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2014/11/06

「通し狂言 伽羅先代萩」(2014/11/4)

11月歌舞伎公演「通し狂言 伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」四幕六場
日時:2014年11月4日(火)12時
会場:国立劇場大劇場
<  主な配役  >
坂田藤十郎/「御殿」の政岡
中村翫雀/八汐
中村扇雀/「竹の間」の政岡
中村橋之助/仁木弾正
片岡孝太郎/沖の井
坂東彌十郎/荒獅子男之助・渡辺外記左衛門
中村東蔵/栄御前
中村梅玉/足利頼兼・細川勝元

国立の11月歌舞伎は「伽羅先代萩」の通し。
この芝居は江戸初期の寛文年間に起きた仙台伊達家のお家騒動「伊達騒動」を題材にしたもので、室町時代に置き換えて登場人物もその当時の人名を使用している。有名な事件だったので、当時の観客は誰が誰を指しているか直ぐに分かったと思われる。
芝居のタイトルにある「伽羅」は、藩主・伊達綱宗が「伽羅(きゃら、沈香)」で作った下駄をはいて吉原に通ったという挿話から名付けたもの。
この芝居はまた落語にも縁がある。落語『七段目』で芝居好きの若旦那が帰り道、犬を踏まえて「あーら、あやしやな」と言うが、これは「床下」の場での荒獅子男之助のセリフを借りたものだ。
落語『高尾』では、仙台公に身請けされた高尾太夫が、意にそわないからと船中で切られるストーリーだが、これも「伊達騒動」の発端となった仙台3代目藩主・伊達綱宗の挿話から採ったもの。また落語『反魂香』もこの挿話が元になっている。
いかにこの芝居が人々から親しまれていたかが分かる。

この芝居の見所は次の通り。
「花水橋」では、放蕩に耽る奥州五十四郡の大守・足利頼兼が廓の帰りに刺客たちから襲われが、舞を舞うごとく悠然と振り払う。 
「竹の間」では、頼兼の隠居後に跡継ぎとなった幼君鶴千代を我が子の千松とともに守る乳人政岡に対して、彼女を追い落とそうと謀反を企む八汐との対決が見せ場。
「御殿(奥殿)」は義太夫狂言で、栄御前と八汐の若君毒殺計画の犠牲となり殺害される千松を、母正岡はその死を眼前にしながら耐える肚芸と、怒りで八汐を刺殺して一人になって初めて我が子の死を嘆くクドキが見どころ。
「床下」では、忠臣・荒獅子男之助の勇壮な荒事と、悪臣・仁木弾正の花道の引っ込みが眼目。 
「対決」では、裁きの場面で当初は悪臣方が勝訴するかにみえるが、そこへ管領の細川勝元が颯爽と現れ、鮮やかに逆転の評決を行う。勝元の理路整然たる名裁きが見どころ。
「刃傷」では、仁木が忠臣の渡辺外記左衛門へ刃傷に及ぶが、忠臣たちに斬られ壮絶な最期を遂げる。激しい立ち回りの場面が見どころ。最後は勝元から外記へお家安泰が告げられて終幕。

この芝居の見どころとして付け加えなばならないのは子役の活躍だ。幼君・鶴千代と正岡の実子・千松の二人は出番が長いしセリフも多い。ただ可愛いだけでなく演技力も求められる役柄だ。Wキャストなのでこの日の配役は不明だが、二人ともしっかりとした演技をしていた。
もう一つは「床下」で男之助から追われるネズミで、まるで体操の床運動のような動きを披露する。
この芝居は荒事や立ち回り、裁き、愁嘆場といった要素の他に子どもと動物を登場させ、観客を喜ばせる仕掛けを作っている。 
当り狂言というのは、それなりの理由があるのだ。

藤十郎が足元が少々おぼつかなく見えたのは年齢のせいか。
役者では梅玉の演技が光る。凛としていて風格があり、この人が出て来るだけで舞台が華やかになる。
他に橋之助が気分よさそうに悪役・仁木を演じていた。
本筋には関係ないが、毎度のことながら国立の歌舞伎は大向うの掛け声が良くない。あれでは芝居が引き立たない。なぜだろか?

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コメント

大向うの方達は商売ではないのでなんですが…、芝居と役者の間を熟知していないと、掛け声で芝居を台無しにする事もありますね。(科白に被せて屋号を叫んだり、むやみやたらに「待ってました!」を連呼したり。歌舞伎座でも時折あります。)女性の掛け声も(贔屓の役者や噺家に声をかけたくなる気持ちはわかりますが)やめて頂きたいです。

林檎様
歌舞伎の「大向こう」は芝居の一部だと思うんです。先ず狂言に精通してないといけない。タイミングが大事なのと、かすれ声や女性は遠慮して欲しいです。
国立の場合は、それに相応しい観客が少ないんでしょうね。

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