#17らくご古金亭(2015/3/21)
「第17回らくご古金亭」
日時:2015年3月21日(土)17:30
会場:湯島天神参集殿
< 番組 >
前座・金原亭駒松『から抜け』
金原亭馬治『天狗裁き』
三遊亭遊雀『寝床』(ゲスト)
柳亭小燕枝『三人旅』(ゲスト)
金原亭馬生『うどん屋』
~仲入り~
五街道雲助『千早振る』
桃月庵白酒『文違い』
(前座以外は全員ネタ出し)
10代目馬生の7番弟子の雲助と9番弟子の当代馬生の二人をメインに、志ん生と馬生二人が演じたネタだけを演じるというこの会。従来は馬生と雲助が交互にトリを務めてきたが、今回初めて弟子世代の白酒がトリを取る。馬生の弟子から3月21日より二人一挙に新真打に昇進となり、そのうちの馬治がこの会で昇進後の初高座となる。趣向の多い「第17回らくご古金亭」となった。
馬治『天狗裁き』、いま鈴本演芸場で落協の新真打昇進披露興行が行われているが、数日前に前売りを調べたら馬冶の日だけ完売になっていた。人気があるんですね。師匠の前名なので、行く行くはこの人が馬生を継ぐのだろうか。志ん生から先代馬生に継承されたネタなので古今亭のお家芸と言っても良い。初めに夢のことで熊とお光が夫婦喧嘩するが、お光がやたら強く熊がのされてしまう。ここのお光は腕力が強いんだね。天狗が団扇を持っている所を見て熊が「法務大臣か?」というクスグリを入れていた。テンポの良い高座だった。
遊雀『寝床』、志ん生流ではなく先代文楽流を基本にした演出だった。そういえばこの人は他にも『船徳』や『明烏』、『干物箱』など文楽の十八番を演じることが多い。
旦那が繁蔵に「お前は丈夫なのか?」と訊くと、繁蔵が「他の人の事は考えてきたが、自分の事は考えてこなかった」と嘆く所は独自の演り方。怒りでふて寝していた旦那を宥めるのに繁蔵ではなく一番番頭にしたのは説得力がある。大番頭だから「先ほどは繁蔵が失礼なことを申しまして」と取り成せるのだ。何とか義太夫を語ってくれと頼む番頭に旦那が断るが、番頭が部屋から下がりかかると旦那が「どうしてここでもうひと押ししない、空気が読めないヤツだ」と言って引き留める演出が良い。番頭は旦那の手の内をとっくに読んでいたのだ。後半を簡略化したのもスピーディで良かった。
小燕枝『三人旅』、春先の箱根路を馬で越す旅人を描いた季節感のあるユッタリとした高座だった。特に古今亭に縁のあるネタではないが、懐かしさを感じる1席。
馬生『うどん屋』、5代目小さんが十八番としていて、現役の人たちも小さんの演出に拠る者が多いが馬生の演じ方は異なる。大きな違いは小さん型では酔っ払いがクダをまいた後「うどんは嫌いだ」と帰ってしまうが、馬生型では取っ払いは渋々うどんを食べる事になるが上から胡椒をかけ過ぎて結局食わずに帰って行く。オリジナルである上方の「風邪うどん」とも異なり、むしろ上方の「親子酒」で息子がうどんを喰うシーンに近いか。馬生らしい手堅い高座。
雲助『千早振る』、こういう軽い滑稽噺も雲助の手にかかると一段と面白くなる。歌の意味を問われた兄いが困惑しながら、どう言いくるめようか思案する表情が良い。女乞食が実は千早太夫の成れの果てという部分を抜かすミスはあったが、テンポ良くそんなもの吹き飛ばしてしまう様な勢い。
白酒『文違い』、顔が赤かったのは上気していたのか、それとも飲み過ぎか。二人の男を騙し金を巻き上げた新宿の遊郭の女郎・お杉だが、その金をイロに騙されて巻き上げられるというストーリで、相手に手紙を読まれてしまい事実が明らかになる。今でもメールを読まれて浮気がばれるなんてぇ事があるようだからリアリティのある話しなのだ。このネタには3人の男が登場する。お杉がベタ惚れしている芳次郎、自分こそお杉の間夫だと早合点してる半公、お杉から邪険にされたうえ金を取られるお人好しの角蔵。この3人の演じ分けと、お杉のそれぞれに対する態度の変化が見せ所だが、白酒はしっかりと描いていた。
この噺は、回り回った金を最終的に手に入れる小筆(芸者と思われる)だけが勝者となるが、もしかするとその小筆も別の男に騙されているのかも知れない。金は天下の回り物。
『寝床』で寝込んでいた番頭が旦那が起こされ、寝ぼけ眼で「上手い!」と声を掛ける場面がある。隣席の客が『寝床』が始まると終わるまで居眠りをしていて、終わって遊雀がお辞儀した時に目を醒まし盛大な拍手を送っていたが、これじゃあの番頭と一緒だと可笑しくなってしまった。
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喬太郎のBSの番組から得た知識ですが、
馬治と馬吉はほぼ同時に当代馬生に入門、
ともに師匠のきれいなところにひかれて、と語っていました。
投稿: 福 | 2015/03/23 06:52
福様
確かに馬生は様子がいいですね。踊りも上手いし。独演会に女性客が多いのはそのためでしょうか。
投稿: ほめ・く | 2015/03/23 09:16