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2014/10/25

青春文学にして傑作ミステリー「沈黙を破る者」

メヒティルト・ボルマン(著)赤坂桃子(訳)「沈黙を破る者」(河出書房新社 2014/5/22初版)
Jpg1997年ドイツのハンブルグに住む医師が、実業家であった父親の遺品を整理しているうちに、ナチス親衛隊員の身分証明者と美しい女性の写真を見つける。いずれも身元が分からない。父の過去とどんなつながりがあるのか興味を抱いた医師は調査を始める。手がかりは写真に書かれた写真館の名前だ。
調べを進めるとその写真館はドイツとオランダの国境近くであるニーダーライン地方のクラーネンブルグの村にたどりつく。親衛隊の身分証明書と若い女性の写真の謎は、やがて第二次大戦中にこの村で起きた事件へと発展していく。

1939年、クラーネンブルグに住む高校生6人(男女3人ずつ)は幼い頃からの親友同士で、何か悩み事や問題があれば全員が協力して相談に乗る間柄だったし、永遠にそうした友情を育んでいこうと誓い合う仲だった。
しかしナチス政権のもと、戦争が近づいてくると次第に6人の間には微妙な亀裂が入り始まる。
女子の一人の父親はリベラルな医師でナチスに批判的だったことから親衛隊に拘引されて拷問を受け、医者の仕事も妨害され一家は住居まで追われてしまう。その一方で親衛隊に入隊した男子は村人を監視する役割を負わされる。
友情や恋愛感情との間で葛藤する若者たち。戦争の激化と敗戦という現実のなかでさらに大きな悲劇が生まれる。
親衛隊の身分証明書と女性の写真の謎が、やがて50年の時空を超えて6人の若者たちの運命に結びついて行く。

トリックもなければ優れた刑事の推理もない。あるのは静かな悲しみだけだ。
読後感は青春のホロ苦い想い出。
傑作ミステリーであり清冽な青春小説でもあるこの作品は、愛の物語でもある。

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コメント

読みました。
リンクさせていただきました、悪しからずご了承のほどを。

佐平次様
いつも貴兄の優れた書評を楽しみにしてます。

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