おいてけ堀落語会「金時&ひな太郎」(2015/03/18)
「第106回そばの里みつまさ おいてけ堀落語会」
日時:2015年3月18日(水)18時
会場:そばの里みつまさ
< 番組 >
桂ひな太郎『幇間腹』
三遊亭金時『そば清』
三遊亭金時『寝床』
桂ひな太郎『締め込み』
先日の亀戸に続き今度は錦糸町。ここの江東楽天地にも昔はよく来ていた。映画館、飲食店、そして怪しげな店まであった今で言うアミューズメント・スポット。駅前はすっかり整備されかつての面影はない。南口の歩道橋を降りてすぐに「そばの里みつまさ」店があり、ここが会場。
年4回開催で第106回というから地域寄席としては老舗といえよう。三遊亭金時をメインに毎回ゲストを招いて2席ずつ、終わってから酒orビールに手打ちソバが付く。抽選でお土産まである大サービス。常連さんが大半なようで、テーブルを囲んで話の花が咲いている。
ひな太郎『幇間腹』、今年誕生日を迎えると63歳で、先日結婚式を挙げたそうだ。司会をしたという金時が「ハネムーンがフルムーン」と言ってたがとにかく目出度い話だ。
幇間の一八が扇子をふりながら若旦那に「よう、よう、よう、よう!」とリズミカルに声をかける辺りに志ん朝の風を感じる。針を打つと言われた一八が「いつです?やはり吉日を選んで?」と返す所や、それじゃ踵に打ってという一八に若旦那が「俺は柔らかいとこに打ちたい」と答える所が可笑しい。
一八が腹を出して小唄かなんか唄いながら針を待つという仕草もこの人らしい演出。
このネタの最も肝心な幇間の造形が良く出来ていて好演。
金時『そば清』、この会場に最も相応しいネタを選んだ。いくらソバ好きな「そば清」でもさすが50枚は無理だった。頼みにした大蛇の消化薬は実は人間を溶かす薬だったので、これを舐めた清兵衛は自分が溶けてしまったというサゲ。実際の情景を思いうかべるとまるでホラーだ。
このネタを得意にしているさん喬に比べると、随分とアッサリとした高座だ。
金時『寝床』、後の打ち上げによれば、20日に行われる自身の独演会で『寝床』をネタ出ししており、その稽古を兼ていたようだ。金時は義太夫を習った事があり、覚えたら人前で演ってみたくなる気持ちは分かると言っていた。先代文楽の演出をベースにしておりあまり余計なクスグリを挟まず真っ直ぐな高座だった。旦那が番頭に説得されて義太夫を語ると言い出すまでのタメがもっと欲しい。
ひな太郎『締め込み』、空き巣に入られた家の女房はきっと小股の切れ上がったいい女なんだろう。所帯を持った当時には亭主が仕事にも行かず、針仕事をしている女房を見上げて「弁天様のようだ」と言ってたほどだ。だから風呂敷包みを見た亭主が、女房が間男と駆け落ちするつもりだと早合点してしまう。女房の方は亭主が酒を呑むと女を口説く癖があるので、女に金をやるつもりだろうと怒る。結局この夫婦は仲が良過ぎるので互い嫉妬心が強いだけなのだ。床下でこの夫婦喧嘩を聞いていた泥棒が、こうした事情を呑み込んで仲裁に入り仲直りさせる。この人が演じると泥棒まで粋に見えてくる。
男が女に結婚を迫る際に、先代文楽では出刃包丁を取り出し「ウンか出刃か、ウン出刃か」と言うのだが、ひな太郎の高座では亭主が大工なので商売道具のノミを取り出し「ウンかノミか、ウンノミか」と迫る。師匠・志ん朝の型だろうか。
春風のような軽快な高座、結構でした。
休憩なしで4席、約1時間半。打ち上げを含めて2時間、夜の落語会はこれ位が丁度いい。
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