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2014/11/01

2014落語一之輔 一夜(2014/10/31)

「2014落語一之輔 一夜」
日時:2014年10月31日(金)19時
会場:よみうり大手町ホール
<  番組  >
三笑亭夢吉『附子(ぶす)』
春風亭一之輔『蝦蟇の油』
春風亭一之輔『青菜』
~仲入り~
春風亭一之輔『文七元結』(*ネタ出し)

一之輔の独演会だがタイトルに「一夜」とあるのは、今年は1回だけだが来年は2回、再来年は3回・・・と増やしていって5年目は5回公演となるらしい。合計15回。主催者の読売新聞社とサンケイリビング新聞社はこれから5年は一之輔の人気が鰻登りに上がっていくことを見通しているわけだ。落語家冥利に尽きるというもの。プログラムに讀賣の長井好弘が「5年後には5日どころか1ヶ月連続へとグレードアップしているかもしれない」と書いている。巨人はCS敗退したが讀賣は鼻息が荒い。
一之輔もマクラで新聞は讀賣です、みたいなことを言って、朝日名人会にも出ます。実は明日赤旗まつりに出るんです。節操がないので、と。この会場では5月にオープン記念として「至高の落語」という会があって、小三冶と三三と私が出たんですが、小三冶が「至高はないんじゃないの」て言ってた。何か理屈をいわないと気が済まない人だ。黙って金貰っとけばいいのに、と。まるで白酒だね。
白酒にしても一之輔にしても、もはや小三冶は雲の上に人じゃなくライバル視なんだろうね。芸人なんだから、そのくらいの心意気でやってくべきなんだろう。
よみうり大手町ホール、初めて入ったが立派な会場だ。立派すぎて落語会にはどうかな。アタシは節操がないから会場を選ばないけど、本来の落語を演じる小屋というのはどこかウラサビシイところがある方がいいと思う。こことか日経ホールなんていうのは何か落ち着かない。

夢吉『附子』
これで「ぶす」と読ませる。辞書で調べたらこうなっていた。
ぶし【付子・附子】トリカブトの塊根。アコニチンそのほかのアルカロイドを含む。劇薬。身体諸機能の衰弱・失調の回復・興奮に,また鎮痛に用いる。烏頭(うず)。ぶす。
ぶす【付子・附子】①「ぶし」に同じ。 ②〔① の毒が恐ろしがられたことから〕いとうべきもの。きらいなもの。
ぶす【附子】狂言の一。外出する主人に毒薬附子の番を命じられた太郎冠者・次郎冠者は,それを砂糖と見破ってなめてしまう。そのあとで主人の大切にしている掛物を破ったりして,主人が帰宅するや,貴重なものを損じたから死のうと思って毒を食べたと言い訳する。
つまりこのネタは狂言の『附子』を落語にしたものだという事が分かる。桂枝太郎の新作とのこと。
因みにお馴染みの「ブス」は女性に対する軽蔑語で、語源は「無様なスケ」から来ているとか。
ストーリーは、狂言の筋通りで、太郎冠者・次郎冠者が小僧の定吉と飯炊きの権助に、砂糖が蜜に、それぞれ置き換わっていた。定吉に「面従腹背」、権助には「言いなり」というキャラを持たせ、主人と番頭が「附子は猛毒だから絶対に空けてはいけない」と命じて出かけるが、定吉主導で権助と二人で附子を舐めたところ中身は蜜、結局全部たいらげ、おまけに店の掛け軸(弘法大師筆「にんげんだもの」)や壺を壊してしまう大暴れ。怒る旦那に「他人の不幸は蜜の味」でサゲ。
会場がアウェイだったせいか熱演の割にはお客の反応はいま一つだったが、夢吉らしいヒネリもあって面白く聴かせていた。

春風亭一之輔『蝦蟇の油』
春風亭一之輔『青菜』
2席続けて。『ガマ』は先日の三田落語会の時とマクラを含めて同じ。
『青菜』は「植木屋さん、ご精が出ますな」で会場がどよめくほどのお馴染みのネタなので省略。
この会は毎年この時期に開催するそうで、そうなると秋の季節の因んだねたばかり演ってられないということか。

一之輔『文七元結』
仲入り前にこれが予めネタおろしであることを告げていたので、客席にも緊張感が走る。
名だたる名人上手が手掛けた噺で、何となくこれが出来れば一人前といった位置付のネタでもある。
マクラで自分は博打はやらない、落語家になった自体が博打みたいなもんだからと語っていたが、そうなら一之輔は大当たりを引いたわけだ。
全体としては志ん朝の演出をベースにして、志ん生や圓生、彦六の正蔵らのいいところを採りいれた感じの演じ方に見えた。
長兵衛が自宅に戻り娘お久が帰ってこないと女房に告げられる場面で始まるが、この時の女房のセリフにはもう少し緊迫感が欲しかった。志ん朝の高座では女房の最初のひと声で大変なことが起きたことを予感させている。
二人が心配しているうちに、佐野槌の番頭の藤助が訪れ、お久は佐野槌にいると告げ、女将さんから長兵衛絵に店へ来るようにと伝えられる。長兵衛が藤助に「どちらさまでしたっけ?」と訊く場面では彼のルーズな性格を示している。
長兵衛に着物をはがれた女房が腰巻をしていたのは志ん朝とは異なる。志ん朝では腰巻を洗ってしまい代りに風呂敷を巻く。長兵衛は八ツ口のあいた女の着物姿で吉原へ向かう。
佐野槌に着いた長兵衛は、女将からいきなり左官屋から博打打に商売替えしたのかと言われて恐縮する。女将は昨晩お久が店に来て、父親の借金の返済のために私を買ってくれと頼んだ経緯を語り、長兵衛を叱る。
その後、来年の大晦日という期限を切って50両の金を長兵衛に貸す。その代り、返済が一日でも過ぎたらお久を店に出すと告げる。ここまで言われて初めて長兵衛は博打をやめて真面目に働く決心をする。
お久が長兵衛に母親に乱暴しないでと泣いて頼むシーンは、お涙頂戴的な演出で賛成できない。母親が継母であるとしたのは圓生譲りか、あまり必要性はないと思うが。それを受けて長兵衛がお久に謝るシーンも演出過剰のように見えた。ここをあっさりと演じた志ん朝の演じ方の方が余韻が残る。
吉原を出て吾妻橋までの道中の描写は正蔵流。
橋から身投げしようとする文七を助ける場面は、演じ手の最大の見せどころ。50両掏られて主人に顔向けが出来ないから死ぬという文七、彼を助けるために大事な50両を渡すかどうか迷う長兵衛。縁者はいないのか、飛び込むなら俺が見えなくなってから飛び込めとか、50両をまからないかとか、散々迷いに迷う長兵衛。この50両は娘を吉原に売った金だ。娘が悪い病を引き受けないように朝夕神棚に拝んんでくれと頼む長兵衛、ここは志ん朝流。
文七が鼈甲問屋・近江屋の店に戻ると、50両は掏られたのではなく碁に夢中になった文七が掛取りに行った水戸様の屋敷に置き忘れたものと判明、既に金は店に届いていた。文七は混乱状態になり、大神宮様と金毘羅様とではどちらの方が御利益があるかとか、17の娘が吉原に売られるとか口走る。ここは一之輔独自の演出。
翌日、近江屋の主人と文七が長兵衛宅を訪れる。返金の50両は長兵衛は最初は渋るが女房からせっつかれて受け取り、お礼にと差し出された酒2升の切手に50両よりこっちの方が有り難いと喜ぶ。
そして酒の肴は、佐野槌から身請けされて戻ってきたお久。歓喜の親子3人。

一昨日の会では、一之輔は『文七元結』というネタはどうも自分の性に合わないと語り、ネタ下ろしの稽古に腐心してるともいってたが、細部にはいくつか欠点は見られたものの全体としては上出来の高座だったと思う。特に山場の吾妻橋の場面は、長兵衛の娘を思う気持ちと人助けの間に揺れる心理、男気が十分に描かれていた。
初演でこれだけの高座を見せられるというのは、一之輔の芸の高さを示すものだ。

蛇足ながら、1席目の『ガマ』で酔ったガマの油売りが客のヤジに、商売人のやることに素人がいちいち口を出すなと言うセリフがある。半分は一之輔自身の言葉だと思う。一昨日も同じことを言っていた。しかし、こういうセリフはあまりクドクならない方が良い。お客によってはいい感じを持たないと思われるからだ。
好漢自重すべし。

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コメント

夢吉さんの亭号が間違っていますよ。

投稿: お節介 | 2014/11/30 21:23

お節介様
有難うございます。
早速訂正いたしました。

投稿: ほめ・く | 2014/11/30 22:04

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