三遊亭遊馬の会(2015/3/26)
お江戸日本橋亭定席「三遊亭遊馬の会」
日時:2015年3月26日(木)17:30
会場:お江戸日本橋亭
< 番組 >
前座・瀧川鯉佐久『新聞記事』
前座・桂たか治『芋俵』
前座・瀧川鯉〇『松山鏡』
三笑亭夢吉『疝気の虫』
古今亭今輔『雑学刑事』
桂竹丸『漫談』
~仲入り~
三遊亭遊馬『長屋の花見』
林家花『紙切り』
三遊亭遊馬『粗忽の使者』
三遊亭遊馬、知る人ぞ知る、知らない人は知らない。数年前に初めて見てから何度か高座に接していて、その将来性に注目していた。だから遊馬が、平成26年度文化庁芸術祭賞大衆芸能部門の大賞を受賞したことは喜ばしい。
落語芸術協会は新宿、浅草、池袋3カ所の定席に加え、お江戸広小路亭とお江戸日本橋亭で定期公演を行っている。この日はお江戸日本橋亭定席での「三遊亭遊馬の会」だった。
驚いたのは会場が満席だったことだ。私も初めての事だが、出演者もこんなに一杯入ったのは初めて見たと言っていた。それだけ人気が出て来たということだろう。
前座が3人続いて登場、後の二人はいわゆる前座噺ではなかった。『芋俵』は先代小さんの、『松山鏡』は先代文楽の十八番だ。この中では桂たか治が面白いと思った。風貌が師匠・文治によく似てる。
夢吉『疝気の虫』。先日、真打昇進の記者会見も終りいよいよ5月上席から披露興行が始まる。特にこの人は2代夢丸の襲名も兼ねているので大変だろう。
このネタは志ん生の十八番で、談志、志らくへと継承されている。疝気というのは男性の下半身全般の病気の総称で、この虫は大のソバ好き。苦手なのはトウガラシで、これが来ると疝気の虫は男性の別荘(睾丸ですな)に逃げ込むしかない。ある男が疝気で苦しんでいたので、医者は男の女房にソバを食わせてその息を男に吹きかける。疝気の虫はソバの匂いにひかれて女房の身体に移る。その後で女房にトウガラシを飲ませると、疝気の虫はいつものように別荘に行こうとするが・・・。「どこだ?どこだ?」と言いながら高座を下りるというのが夢吉のサゲだった。
バレ噺で小さなお子さんが会場にいたが、分かったかな?
今輔『雑学刑事』、以前にTVのクイズ番組に出場したことがあり、その裏話をマクラに振っていた。番組には予選があり、筆記試験と面接があるそうだ。出場者には明るさも求められるらしい。優勝賞金の使い道なども選考の対象にされるとのこと。
ネタは、雑学に詳しい刑事が銀行強盗をクイズで追い詰めて行くというストーリー。得意分野だけあって生き生きとした高座。
竹丸『漫談』、敢えてテーマをあげるなら「師匠と弟子」か。弟子を持って初めて分かる師匠の苦労などを面白く語っていた。竹丸の師匠は米丸(最高齢の現役記録を塗り替え中)だが、その米丸が5代目今輔に入門した際に、自作の新作を全て米丸に譲ったとのこと。周囲が今輔に注意すると、また新しく作れば良いと答えたそうだ。今輔は自分の弟子にも全て「さん」付けで呼んでいたというエピソードが残されていて、独特の哲学を持っていたのだろう。
まともにネタをやらず漫談で済ませるのを嫌う人もいるが、こういう寄席では客席の息抜きを兼ねて漫談を演じることは悪いことではない。竹丸はトークが達者なので楽しめた。
遊馬『長屋の花見』、季節感のあるネタで5代目小さんの十八番だった。店賃の催促かと思って長屋の衆が恐る恐る大家の家に集まる所から、お花見ときいて喜んだものの、酒はお茶、蒲鉾は大根、卵焼きは沢庵、毛氈は筵と分かりガッカリする。花見のドタバタから「長屋中 歯を食いしばる 花見かな」でサゲるまでオーソドックスな運びだったが、語りがしっかりしているので客席を沸かせていた。
膝の花『紙切り』では、「大塚家具」というお題に対し「本社ビル」の形を切って切り抜けていた。
遊馬『粗忽の使者』、こちらも5代目小さんの十八番。使者にされた粗忽武士、使者の口上を受ける側の家臣・田中三太夫、大工の留、それぞれの演じ分け出来ていた。特に武骨で正直者だがやたらそそっかしい地武太治部右衛門の粗忽ぶりがよく描かれていて好演、楽しませてくれた。
遊馬の2席の高座はいずれも古典の本寸法、結構でした。
芸協の前座から二ツ目、若手真打が、志ん生や小さんといった昭和の名人上手の十八番に果敢に挑戦したのが印象的だった。
新作の今輔を含め、それぞれ将来性が期待される。
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