「消費税増税」と「財政再建」とは無関係
財政再建のためには消費税増税は待ったなし、あるいは高齢化にともなう社会保障費の増大で消費税増税は避けられないという宣伝が盛んに行われています。新聞各紙をはじめとする大手メディアもこの論調に揃って同調して、この点だけは朝日も産経もありません。
でも、本当にそうなんでしょうか。
当ブログでも過去に何度か触れてきましたが、事実は違います。
消費税が導入されて以後の消費税率と法人税率の比較を見てみましょう。
<消費税率の推移>
1989年 3%
1997年 5%
2014年 8%
<法人税率の推移>
1989年 40.0%
1990年 37.5%
1998年 34.5%
1999年 30.0%
2012年 25.5%
このように消費税の導入と期を同じくして法人税率の大幅な引き下げが始まりました。
この結果、法人3税(法人税、法人住民税、法人事業税の合計)は1989年の29.8兆円から現在は17.6兆円まで下がっています。
ある試算によれば、1989年から現在までの累計で、法人税引き下げによる減収分が255兆円で、対する消費税の税収は282兆円ということです。
大まかに言えば、私たちが支払った消費税の大半は法人税の減税に食われてしまったという事になります。
だからいくら消費税を増税してきても財政状況は悪化するし、社会保障も一向に改善されないわけです。
では、これからはどうでしょう。
政府の方針によればこれから法人3税の税率をさらに10%程度引き下げたいということです。消費税を今後10%に増税しても、結局はこれまで通り法人税減税の原資として使われてしまい、財政再建も社会保障充実も出来ないということになるでしょう。
もうひとつ付け加えれば、法人税と消費税とは同じ税金でも全く性質が異なるということです。
法人税は次のように算出されます。
益金=収益 - 益金不算入 + 益金算入
損金=費用 - 損金不算入 + 損金算入
所得=益金 - 損金 (ただし益金>損金の場合)
税額=所得 × 税率
以上のように税法上の「所得」は会計上の「利益」とほぼ同じですから、利益に対して課税される仕組みです(もちろん企業は様々な手口で税金逃れをしていますが、それは別にして)。
一方、消費税というのは人間が消費する際に課税される、つまり人間が生きてゆくためのあらゆる場面に課税されます。金持ちも貧乏人も、老人も子供も。法人税と異なり、家計が赤字でも関係ありません。
これは「富の再分配」という税性の持つ役割に反するものです。
消費税増税を全ての前提に置いているような宣伝、論調には容易に屈しないことです。
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