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2014/11/08

歌舞伎の「大向う」あれこれ

先日、国立劇場の歌舞伎での「大向う」について触れましたが、思いついたことがありましたので付記します。歌舞伎通でない人間が書くのはおこがましいのですが、ご寛恕のほど。
「大向う」というのは客が舞台に向かってかける掛け声のことですが、一般に舞台から見て大向うの席、歌舞伎座でいえば3階席後方や幕見席から声をかけるので、「大向う」という言い方をします。
誰でも掛け声をかけて良いのですが、「大向う」は芝居を引き立てるため、時には芝居の一部としてかけるので、決まり事やマナーを守る必要があります。因みに私は一度もかけた事がありません。
かける場所は後方の席から、タイミングは役者が花道に登場する、引っ込む、見得を切る、幕切れなどの場面で舞台が無音の時が原則です。女性はかけられない、掛け声は明瞭に短く、といった辺りが注意点でしょうか。
掛け声は、団十郎なら「成田屋」、菊五郎なら「音羽屋」、吉右衛門なら「播磨屋」、幸四郎なら「高麗屋」、猿之助なら「澤瀉屋」、勘三郎なら「中村屋」、歌右衛門なら「成駒屋」、三津五郎なら「大和屋」、仁左衛門なら「松嶋屋」、藤十郎なら「山城屋」など、役者の屋号をそのままかける場合が圧倒的に多いです。
屋号の上に「大(おお)」などを付ける場合もあります。初代中村吉右衛門なら「大播磨」、3代目中村時蔵なら「時播磨」(当代の時蔵は「萬屋」)といった具合に、このケースでは「屋」は取ります。但し團十郎を「大成田」とか、勘三郎を「大中村」とは言いません。これも決まり事です。
よく落語家が、役者は屋号、落語家は地名と言いますが、役者でも住んでいる地名でかける例があります。有名なところでは2代目尾上松緑の「弁慶橋」「紀尾井町」があります。いい所に住んでいたんですね。
他には「O代目」という掛け声もあり、例えば7代尾上菊五郎なら「七代目」です。これも例外があり、「六代目」(6代目尾上菊五郎を指す)と「九代目」(9代目市川團十郎を指す)の掛け声は遠慮して避けることになっています。
役者の本名でかけるのを見たことがあり、2代目市川猿之助に「喜熨斗屋(猿之助の名字が喜熨斗)」とかけた人がいました。
後は一般的な「待ってました」「日本一」「たっぷり」なんて掛け声があります。

変ったところでは、2代目尾上松緑に「七代目」という掛け声がよくかかっていました。これは6代目尾上菊五郎が亡くなってしばらく名跡が空いていたのと、松緑の芸風が6代目によく似ていたので、早く菊五郎を襲名して欲しいというファンの切実な声だったんでしょう。
今まで聞いたなかで一番傑作だと思った「大向う」を紹介します。
演目は『籠釣瓶花街酔醒』で、その「吉原仲之町見染の場」でした。主人公の佐野次郎左衛門が吉原で花魁道中の八ツ橋を見かけ、一目ぼれをしてしまう場面です。ウットリ見とれる次郎左衛門役は初代中村吉右衛門。
そこで大向うから「吉ちゃん、惚れたか!」
場内は爆笑でしたが、うまいタイミングだったので芝居も盛り上がりました。
こういう掛け声は「ちゃり」と呼ばれ一歩間違えば芝居を壊しかねないので、よほどの見巧者でないと無理です。

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コメント

歌舞伎座では、歌舞伎座の半被を着た大向うの方達がいらっしゃいますが、明治座や新橋演舞場などに役者が分散して芝居をしていますと、熟知されている大向うの方も少なく国立のような事があるのかも知れませんね。

林檎様
歌舞伎座だけはプロ級の人が眼に付きますが、他の劇場は少ないんでしょうね。国立はゼロかも知れません。

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