« 【書評】「ニクソンとキッシンジャー」 | トップページ | 「江戸の四季」 »

2014/10/08

「アベノミクス」は何をもたらしたか

国際通貨基金(IMF)は10月7日発表した最新の世界経済見通しで、今年の日本の経済成長率予想を0.9%とし、7月時点から0.7ポイント引き下げた。先進国の中で最も大きな下方修正となった。
3日前に自転車を買いかえたが、近くの自転車屋の主人が言うには、この9月の落ち込みは50年間商売をしている中で最悪だったそうだ。この店主は東京の自転車組合の役員をしているが他店も同様で、他の業種も似たりよったりだと言っていた。当初は消費税増税のせいかと思っていたが、これは違うと。

毎月勤労統計調査(毎勤統計)でみた実質賃金は、昨年7月から前年同月比で1-2%前後のマイナスを続けていたが、ことし4月に3.4%のマイナスと一気に低下幅が拡大した。5月も3.8%、6月も3.8%と低下を続けていて、この丸1年連続して実質賃金は低下したことになる。
国税庁は9月末に、2013年分の「民間給与実態統計」を発表した。民間企業の従業員が1年間に得た平均給与は413万6000円で、これは1989年の水準とほぼ同じ。平均給与はこの四半世紀ほとんど変化なしなのだ。
総務省が9月30日発表した8月の3人以上世帯の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は28万2124円となり、物価変動を除いた実質で前年同月比4.7%減となった。消費税率が引き上げられた4月以降、5カ月連続のマイナスだ。依然として消費の回復が遅れていることが鮮明になった。
給与が下がってるんだから消費が落ちるのは当たり前のことで、「アベノミクス」のメッキが剥がれてきたことを示すものだ。

安倍政権はもっとも気にしているのは株価の行方にあると言われている。
今年4月に内閣府が「これまでのアベノミクスの成果について」という文書を出していたが、この成果の第一番に上げたのが株価の上昇だった。「日経平均株価は、アベノミクスの効果が着実に現れる中で、大幅に上昇」と書かれている。確かに安倍政権が発足した2012年12月から2014年4月の間に平均株価は約50%上がっている。同時期の米国のそれと比べても2倍の上昇率だ。
これが実態経済を反映したものであれば結構なことだが、実際には日銀の大幅な金融緩和と円安誘導によるものだ。
さらには日銀による株式の買い支えという露骨な手法も一因である。
例えば日銀は、8月第一週だけで924億円分の株を買い入れた。アベノミクスの失敗が取り沙汰されて株が下落した時期で、日銀が買い支えなければ株価はもっと下がったと思われる。
かくして日銀は、東証の株式の時価総額の1.5%にあたる7兆円分を保有し最大の日本株保有者となった。
総裁を黒田にすえかえ、安倍のいう通りに動かしている効果だ。
安倍政権は日銀だけでなく、国民年金基金にも株式を買う割合を増やすよう命じ、株価のテコ入れに余念がない。

「アベノミクス」変じて「カブノミクス」である。

しかし株価は生き物だ。実態経済が伴なっていなければいずれは下落することは過去の例が示している。
「山高ければ谷深し」で上昇が急なほど下落も早い。
儲かった儲かったと皆が浮かれていたバブル期、崩壊したとたん高値で売り抜けた一部を除くほとんどの人が大損したのは記憶に新しい。
大幅な下落に見舞われた時は、年金基金の危機を招く。
「円安誘導」も当初は輸出が増えて景気が上昇するはずだった。ところが製造業の海外移転により効果は現れず、逆に輸入価格の値上がりが貿易収支の悪化を招いている。
財政出動の大盤ぶるまいで、これ以上赤字を増やせない法定財政上限に達している。
民主党政権の時は、何かというと財源の裏付けを求めていたメディアも、今は音なしの構え。安倍政権になってから、それまでの財政再建の話はどこ吹く風だ。

かくして「アベノミクス」は円を弱くし、日本の財政再建を遠のかせ、国民生活を悪化させてしまった。

|

« 【書評】「ニクソンとキッシンジャー」 | トップページ | 「江戸の四季」 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/82117/60442946

この記事へのトラックバック一覧です: 「アベノミクス」は何をもたらしたか:

« 【書評】「ニクソンとキッシンジャー」 | トップページ | 「江戸の四季」 »