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2014/10/12

ノーベル賞・中村修二氏の発言への疑問

今年のノーベル物理学賞は青色発光ダイオード(LED)を発明した名城大学の赤崎勇教授、名古屋大学の天野浩教授の日本人2名と、米国人で米カリフォルニア大学教授の中村修二教授の3名が受賞した。
赤崎氏と天野氏は、青色発光ダイオードの原材料となる窒化ガリウムの結晶を作ることに成功し、青色発光ダイオードを世界で初めて開発した。だが当初は輝度が十分ではなく実用には耐えなかったが、中村氏は製法を改良し、より明るい青色発光ダイオードの量産化にメドを付けたものだ。
この中で受賞を受けての会見で中村修二氏は「すべてのモチベーションは(日本に対する)怒りだった」と述べた。この怒りの矛先は、かつて所属していた日亜化学工業社と日本の司法制度に向けられたものと推定される。

経歴をみると中村氏は1979年に日亜化学工業(以下、日亜と略す)に技術者として入社し半導体の開発に10年間携わった。その後、青色LEDの製造装置に関する技術開発に成功、実用化につなげたとある。
日亜は1993年に世界で初めて青色LEDの製品化を発表、企業の業績を伸ばすこととなったが、当時中村氏が受け取った報奨金は2万円だった。
中村氏は1999年に日亜を退社し、2年後の2001年に職務発明の対価をめぐって訴訟を起こした。1審では日亜側に200億円の支払いが命じられたが、2005年に高裁判決で和解し、中村氏には約8億円が支払われたという。
8億円は職務発明の対価としては巨額と思えるのだが、中村氏は和解成立後の会見で「日本の司法制度は腐っている」と不満を露わにしていた。

これに対する日亜の見解だが、中村氏との和解に至った判断として「今後、中村氏との間で起こるであろう紛争が一気に解決され、それに要する役員・従業員の労力を当社の本来的業務に注ぐことができる点や、将来の訴訟費用を負担しなくて済む点を考慮した」と説明していた。
和解成立時に発表された社長のコメントには「特に青色LED発明が一人でなく、多くの人々の努力・工夫の賜物である事をご理解いただけた点は、大きな成果と考えます」としていた。
同社は今回の中村氏の受賞に際して次のコメントを発表している。
「日本人がノーベル賞を受賞したことは大変喜ばしいことです。とりわけ受賞理由が、中村氏を含む多くの日亜化学社員と企業努力によって実現した青色LEDであることは、光関連技術の日亜化学にとっても誇らしいことです。今後とも関係者各位のご活躍をお祈り申し上げます」
つまり青色LEDには多くの従業員が係わっていて、それらの総合的な力によって工業化が成功したと主張しているわけだ。

一般的に企業の研究開発テーマは会社側が決める。なかには研究者からのテーマアップもあるが、採用するかどうかを決定するのは企業だ。なぜなら研究開発に必要なモノ、ヒト、カネは全て会社が負担するからだ。
企業の研究開発の中で工業化に成功するのはわずか数%といわれている。研究に失敗しても担当者の責任が追及されたり、かかった費用の弁済を求められることはない。成功すれば評価され、それなりの表彰や報奨が与えられ、時には昇進に結びつくこともある。
つまり企業の研究者はノーリスクなのだ。であれば、成功した時の報酬も一定の限界があるのは止むを得ぬことだろう。
もし企業が開発に成功した際に担当者の一人だけに数億円の対価を支払うようになれば、他のスタッフや他部署の協力が得られなくなる。
世の中は利益とリスクのバランスによって成り立っている。巨大な利益を求めるなら自らリスクを負わねばならない。と、私は思っている。リスクをおかさずに大きな利益を手に入れたい、そんなオイシイ話はこの世の中には転がっていない。

中村氏は、当時の日亜社長だった小川信雄氏に青色LEDの開発を直談判し、開発費の支出と米国留学の許可を取り付けた。それによって青色LEDの製造装置に関する技術開発に道を拓いたようだ。
もちろん、中村氏の優れた能力と開発への情熱があったればこそだが、企業の研究者としてはかなり恵まれていると言っていいだろう。
その結果、中村氏はノーベル賞を受賞し、日亜は企業業績をのばしたとすれば、お互い大いにハッピーな結果になったわけだ。
それでもなお「怒りだった」と語るのは、ご本人の性格上の問題ではなかろうか。
その「怒り」が仕事の推進力になっていたとしたら、それはそれで結果オーライだっとというべきか。

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コメント

他の研究者たちが数百億の研究費を使っても成功しなかったものを、僅か三億の研究費で成功させ、その後の企業の利益が数百億以上であれば、それに応じた報酬を得るのは当然かと。
謙虚な研究者は自殺に追い込まれたりしますしね。。。

投稿: 笑以痴 | 2014/10/12 14:53

笑以痴様
職務発明に関しては、ほとんどの企業で発明者から発明の権利を会社が継承することを勤務規定などで定めています。
中村氏もそれは承知で入社したはずです。
それが不満なら自分で起業するか、発明を企業に継承する義務のない研究機関を選択すれば済む話ではないでしょうか。

投稿: ほめ・く | 2014/10/12 17:22

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