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2014/12/10

シス・カンパニー「鼬(いたち)」(2014/12/9)

シス・カンパニー公演『鼬(いたち)』
日時:2014年12月9日(火)14時 マチネ
会場:世田谷パブリックシアター
作: 真船豊
演出:長塚圭史
<   キャスト   >
高橋克実/「だるま屋」当主・萬三郎
江口のりこ/妹・おしま
白石加代子/母親・おかじ
鈴木京香/叔母・おとり
峯村リエ/債権者・伊勢金のおかみ
山本龍二/ 同 ・山影先生
佐藤直子/ 同 ・古町のかかさま
赤堀雅秋/仲介人・喜平
塚本幸男/馬車ひき・弥五

本戯曲は劇作家・真船豊のデビュー作で、戦前戦後から現在にいたるまで多くの劇団によって上演されてきた。初演は1934年(昭和9年)で、真船豊の故郷である福島県会津地方の農村を舞台に、没落した旧家をめぐって肉親同士が骨肉の争いを繰り広げる様を赤裸々に描いている。
ストーリーは。
昭和初期の東北地方の旧街道に沿った村で、元は家老の定宿であった「だるま屋」が舞台。今ではすっかり落ちぶれ、家屋敷は抵当に入っている。当主の萬三郎はひと山当てに南方へ行ったきり、家は老母のおかじが一人で守っている。そこへ亭主がヤクザで服役中という娘おしまが子ども二人を連れて家に戻ってくるが日長一日酒浸りの有り様だ。
遂には家屋敷の処分が決まり、債権者である伊勢金のおかみや馬医者の山影先生、古町のかかさまが集まって取り分をめぐって腹の探り合いが始まる。
そこへ先代の娘でおかじの義妹にあたるおとりが現れる。おとりは若い頃さんざん悪事と不義理をはたらき家は勘当され村から出奔した過去を持つ。悪知恵ひとつで各地を渡り歩き、今では上州で織物工場を経営するまでに出世している。おとりの金満ぶりに村人たちの態度も変わってくる。
そんな折り、萬三郎が南方から帰国してくるが、金を稼ぐどころか借財まで背負ってくる始末。泣きつかれたおとりは家屋敷の借金と萬三郎の借財を立て替え、債権者に支払う。この事は二人の内緒で、外聞は萬三郎が稼いだ金で返したことになっている。そんな事情を知らないおかじは、おとりに向かって「この泥棒鼬!」と罵る。
しかし、おとりには萬三郎の借財を立て替えた代りに家屋敷を自分の名義に変えて乗っ取るという計略があった。近くに鉄道が通れば、ここの土地は一変すると踏んでいたのだ。事情を知らぬ萬三郎を騙し、山影先生を抱き込んで登記変更の手続きを進める。
萬三郎が再び南方へ出稼ぎに行くと、おかじはおとりに家を出て行くように迫る。ここに至っておとりは借金返済を自分が行い、この家屋敷も自分のものになる事をおかじに告げる。絶望の果てに憤死するおかじ、それをじっとみつめるおとり・・・。

主人公のおとりは着の身着のまま家を飛び出し、女工や女中奉公をしながら経営者の妾になり、その旦那が死去すると(世間では毒殺という噂も)財産の分配を得て資金とし、折からの人絹ブームに乗っかって織物工場を立ち上げる。周辺の農家の貧しい少女を集め、衣食住を与えるだけでタダ働きさせる。使い物にならなくなれば解雇し、また他から新しい少女を雇う。こうして蓄財を重ねてきた。
しかし彼女の最後の居場所は、やはり故郷の地に求めた。
こう書くと、80年前に『鼬』が描いた世界は今もそう大きな違いはなさそうな感じがする。農村部のドロドロした人間関係は今でも残っているだろう。
そして何より、人間の要望というのは全く変わっていない。遺産相続や金銭貸借に関する骨肉の争いは今も日常茶飯事だ。
この芝居が、現在も繰り返し上演されている理由はそのためだろう。

出演者では老母を演じた白石加代子が圧倒的な存在感を示していた。おとりに真実を打ち明けられた後の絶望感と悲しみが、後向きの背中に溢れていた。
主役のおとりを演じた鈴木京香は、涼しい顔をして悪知恵を働かせる強欲な女を好演。最近、世情を騒がせている「毒婦」もかくやと思わせる。強いて欠点をあげるなら、役柄からすると美し過ぎることか。大竹しのぶが演じたらどんな舞台になったろうかと、ふと思った。
高橋克実を始め芸達者な出演者が揃い、緊張感のある舞台を盛り上げていた。

公演は28日まで。

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