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2014/11/07

「菊之丞・白酒 二人会」(2014/11/6)

ぎやまん寄席「菊之丞・白酒 二人会」
日時:2014年11月6日(木)18時45分
会場:湯島神社参集殿
<  番組  >
前座・林家なな子『桃太郎』
古今亭菊之丞『死ぬなら今』
桃月庵白酒『首ったけ』
~仲入り~
桃月庵白酒『時そば』
古今亭菊之丞『百川』

鼻かぜ気味だったので昼過ぎに薬を飲んで横になったら熟睡してしまい、開演時間ぎりぎりに会場へとびこんだ。この会は自由席で前売り完売だったので、後から2列目の席についたが、高座があまり良く見えなかった。
会場で、山川出版社『落語日和』の特別販売をしていた。アタシは落語関係の本というのはメッタに買わないが、菊之丞のCD付きで1500円という価格につられ買ってしまった。パラパラっとめくって見たが、「落語史をつくる同時代の落語家たち」という章で22人の現役落語家が写真と解説入りで紹介されているが、この人選には首をかしげる。今の落語界を知ってる人が編集しているんだろうか。少なくとも馬石が入っているのに白酒が落ちているのは本人としては面白くなかろう。購入者には終演後に菊之丞がサインしてくれた。これも初体験だった。
白酒が相変わらずマクラで小渕優子と松島みどり両大臣の辞任を話題としてとりあげていた。楽屋では小渕については同情論が強く、反対に松島への反発が大きい。川柳川柳などは、あんなヤツ絶対に辞めさせなくっちゃと息巻いていた。やっぱり顔でしょうね。ここでSMバーを持ち出すなんて自民党は上手い。その宮沢洋一経産大臣が川内原発をカワウチ原発と言い間違えた。まさに適材適所。これで国民が政治に目を向けるならそれで良いのでは、と言ってたが、果たしてどうか。

菊之丞『死ぬなら今』、地獄の沙汰も金次第、ケチでひと財産築いた男がいざ死ぬ時に、このままじゃ地獄に落ちるだろうからと棺桶にたっぷり小判を詰め込んであの世へ。閻魔の前へ引き出されると今までの悪事が露わにされる。危うく地獄行きになるところを閻魔大王を始め周囲の鬼たちにまで金をばらまき、そのまま極楽へ。地獄の面々は持ちなれぬ金を持ったもんだから仕事もせず遊びほうけ。これを知った極楽が地獄の関係者一同を収賄の罪で全員牢屋へ入れてしまう。おかげで地獄はもぬけの空。だから、死ぬなら今。
彦六の正蔵が得意として、現在は小朝や当代の正蔵が高座にかけている。上方の『地獄八景』みたいに演者がそれぞれ独自のギャグを入れて聴かせる噺。菊之丞は地獄が高度にIT化されていたり、向こうの寄席では談志がまだ前座をつとめていたりといったギャグを入れていた。このネタはニンだ。

白酒『首ったけ』、もう白酒の十八番といっていいだろう。典型的な廓噺で志ん生の一手販売だったのが先代馬生経由で白酒に伝わったものと思われる。吉原で「紅梅さんのいいひとの辰つぁん」の筈が、その紅梅が待てど暮らせど部屋に来ない。来ないばかりか隣の部屋で田舎大尽相手にどんちゃん騒ぎ。怒って帰ろうとするのを紅梅がとめるが言い争いになり、しかも間に入った若い衆のとりなしが逆に火に油をそそいでしまう。ついに店を飛び出した辰だが、大引けすぎとあって家にも戻れず、仕方なく向かいの店にあがる。店の人間は最初は断るが、辰がこれからは紅梅の店には上がらないという約束をとりつけ辰をあげる。敵娼(あいかた)に出た花魁の若柳が前から辰にぞっこん。渡りに船とすっかり二人は意気投合し、それからは毎晩辰が通ってくるようになる。そうは言っても職人なので金が続かずしばらくは吉原にご無沙汰。ある日、吉原に火事が起き辰も直ちに駆けつける。ひょいとおはぐろどぶの中を見ると首まで浸かって溺れかけている女がいる。助けてやろうと手を伸ばすと、なんと紅梅。
「なんでえ、てめえか。ざまあみやがれ。てめえなんざ沈んじゃえ」
「辰つぁん、そんなこと言わずに助けとくれ。今度ばかりは首ったけだよ」
白酒は廓噺が得意で何を演らせても上手い。女郎や若い衆がみないきいきと描かれている。このネタも白酒によって蘇った感がある。

白酒『時そば』、マクラで、浅草演芸ホールの団体客80人が、11時に来て12時半に出ていってしまったという。こういうのは演者も他の客も迷惑だろう。あと、寄席で客の反応の良い日と悪い日があると言ってたが、アタシの経験では前座と二ツ目の出来不出来が後に大きく影響するような気がする。最初の二人がダメだと客もなかなか立ち直らない。
翌晩のそば屋をどう描くかが演者の腕の見せどころで、白酒の場合は何日も客が来ず、家では子どもが飢えかけているという貧乏くさいそば屋が登場する。不景気なことを言っては愚痴をこぼし、オーダーしても一向にソバが出来てこない。今から炭に火をおこすという。早くしてとせかすと冷たいソバが出てくる。ソバは団子状にくっついていてまるで雑煮。その代り竹輪は薄く切っている。訊けば包丁で切ったと、「その技術をなぜソバに活かさない!」。
白酒らしい快調なテンポで楽しませていた。
4文余計に払ってしまうが、それでそば屋の子どもが飢えずに済むならこれは善行。

菊之丞『百川』、菊之丞らしい手際の良さで、最後を締めた。

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コメント

辰っつあん、もてるんですよね。
イイ男なんだろうな。

投稿: 佐平次 | 2014/11/07 11:22

佐平次様
辰つぁんは良い男です。吉原の火事と聞いて馴染みの花魁を助けるべく駆けつけるんですから。紅梅は大事な客を逃がしました。

投稿: ほめ・く | 2014/11/07 12:22

>前座と二ツ目の出来不出来
このお話、とてもよくわかります。
寄席はリレーの劇。
前のネタとかぶらないようにという配慮も、客席の様子への配慮も必要。
然るべき適応力を持たないと落語家はやっていけないんですね。

投稿: 福 | 2014/11/09 10:37

福様
ご存知のように寄席は開演前に前座を上げるのでプログラムにも載せないのですが、この出来が良いと後が活気づきます。不出来で冷えた後で二ツ目がカバーできないと冷却期間が長引いてしまう傾向になります。
昨日の鈴本の例では、まあまあ-温-冷-温、で以後は充実していました。
組み合わせとか自分の役割とかが寄席では大事なんでしょう。

投稿: ほめ・く | 2014/11/09 18:40

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