一之輔・真一文字の会(2014/10/29)
「真一文字の会~春風亭一之輔勉強会」
日時:2014年10月29日(水)19時30分
会場:内幸町ホール
< 番組 >
春風亭一之輔『天狗裁き』
春風亭朝之助『幇間腹』
春風亭一之輔『味噌蔵』
~仲入り~
春風亭一之輔『妾馬』
一之輔がマクラで触れていたが、弟弟子の春風亭朝也が今年度のNHK新人落語大賞大賞を受賞した。順当な結果だと思うし、この人はもう少し早く選ばれても良かった。
一朝門下は優秀な弟子が育っている。師匠の指導力が良いのか、はたまた弟子を選ぶ眼力が優れているのか。いずれにしても目出度い。
この会、以前から一度来たかったが、発売日に電話したら「最後に1枚ありました」という返事でようやくチケットが取れた。まるで『富久』だね。
チケットが転売されるほどだと配られたチラシに書いてあった。行けなくなったので譲りたいというは分かるけど、「ネットダフ屋」はやめて欲しい。談志じゃないが「そいつ捕まえて殺せ」と言いたくなる気持ちも分かる。
タイトルに勉強会とあるので、演目はネタ出しが中心なんだろうか。そう思って聴いていた。
朝之助『幇間腹』
このネタ、志ん生と3代目柳好が得意としていたが、今はほとんどが志ん生流をベースにして演じている。軽いし笑いが取れるからだ。幇間のペーソス溢れる柳好流も良いと思うのだが、後継者が見当たらない。
朝之助は話し方に独特のクセというかリズムがある。悪くなかったが、針をさしたら猫が死んでしまい、その死体をお茶屋の二階に持ってきて一八に見せるというのは悪趣味だ。
一之輔『天狗裁き』
初っ端だったせいか今っ一つ気持ちが乗り切れないままスタートしたような印象で、出来も荒削り。
この噺も志ん生をベースにしているのが一般的だ。ただ最近の人たちは熊公が天狗から団扇を奪い空中を漂ってから、大店のお嬢さんの婿になるという部分をカットしている。この部分を抜かしてしまうとこの噺のスケールが小さくなってしまうと思うのだが、どうだろうか。
一之輔『味噌蔵』
小三冶の演じ方を基本にしていたと思われる。旦那の留守に奉公人が宴会を開く場面では独自の工夫がされていた。可もなし不可もなしといった具合。
一之輔『妾馬』
このネタを演じていなかったとしたら不思議なくらいだ。一之輔にはピッタリだと思うのだが。
全体は笑いの多い志ん生流。この八五郎はやたら威勢がいい。口やかましい田中三太夫にを叱りつけたり、殿の御前で酒が出ると浴びるように吞みご老女を婆さん呼ばわりするわ、若い御殿女中をからかうわ。終いには殿に都々逸を披露し「どうでえ殿公」と言い出す。
八のおっかさんが、初孫なのに孫の顔を見られないから、自分が代りに見て行くと言いながら泣きだすという場面もあり、八は泣き上戸でもあったか。
ひとつ気になったのは、大家の家で正装した八がいったん自宅に帰っておっかさんに挨拶してから大名の屋敷に向かうのだが、この意味が分からない。もし後半につなげるなら、ここでおっかさんが八に初孫うんぬんを伝言するのが自然だと思った。あと、八が妹の鶴におっかさんが孫が出来たと嬉しくて近所中に触れ回っていると語っていたが、それなら八が大家に呼ばれた時には既に鶴が出産したことを知ってなくてはいけなくなる。
一之輔にこのネタがニンなのか、終始気分良さそうに演じていた。
この日は勉強会ということで、後は明日の独演会を楽しみに。
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