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2014/11/14

「ご臨終 Vigil」(2014/11/13)

『ご臨終 Vigil』
日時:2014年11月13日(木)14時
会場:新国立劇場 小劇場 THE PIT
脚本:モーリス・パニッチ
翻訳:吉原豊司
演出:ノゾエ征爾
<  キャスト  >
中年男:温水洋一
老婆: 江波杏子

新国立劇場の演劇企画「二人芝居 ─対話する力─」の第二弾は、カナダの現代劇作家モーリス・パニッチの代表作のひとつ『ご臨終』を上演。
ストーリーは。
一人暮らしの叔母からこれまた一人暮らしの甥へ「もうじき死ぬ」という手紙がくる。取るものもとりあえず男は勤め先の銀行を休み、叔母の元へかけつける。男は葬儀屋との打ち合わせ、お棺や墓石の手配など手際よく進めるのだが、叔母は一向に死ぬ気配がない。それどころか叔母は男とまともに口をきいてさえくれない。男は叔母の身のまわりの世話をするが叔母はベッドでただ編み物をするだけ。男は仕方なく、自分の生い立ちや考えているこことを独り言のようにして叔母に話す。
かくして二人の奇妙な共同生活は1年を過ぎてゆき、思いがけない事実が明らかになるが・・・。

実に変った芝居だ。
①二人芝居なのにセリフは男がひたすらしゃべるだけ。女のセリフは二言三言で後は専ら表情、特に目玉で演技する。
②劇中に暗転が35回、ということはこの芝居は36場ということになる。短いのになると数秒だ。観客からすると映画を見てるような気分にもなる。
テーマはズバリ「人間の死」だ。「死」だけはどんな人間にも平等に訪れるし避けることができない。それだけのどういう死を迎えるか、あるいは迎えたいかは個人の大きなテーマでもある。
作者のモーリス・パニッチはこう言う。
「誰かがその人生を終えようとしているのを助けるのは、難しく、手間ひまがかかり、悲しい作業です。でも、人生は誰しも威厳をもって優雅に人生最後のお荷物をおろさねければなりません。無視されたり追い立てられたりすることなく・・・・・。」
そう、「威厳をもって優雅に死を迎える」、これこそがこの芝居を通して作者が伝えたかったことであり、終幕のジワっと起きる感動に結びつく。

主演の温水洋一が素晴らしい。およそ2時間半の舞台を一人で、それも立て板に水の如くセリフをしゃべる。女性が化粧していると「もうじき葬儀屋がやってくれるよ」と言ったり、クリスマスのプレゼントに墓石を贈るとして「まだ名前を入れてない」と言ったりとブラックユーモアたっぷりだ。しかし常にその底には悲しみを背負っている。彼がどんな面白いセリフを言おうとふざけた動作をしようと、その背中が悲しいのだ。このキャスティングは成功した。欠点をあげれば、役の年齢より老けて見えることか。
江波杏子も男のセリフに目玉だけで反応するという難役を見事にこなしていた。終盤で男の背中をそっと触るしぐさは慈愛に満ちている。男とは反対にやや若目の老婆ではあったが。
これは現代における聖母子の物語りともいえる。

公演は24日まで。

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コメント

突然失礼します!今日「ご臨終」を観てきて大泣きしました。そして、どういう舞台だったのか?と改めて検索していてこちらにたどり着きました。
===
作者のモーリス・パニッチはこう言う。
「誰かがその人生を終えようとしているのを助けるのは、難しく、手間ひまがかかり、悲しい作業です。でも、人生は誰しも威厳をもって優雅に人生最後のお荷物をおろさねければなりません。無視されたり追い立てられたりすることなく・・・・・。」
そう、「威厳をもって優雅に死を迎える」、これこそがこの芝居を通して作者が伝えたかったことであり、終幕のジワっと起きる感動に結びつく。
===
と書かれている事、本当にそうでした。
それが凄く伝わりすぎて、第一幕の「メリークリスマス」の言葉でぐわっと心が揺さぶられた後、「アマリリスになりたい」(あれ、オハナの名前あっていますか?)との言葉からもう後半ずっと泣いていました。
江波さんの最後の息を引き取るときの優雅さが本当に何とも言えず。

丁度1ヶ月くらい前に祖母を亡くしたのですが、その祖母の死にもなんとなく重なり、祖母の死のときには泣かなかったのですが、この舞台でなんだかいろんな想いがこみ上げてたまりませんでした。

自分のFBにこの舞台の事を書きたいのですが、こちらのブログで書かれていた作者の意図するところ(私のコメントでコピペしたところ)の部分を引用させていただけないでしょうか?うまく私には表現しきれないので・・・><

にゃ。様
私も終幕でホロッとしてしまいました。とても良い芝居でした。
引用はもちろん構いません。

>ほめ・く様
ありがとうございます!
舞台なんていつぶりやら・・・という感じだったのですが、たまたまテレビで温水さんと江波さんがインタビューを受けているのをみて「面白い組み合わせ」で「なんだかちょっと刺激的なタイトル」だったので、気になっていたところ、舞台が大好きな友人が「凄くよかったのでおすすめ!」と言ってくれたので、時間を割いて行ってみました。

舞台を観ている間中、本当温水さんの役の男性の身勝手な考え方にイライラしてしまいました。それほど、温水さんがその役になりきっていらして素晴らしかったです。

引用の了承ありがとうございます。^^
突然のコメントへのお返事ありがとうございます!!!

にゃ。様
あまり他人様(ひとさま)から感謝されたことがないので恐縮しています。
同じ芝居の感動を共有できたことは私も喜びです。

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