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2015/02/22

さすがベテランの味「権太楼・一朝」(2015/2/21)

第36回三田落語会・夜席「権太楼・一朝 二人会」
日時:2015年2月21日(土)18時
会場:仏教伝道センタービル大ホール
<  番組  >
前座・春風亭朝太郎『寿限無』
柳家権太楼『寝床』
春風亭一朝『包丁』
~仲入り~
春風亭一朝『花見小僧(おせつ徳三郎・序)』
柳家権太楼『御神酒徳利(占い八百屋)』

前座の朝太郎『寿限無』、スジが良さそうだ。師匠の前名を貰ってるのは期待が大きいからだろう。

権太楼『寝床』、このネタは前にも書いたが大きく分けると、正統派の8代目文楽型、爆笑派の志ん生型、両者のいいとこ取りの志ん朝型となる。他に上方落語では枝雀型(意外なのは上方四天王は誰もこのネタを高座に掛けていないそうだ)がある。枝雀型では長屋の住人で女性的な親孝行息子が登場したり、旦那の義太夫をまともに受けて胸に大きな痣をこしらえて亡くなった人が登場する。最近では東京でもこの型で演じる人もいる。
権太楼の高座は志ん生型と思われ、後半は店立てをくった長屋の住人が集まって義太夫の会に参加するかどうかをは話し合いをする場面があり、前の番頭が一人で旦那の義太夫を聴かされ夜逃げするというエピソードでサゲ。志ん生型なので旦那の機嫌直しの場面や長屋の衆が義太夫を聴かされる場面はない。茂造が巧みに言い訳をしながら最後は自分が追い詰められるまでの過程を中心に楽しく聴かせてくれた。1席目なので軽く演じながら押えるべき所はきちんと押えた権太楼らしい高座だった。

一朝『包丁』、マクラで知り合いの中に、世の中には男と女と女房んも3種類があり、女房は女じゃないから浮気をするんだと語る男がいると言っていた。女は女房だけと信じているアタシにゃ信じられない。ホントですよ。
この『包丁』という噺は大好きなので、これを聴けただけで満足だ。
清元の師匠と懇ろになってヒモ生活を送る常だが、脇に若い女が出来て師匠が邪魔になった。そこで旧知の寅に頼んで、自分が留守の時に師匠の家を訪れ酒を呑みながら師匠の袖を引っ張る。そこへ常が乗り込み「間男しやがって」と脅して罪をかぶせ、師匠を芸者に売りとばしその金を二人で山分けするという算段。常は色と欲の両方が手に入るわけだ。
打ち合わせ通り寅は師匠の家に上がり込み、勝手に酒を呑みながら師匠の袖を引っ張ると、怒った師匠からポカポカと殴られて逆上、ネタを全てバラシてしまう。事実を知らされて師匠は寅の女房になり二人で常を追い返そうと申し出る。瓢箪から駒とはこの事、寅もその気になって出刃包丁を振りかざして脅す常を撃退する。小悪党がギャフンという目に遭うのだ。
見どころは寅が小唄を唄いながら師匠の袖を引く所、師匠が次第に怒り出す所と、一転して寅と所帯を持つと言い出す所だ。一朝の高座は二人の心理変化を巧みに表現していた。
また寅の小唄は「八重一重」で本寸法、難しい唄だそうだが他の唄ではダメなのだ。セリフと唄と口三味線が混じり、その傍らで師匠の袖を引く所作も入れるというのは可成りの修練が必要だろう。
一朝の芸の高さを示した1席、実に結構でした。

一朝『花見小僧』、小僧の定吉が大旦那にアメとムチで脅され、昨年の花見の様子を小出しにしゃべる姿を描いたもの。最初は嫌々ながらだったが、次第に興に乗るとお嬢さんのおせつと奉公人の徳三郎の仲を楽しそうに語り出す定吉。やはりスキャンダルを話すのは愉快なんだ。しかし大旦那にとっては穏やかじゃない、いきなり怒り出して定吉を部屋から追い出す。この二人の変化を一朝は巧みに描いていた。花見でのおせつと徳三郎、婆や、定吉それぞれの姿も手に取るよう。一足先に花見気分を味わえた。

権太楼『御神酒徳利』、この噺は二つの系統があり、一つは3代目三木助や6代目圓生の型で旅籠の番頭である善六が自分で水瓶にしまっておいた御神酒徳利を自分が占って探しだし、それが元で大阪まで行くというストーリー。もう一つは上方落語の『占い八百屋』を東京に移したもので、柳家小さんによって代々引き継がれてきた型で、こちらは八百屋がいたずらで御神酒徳利を水瓶に隠し、それを占いで探し当てると三島まで行かされるというストーリーだ。柳家の噺家でも前者の型で演じる人もいるが、権太楼は小さんの型で演じた。
自分で隠した徳利を算盤占いと称して探しあて店の主人からすっかり占いの名人呼ばわりされ舞い上がる八百屋。処が店の主人の兄の家で大事な仏像が紛失したので三島まで行って占って欲しいと言われ怖気づく。嫌々ながら三島に向かうと途中の小田原の宿で、宿屋の箪笥から50両が紛失していたという事件に出会う。強引に占いを請われた八百屋はすっかり逃げ支度するが、そこへ50両を取って稲荷に隠したという女中が現れ、ここでも八百屋は見事に占いを的中させる。権太楼の高座は八百屋の得意と失意の繰り返しを表現していて好演。ドヤ顔と困惑顔の対比も見事に権太楼節全開の高座だった。

二人のベテランの味を堪能、結構でした。

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コメント

一朝を聴きたいなあ。しばらく落語とごぶさたしてました。

佐平次様
一朝は人柄なんでしょう、登場人物に対する目が優しい。悪党でさえ悪い人間には見えません。

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