「雲助蔵出し ぞろぞろ」(2014/12/6)
「雲助蔵出し ぞろぞろ」
日時:2014年12月6日(土)14時
会場:浅草見番
< 番組 >
林家つる子『たらちね』
古今亭志ん吉『短命』
五街道雲助『辰巳の辻占』
五街道雲助『禁酒番屋』(馬生版)
~仲入り~
五街道雲助『掛取万歳』
今年最後の「雲助蔵出し ぞろぞろ」、常連客が多いせいかあちらこちらで話の輪ができる。こういう和やかな雰囲気の会はいい。
志ん吉、語りが良い。将来性ありと見た。でも、なんでこのネタ? 近ごろやたら若手で『短命』を掛ける人が多いが感心しないね。せっかく雲助の会に呼ばれたんなら、もっと他にネタはあっただろうに。
雲助の1席目『辰巳の辻占』
師匠の10代目馬生が得意としていてCDも市販されている。『星野屋』にも似ている噺だが、高座にかかる機会は少ない。
ムジンで大金を得た男が、いずれ所帯を持つという約束を交わした辰巳の花魁からお金を預かると言われる。怪しんだ男の叔父が、女の真意を計るべく一計を授ける。
男が花魁に逢いにゆき、「酒の上の喧嘩で友だち二人を殺してしまった。もう生きていけないから一緒に大川に身を投げて死のう」という。女は渋々同意し、二人は吾妻橋へ。南無阿弥陀仏と手をあわせ、ひぃふぅみぃで飛び込むという約束をするが、女は身代りに石を川へ投げ込む。本当に飛び込んでしまったと驚き動揺した男は、近くにあった石を川の中へ。
「あの馬鹿、本当に飛び込んじゃったわ。音を聞けば、石か人か解りそうなものなのに。やれやれ…」とばかり女は店へ。一方男も後味の悪いまま忘れ物を取りに店に戻る。二人は店の前でバッタリ。
「あっ、お前!」
「あらぁ、お久しぶり!」
「この野郎! 何が『お久しぶり』だ」
「だって…娑婆で会ったばかりじゃないか」
雲助も語っていたが、先代馬生に比べ滑稽味の強い噺に仕立てていた。
『品川心中』『星野屋』にも通じる当時の女性たちのしたたかさが窺われる一席。
雲助の2席目『禁酒番屋』(馬生版)
このネタは柳家のお家芸で、たいがいの演者は柳の型で演じるのだが、敢えて先代馬生版での高座。雲助によると残された録音はあまり出来が良くなく、少し手を入れたとのこと。元は上方から移された噺だが、馬生版はそのオリジナルに近いようだとのこと。
柳家版との違いは以下の通り。
・酒飲みの武士は酒屋で5合あけ、寝酒に屋敷まで1升届けるよう番頭に命じ、小判を置いて行く。
・最初の小僧はカステラをくりぬき5合徳利2本に酒を詰め、さらに上からカステラをかぶせて持参する。番屋の侍から徳利を取り出され詰問されると「カステラ水」だと言い逃れしようとする。番屋の侍にバレテ飲まれてしまう。
・2番目の奉公人は庭職人の恰好で、肥料の「油かす」のビンに酒を詰めて持参するが、やはりバレテ飲まれてしまう。
・実は、番屋の二人の侍は酒好きで、酒屋にもツケが溜まっていた。番頭としてはそういう経緯から大目に見てくれるのではという期待があったのだが、裏切られた形となって怒る。1升ビンの小便を詰めるとき、便所に入ろうとしていた女中を呼び止め、ビンの上に「漏斗(じょうご)」を付けてそこへ女中に小便をさせる。よほど溜まっていたとみえて1升ビンから溢れ出る。番頭はそのビンをさげて番屋に向かい、「小便です」と差し出す。番屋の侍の「むぅ、この正直者め!」のサゲは同じ。
特に女中が1升ビンに小便をするのを番頭が後ろから見ていると言った描写は柳家版とは大きく異なる(10代目文治は一部採りいれているが)。少々下品ではあるが、これはこれで面白かった。
こういう試みは、この会ならでは。
雲助の3席目『掛取万歳』
マクラで、毎年一門の忘年会は師匠のオゴリだったが、もう既に弟子3人ともトリが取れる真打に達したし、それもこれも師匠のお蔭ではないかと話したところ、今年から師匠を招待する形式になったとか。何でも言ってみるもんだと。
年末恒例のネタである『掛取万歳』だが、これをフルバージョンで演じられる噺家が少ない。後半の義太夫、芝居、三河万歳が全て出来ないと高座に掛けられないからだ。だから最近では途中で切って、『掛取り』のタイトルで演じられるケースが多い。しかしこのネタは、掛取りの撃退だけで終わらせるのではなく、最後の三河万歳で正月の目出度い気分につなげてゆくことが眼目だ。
雲助の本寸法の『掛取万歳』で、最後は目出度くお開き。
« 『伊賀越道中双六』(2014/12/5) | トップページ | シス・カンパニー「鼬(いたち)」(2014/12/9) »
「寄席・落語」カテゴリの記事
- 「落語みすゞ亭」の開催(2024.08.23)
- 柳亭こみち「女性落語家増加作戦」(2024.08.18)
- 『百年目』の補足、番頭の金遣いについて(2024.08.05)
- 落語『百年目』、残された疑問(2024.08.04)
- 柳家さん喬が落語協会会長に(2024.08.02)
コメント
« 『伊賀越道中双六』(2014/12/5) | トップページ | シス・カンパニー「鼬(いたち)」(2014/12/9) »
軽やかで、一つひとつの場面が良くできていて、心から楽しめました。
投稿: 佐平次 | 2014/12/07 10:07
佐平次様
毎度のことながら、この会の雲助の高座は実にいい。どこがいいのかと訊かれると答えに窮するほどいいと、そう言うしかありません。
投稿: ほめ・く | 2014/12/07 12:46