鈴本「真打昇進披露興行」(2015/3/24)
鈴本演芸場3月下席夜の部「真打昇進披露興行」
< 番組 >
翁家社中『太神楽曲芸』
柳家小里ん『子ほめ』
林家正蔵『小咄』
松旭斎美智・美登『マジック』
三遊亭歌司『親子酒』
鈴々舎馬風『漫談』
ホームラン『漫才』
柳家喬太郎『綿医者』
三遊亭金馬『紙入れ』
柳家さん喬『長短』
~仲入り~
『真打昇進披露口上』下手より司会・喬太郎、権太楼、馬風、海舟、小里ん、さん喬、金馬、市馬
すず風にゃん子・金魚『漫才』
柳亭市馬『狸賽』
柳家権太楼『代書屋』
林家正楽『紙切り』花見、咸臨丸、海舟
(麟太郎改メ)
柳家海舟『盃の殿様』
鈴本演芸場3月下席夜の部は落語協会の真打昇進披露興行。二ツ目の頃からお馴染みの人も何人かいたが日程が合わず4日目の麟太郎改メ柳家海舟の昇進披露に出向く。
落語協会の新真打披露は定席で合計40日間、国立を加えると50日間となる。今回は10人一緒の昇進なので出番は10日間のうち1日だけとなる。スタートの鈴本では全員が初日を迎えるわけだ。
この間、披露口上は毎日行われるが、やはり早い時期の方が本人の感激もひとしおだろう。
真打昇進披露口上で権太楼が言ってたが、口上でこれだけの豪華メンバーが揃うというのは珍しい。協会会長、前々会長、日本演芸家連合会長に柳家の大看板が顔を揃えた。57歳で真打昇進という昭和以降では最高齢記録となった海舟を押し立てていこうという気配りか。
以下、色物を除き手短に。
師匠の小里んが前座噺の『子ほめ』を軽く演じたあと、正蔵が上がって客席を温めようと小咄をいくつか。
歌司『親子酒』、この人も久々だった。親父が最初は遠慮がちで次第に大胆に酒を呑み酔っぱらっていく姿が上手い。
喬太郎『綿医者』、この人が発掘した古典で、患者の内臓を手術した医者が替わりに腹の中へ綿を詰める。すっかり身体が軽くなった患者がお祝いに強い酒を呑んだ後にタバコを吸ったところ火玉を飲み込んでしまい身体が火事に。急いで水を飲んでジューと消した。「どうした?」「胸が焼けたんで」でサゲというナンセンスもの。喬太郎はマクラで自身の口内炎治療でエライ目にあったという実話からネタにつなげて、さすがの高座だった。
金馬『紙入れ』、膝が悪いというので釈台を置いての高座だったが未だカクシャクとしている。間男しているお上さんに色気があった。小金馬の頃はあまり上手い人ではなかったが、金馬になってからガラリと変わった。先日の落語会で隣の席の人が「小三冶より金馬の方が上ですよ」と言ってたが、そういう見方もあるのか。
さん喬『長短』、短七さんのイライラぶりが真に迫っていて好演、この人はこうした軽めの噺の方が出来が良い。
『真打昇進披露口上』では全員がそれぞれ高齢で真打に昇進したことに触れていた。なにせ会長の市馬より年上なんだから。師匠の小里んが語っていたが、最初42歳で入門しに来て無理だと思ったが、本人がどうしてもと言うので1年間だけ前座修行をさせるという約束で弟子に取った。そうしたら大師匠の先代小さんが続けさせたらと勧めてくれ今日に至った。二ツ目の名前が麟太郎だった事から「勝」家とご縁が出来て海舟という名も「勝」家から許可を得ている。とにかく自分よりは長生きしてくれと、優しい師匠ですね。本人は感激してか落涙。
市馬『狸賽』、お馴染みの狸がサイコロに化けるネタを、短縮版ながらサゲまで。
権太楼『代書屋』、時間の関係で途中で切ったがこの日一番笑いを取っていた。今や東京で『代書屋』といえば権ちゃんですね。
海舟『盃の殿様』、渋いネタを選んだ。江戸にいる時に吉原の花魁に入れあげた西国の殿様。参勤交代でお国入りせねばならなくなり、家宝の盃で酒を酌み交わし別れを惜しむ。領地に戻っても花魁が忘れられず、300里を10日で走るという家中で一番足の速い足軽に命じ、吉原の花魁に盃を届け「返盃」をもらってくるよう言いつける。花魁は盃を一気に飲み干し、今度は殿様からの返盃を所望。こうして300里の道を往復してるうちにある大名の供先を切ってしまう。死罪になるところを事情を話すとその大名はいたく感激し、「大名の遊びはさもありたし。そちの主人にあやかりたい」と、盃を借りて一気に干した。足軽が国許に戻りこの話しを伝えると殿様はいたく感嘆し、「もう一献と申してこい」と足軽に命ずる。処がどこの大名だか聞き忘れてしまったので、日本中を駆け巡り探し歩くことになった。とうとう見つけられずに、やがてその足軽は佐川急便を興した、でサゲ。
口跡が良く語りもしっかりしている。活躍できる期間は限られているわけだが、名前負けせずに頑張って欲しい。
最後はマイクを握りCD発売したという勝海舟の唄を披露し終演。
行って良かった。
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さん喬の「長短」「初天神」。落語の教科書になるでしょうね。反面、同じ柳家でありながら、まったくワン・アンド・オンリーで教科書にはならないのが談志です。
投稿: 福 | 2015/03/25 21:10
福様
さん喬は『長短』とか『そば清』のような短編の方が実力が出る気がしています。
談志は決して上手い噺家とは言えませんが、何か人を惹きつける所が魅力なのでしょう。教科書は無理ですね。
投稿: ほめ・く | 2015/03/25 21:37
メデイアで話題になっては、いないような気がします。
パブが下手なのかな、落語協会。
投稿: 佐平次 | 2015/03/26 10:09
佐平次様
私が見た限りではスポーツ紙がとりあげた程度だと思います。今回の新真打は目玉が無いので話題性に欠けたのでしょう。
投稿: ほめ・く | 2015/03/26 11:44
「中年の星」とかなんとか^^。
投稿: 佐平次 | 2015/03/27 11:10
佐平次様
あと2年で還暦なので中年というより「熟年の星」ですね。でも見た目はかなり若いです。
投稿: ほめ・く | 2015/03/27 15:16