日本が「監視社会」に
【盗撮】当人に知られないように,撮影すること。ぬすみどり。(「大辞林」より)
都市部に暮らしている人たちは日々「防犯カメラ」によって監視されているといっても過言ではない。いったい日本で何台ぐらいの監視カメラが設置されているのかさえ分かっていない。推計では2010年で約300万台ともいわれていて、しかも毎年38万台ずつ増えているという試算もある。街中に限らずコンビニ、オフィス、鉄道、公共施設など、様々な場所に監視カメラが置かれている。
監視カメラの先進国はイギリスで推定400万台が設置されているという。ロンドン市民は一日に300回撮影されているというのはよく引き合いに出されるが、東京など都市部に限ればそのロンドンに勝るとも劣らぬ監視社会になっているようだ。
防犯カメラと称しているが、実際には犯罪防止に効果が確認されていない。
これらのほとんどは私たちが知らずに撮影されているわけで、「盗撮」である。
一般に女性の下着姿などが小型カメラで撮影される盗撮被害が問題になり「盗撮法」を作る動きもあるが、こうした法律を制定しようと思うと監視カメラの撮影も問題になることから難しいと判断されている。
防犯カメラの映像はしばしば犯罪捜査に使われ、時にはカメラの映像を公開することにより容疑者が捕まることがある。
しかし防犯カメラで撮影されるのは犯人だけではない、私たちの行動も常に撮影されていることも忘れてはならない。
こうした映像がどう利用されているか、実態が不明なのだ。警察から提出の要請があれば、映像データを提出するのが一般的だ。入手した映像データはそのまま警察に蓄積される。問題はその先で、「情報業者」とよばれる人たちが入手しているケースがあるということだ。
月刊誌「選択」2014年7月号によれば、こうした「情報屋」はギブアンドテイクや金銭授受などにより警察から情報を得ているとしている。ある情報屋は、「国家機密、軍事機密以外で手に入らない情報はない」と豪語している。
彼らが入手しているのは映像データだけではない。携帯電話の通話記録、企業の顧客データ、銀行の取引データまで、ありとあらゆる情報が手に入るという。
もちろん非合法なので時に捕まる人間も出るがイタチゴッコになっているのが実情のようだ。
ニーズがあるところに商売は成り立つわけだ。
ではインターネットのデータはどうかというと、こちらはさらに完全な監視が行われている。
2011年の法改正で日本国内のプロバイダーは通信に関して3カ月のログ保存が義務付けられた。内容は発信者、受信者、経路の記録である。通信内容は対象外だが、事業者は保存し活用している可能性は大だ。
私たちがネットで買い物をすると、他のサイトを見ている時にいきなり購入した商品に関連した商品の宣伝が表示されることがある。これなど活用例といって良い。
自動車では公安委員会のNシステムは全国で約1500か所設置されており、自動速度違反取締装置は500か所ある。他に交通量読み取り装置であるTシステムがあり、本来は捜査には使われないことになっているが実際には犯人逮捕で使われた例があるという。
映像処理技術の進歩はめざましく、今では顔認証や歩行認証システムの開発など日進月歩だ。
問題は、監視カメラの運用ひとつをとりあげても、規制やガイドラインが整備されていないことだ。日弁連ではいくつか提言をしているが実現にいたっていない。
今や日本は「監視社会」「監視大国」になった。
自分の行動が常に他人から見られているという社会であることに注意せねばなるまい。
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