MMJ『悪』(2015/1/30)
MMJ主催『悪』
日時:2015年1月30日(金)14時
会場:紀伊国屋ホール
■脚本・演出 岡本貴也
■出演
高岡奏輔 陳内将 西丸優子
川上ジュリア 青柳塁斗 羽場裕一
結論からいえばここ数年に観た芝居の中で最も訳の分からぬものだった。
舞台は近未来の日本の大学、ある研究室で分子生物学上画期的な発明が行われた。合成した分子に「神の一撃」を与えると生物に変化するというもの。大学教授の指導のもと、若くて美貌の女性研究者のアイディアにより成功したものだ。記者会見が開かれ科学的な質問に混じって週刊誌記者から女性研究者への個人的な質問が飛ぶ。
ここまで書けば、理研のSTAP細胞騒動を誰もが想起するだろう。
教授は女性研究者への思いが募り地位や名誉と引き換えに関係を迫るが、これを週刊誌記者にかぎつけられ金を脅し取られる。にも拘らずスキャンダル記事が公表され、教授は地位を追われ後任に女性研究者が就く。ここからこの二人を中心に研究室の助手や学生、その恋人、先の記者らの人間関係が交差する。
女性研究者への復讐に燃える元教授は個人で研究を進め、「神の一撃」技術を使ってクローン人間を作ることに成功する。目的はそのクローン人間を操り女性研究者を殺害することだ。
結局、殺人は成功するのだが、愛憎が複雑に入り乱れるている人間関係の中で、一体誰が本当の「悪」なのかを問うというもの。
ストーリーとしては破綻が無いように見えるが、登場人物たちに生命が吹き込まれていない。全員が「そんな分けないだろう」と思える程、思考や行動が薄っぺらなのだ。もっと言えば「クローン人間並み」なのだ。そのために観ていて感情移入ができない。
ドラマだから致し方ないかも知れないが、教授が作り出したクローン人間は「クローン」ではなく、むしろ「フランケンシュタイン」ではなかろうか。それとこの技術でもしクローン人間が出来るなら死者を蘇えさせる事も出来るはずで、劇中の説明と矛盾してくる。
そんな難しい理屈抜きにして楽しめれば良いのかも知れないが、私は楽しめなかった。
公演は2月8日まで。
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