、近くに宿を取る。めったに客の来ない宿屋で名前は『茗荷屋』。飛脚は挟み箱を宿の主人に預けるとズシリと重い。きけば中身は50両小判。そこで宿の主人夫婦は飛脚に茗荷づくしの食事を与えれば、金を預けたことを忘れて出発してしまうと期待し、それを実行する。飛脚も茗荷は好物といって良く食べて、残りは宿の女房がたいらげる。
翌朝宿を出た飛脚は予想どおり挟み箱を忘れていった。大金が手に入ったと喜ぶ宿の夫婦。
そこへ飛脚が戻ってきて、忘れ物の挟み箱を受け取ると一目散に走り去った。
「何か忘れていった物は無いかね」
「あぁ、宿賃もらうのを忘れた」
白酒は献立に「茗荷の刺身」や「茗荷の開き」を出して笑うを誘う。
いかにもこの人らしい快調なテンポで笑いを誘っていた。古今亭の珍しいネタを継承する白酒の努力は賞賛に値する。

扇辰『五人廻し』
扇辰がこのネタを、ほー、興味津々。
最初の男、二階の若い衆に「廓の法」を説かれると、怒りにまかせて「吉原縁起の言い立て」をまくし立てるのだが、ここが最大の見せ場。ここはある程度演者の狂気が求められる。ベストは談志。扇辰は胸のすくような啖呵を切って拍手を浴びていた。
第二の客は官吏のようだ、四隣沈沈、空空寂寂、閨中寂寞とやたら漢語を並び立てる。妻が病で夫の要求に応えられない。見かねた妻が吉原に送り出してくれたのに、女が来ないとは何事だと、遂には泣きだす。この狂気ぶりも良い。
第三の男は田舎者、まるで『百川』の百兵衛のような喋り方。無粋だねぇ。
第四の客は通人風。オネエ言葉でしゃべるのだがこれが嫌味ばかり、しまいには若い衆の背中に灼け火箸を押し付けると脅す始末。
4人が4人とも、尋常でない客ばかり。
やっとの思いで喜瀬川おいらんを捜し当てると田舎大尽の杢兵衛だんなの部屋に居続け・・・。
今回のような「弾けた扇辰」を見たのは久々だ。これが扇辰の最大の魅力であり、扇橋門下でも異彩を放つ由縁でもある。

扇辰『一眼国』
確かネタおろしは昨年だったと思うが、今ではすっかり扇辰の十八番になっている。

白酒『死神』
人間の死亡率は100%だ、誰もが最後は死ぬわけで、してみると誰もが死神に憑りつかれているわけだ。死神は進んで人を死に追いやるという役割ではなく、むしろ人の運命(さだめ)をみつめる神なのかも知れない。
白酒の描く死神はやたら明るい。そりゃそうだろう、死にたいと思っていた人を励まし、生きる希望を与えるのだから。病人の足元に死神がいれば呪文を唱えれば追い出すことが出来て、病人は全快すると教えられた男。すっかり名医の評判を取り、往診を受けたい人が朝から行列を作る始末。仕方ないのでオークション形式で診察料の高い客を優先して往診する。ところが金使いが荒いので直ぐに稼ぎは消えてしまう。
江戸きっての金持ちの病人宅へ出向くと、死神は枕元に座っている。直せば1万両という金に目がくらみ男は一計を案じる。病人の布団の四隅に力の強い男を配置し、「かごめかごめ」を始める。死神があっけにとられている隙に「後ろの正面だぁれ」で気が付けば死神は足元に。男が直ぐに呪文を唱えると死神は退散。まんまと1万両にありつけるが、以前に出会った死神が現れ、約束が違うと叱られ洞窟に連れていかれる。そこには全ての人間の寿命を示す蝋燭が立てられていて、男の蝋燭は風前の灯。なんとか新しい蝋燭に灯をつないだまでは良かったが、嬉しくなって蝋燭を持ったまま表に出て、明るいからと、ふーっと吹き消してしまう。やはり自分の運命には逆らえなかったのだ。
通常の『死神』を改変した作品、白酒の明るい個性が生かされていて成功したと言える。こういう演じ方もあるんだ。

この日の4席を聴いても、この会の人気の理由が分かる。

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コメント

この会は、会場も木戸銭も“昇格”するに値しますね。
あちこちでよくお見かけする顔ぶれも多い。
そういったご通家の中に、“謎の男 H”さんも^^

会場で「目付きの悪い男」がめっかりましたか。白酒の高座は9時丁度に終わり、この点も評価しています。

無理しても行くんだったなあ。

佐平次様
てっきりご一緒かと。毎度前売り完売ですが、お客は良く知ってますね。

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